佐藤さんシリーズ:「佐藤占い」(ver.2

 昼時の学食で憩いのランチタイム、と思いきや。
 席は満席。隣が立ったと思ったらすぐに入れ替わりで席を取りに来るわ、おばちゃんのキンキン声が響くわ、これじゃ落ち着いて飯を食うのもままならん。
 そんな騒がしい中、俺の目の前の席でひたすらにご飯をカレーへと突き崩す作業に没頭してるのが佐藤なわけだが……こいつ、本当にマイペースだな。
 俺はというと、自分のラーメンを食べ終えようとしている、ボール紙のような厚さのチャーシューは一口で胃の中に納まってしまう。
 ああ、このチャーシュー、見るたびに切ねえ。ごちそうさま。
 手持ち無沙汰だ。まあ、カレーを崩す佐藤をじっと眺めるのも悪くはないんだが……うん、まあそれはさておき。
 俺は無意識に、席に放ってあったフリーペーパーを手に取った。居酒屋のクーポン券とかがついてるようなやつだ。
 おおかた、隣の席にいた奴が置いてったんだろう。
 パラパラとめくっていると、巻末に血液型占いのコーナーがあった。なになに……。

『A型のアナタ、うっかり口に出した言葉が思わぬ誤解を招きそう? 赤色に注意!』……なんだこりゃ。
 誰にでも言えそうな結果に呆れ、俺はフリーペーパーをテーブル置いた。そしてそれを目にする佐藤。福神漬けをぱくり。
「……占い」
「ああ、こういうアテにならなそうなのじゃなくてさ、タロットとかなんかそれっぽいのならやって見てもいいんだけどなあ……」
 しかし俺は自分がキラキラファンシーな感じの占いの館とやらに足を踏み入れてる自分を想像して苦笑した。まあ、自分から率先しては行かないだろう。
「……」
 黙々とカレーを口に運ぶ佐藤の目が、一瞬きらりと光った……ような気がした。

 放課後、いつものように帰ろうとする俺の隣に、佐藤の姿はなかった。
 何も俺と佐藤は四六時中いっしょにいるわけじゃない、あいつもあいつで色々と用事はあるだろうしな。
 何事もない一日だったが、たまにはこういう平穏な日も悪くないよなあと思いつつ。
 夕食の鍋の火を弱めた所に、佐藤が部屋のドアを開けた。
「おう、お帰り……って」
 なんか妙に大荷物な佐藤は、入るや否やバッグを開けていろんなものを取り出してきた。
 暗幕、蝋燭、魔方陣が描いてある……ビニールシート? お前、俺の部屋で一体何をするつもりだ。
 俺が呆然と見ていると、部屋はあっという間に怪しげな雰囲気に。
 暗幕で外の光は遮られ、明かりはドクロの上にのった蝋燭だけ、妙に甘い香りのお香が焚かれている。
 そしてそこに佇むのは、黒いローブを纏った佐藤。
 っていうかそのローブ。思いっきり袖と裾が余ってるぞ。
「占い」
「……ええと」
 おそらく、佐藤はどうやら俺を占ってくれるつもりらしい。ってか占いなんて出来るのかよお前。
 佐藤はソフトボールの球くらいの大きさの、透き通った水晶球を大事そうにビニールシートの中心に置いた。おお、意外と本格的かもしれないぞ!?
 ごそごそと、さらにバッグから何かを取り出す佐藤。今度は一体何が出てくるのやら。俺はちょっぴり期待して佐藤の動きを見ていると、佐藤は大儀そうにそれを取り出した。

 それは赤だった。
 長い触角、もう少しで毒々しいとまで感じさせるギリギリの赤いボディ。時折はげしく音を立てて動く尻尾。
 エビである。……でかすぎだろ。
「待てオイ」
 何か? といった風に不思議そうに俺の方を見る佐藤。いや「何か?」じゃねーよ!
「何だそれは」
 えへんとぴちぴちした赤いそれを持ち上げて言った。脚をこちらに向けて猛烈に威嚇している。
「イセエビ」
 ……ちげえ! そんな事を聞いてるんじゃねえよ!!
 佐藤は活きのいいイセエビをビニールシートに置くと、両手で水晶球を持ち上げた。
 嫌な予感がする。
 ……俺はふと、歴史の授業を思い出していた。動物の骨とか甲羅に入ったヒビ割れを見て占うという原始的な占いを。ってああ、もう振り上げてるよ。
「ちょっと待――ぐしゃあ。

 俺が部屋の隅で体育座りをしている中。真剣な表情でイセエビだったものを検分していた佐藤が、こちらを向いた。
「ど、どうした……?」
 一体何がわかったというんですか佐藤さん。
「今日の晩御飯……エビシチュー」
 うっかり二人分を煮込んでいた鍋から、シチューの香りが寄ってきた。

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