ショートショート:「戦争」
俺は今、戦場にいた。見渡して目に付くのは兵士だけというしみったれた荒野。
かつては忠誠を誓ったはずの王は、偉そうに俺たちに演説ぶってやがる。
「兵よ、よく聞け! 今は矮小な貴様らなれど、敵の本陣まで辿り着いた頃には猛き武士となっているだろう! 恐れるな!!」
シット! 自分は金銀豪華な装備に身を包んだ近衛に守られてながら指示出すだけのくせに、よくもまあ!
そして会戦の時間は近づいている。大口を叩いても、俺の足はブルっている。
横に一直線に並んだ歩兵の列を乱さず、俺たちはただ前に進んでいく。
「なあ聞いてくれよ」
俺の横にいた兄弟――同じ歩兵を俺たちはそう呼んでいる――が言った。
「俺……この戦争が終わったら、嫁さんもらうんだ」
「……生き残ろうぜ」
それしか言えなかった、この後に起こることを想像したら。
「ああ、死んでたまるかよ!」
グッと俺は隣にいる兄弟と腕を組んだ。正面には、敵で埋め尽くされた荒野があった。
戦いの笛が鳴った。突撃の、合図だ。
あとはもう何がなんだか覚えていない、俺や兄弟と同じような格好をした、敵の中に突っ込んだ。
気がつくと俺と兄弟は敵兵のまっただ中を突き抜けていた。生きてる、信じられねえ。
「生きてるか!」
「死んでたまるかって、言ったろ!」
そう答えた兄弟の体を、遠くから弾丸のように直進してきた機動兵が、貫いた。
そこで俺はようやく気づいた。敵の馬車が遠く後方の歩兵を蹂躙している。角つき兜の大男が兄弟たちを薙ぎ倒している。
進みすぎたんだ。
もう駄目かと思ったその時、一縷の希望が見えた。歩兵の援軍だ!
天高くから降下して来る兄弟。
だが、俺は気づいてしまった。
「来るな! 来るなー!」
あらん限りの声を出して叫ぶ俺に、兄弟は気づかない。その位置はまずい。
俺の『前』と『後ろ』だけは!
パチッ。
「二歩です」
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