ショートショート:いづれの御時にか
あるところに、生命技術を専門とする科学者がいた。
その科学者が大発明をしたと言うので、新聞の記者が科学者の実験室にやってきた。
「博士、世紀の発明をしたそうですが、どんな発明を?」
科学者というよりはアニメオタクに近い風貌の科学者は大きくうなずいた。
「うむ。ちょっと前、不妊症の魚のヤマメのオスメスそれぞれに、ニジマスの精子と卵子を移植し、ニジマスの子供を生ませるという実験が成功したのじゃ。
その技術をさらに応用して、わしは人間を母体にして別の哺乳類の子供を生ませたり、逆に別の哺乳類を母体にして、人間の子供を生ませる技術に着手したのじゃ」
「な、なんですって……!?」新聞記者はその言葉に驚いた顔を見せた。
「うむ」と博士は大きくうなずき、
「というわけで、わしは不妊症の豚の雄と雌を選び、人間の精子と卵子を移植し、人間の子供を生ませるという実験に着手したのじゃ」
「その実験が成功したのですね!」記者は興奮した口調で言うと、
「うむ、今からそれをお見せしよう」博士はそう返事をして、部屋の奥へと消えていった。
記者は待ちきれずうずうずと待っていたが、やがて博士は毛布を両手に抱えてやってきた。
ちょうど、人間の赤ん坊をくるんだような大きさだった。
記者がお、という顔で立ち上がると、博士は、
「ほれ、見てみなされ」
と毛布の中身を記者に見せた。
そこに眠っていた赤ん坊は、普通の人間の赤ん坊だった。女の子らしい。
「素晴らしいですね……。しかし……、なぜこのような実験をしようと思ったのですか?」
記者は博士に質問すると、博士は赤ん坊をあやしながら、
「いやー、一人身は寂しくてねぇ……」
本当に嬉しそうな顔で言った。
「そのオタクな風貌だったから、嫁の貰い手がいなかったんですね……」
記者は博士に同情した様子でつぶやくと、さらに博士は、
「だからこの実験で、理想の女の子を育てて、将来的にはわしの嫁にしようと思ったのじゃ」
でれでれした顔で笑った。
その言葉に、記者はたまらず突っ込んだ。
「光源氏計画かよ!!」
おしまい。
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