『MC☆あくしず vol.6』 スターリングラード占領を目指すヒトラーの判断は間違っていたのか?

MC☆あくしず vol.6』 スターリングラード占領を目指すヒトラーの判断は間違っていたのか?

 『MC☆あくしず』も無事に6号まで発行できて、まずはめでたい。

 今回の特集記事『F-Xは俺の嫁』はすごい傑作記事であると思うがそれは置いておいて、ここで紹介するのは『萌えよ!戦車学校[戦史編]』のスターリングラード攻防戦である。

 時系列順の、地図をいっぱい利用した戦いの流れはすごくわかりやすい。

 そして、これを見ながら思ったことがある。
 ヒトラーがやたら壮大に部隊を動かそうとしている点と、その戦争指導を受けてのドイツ軍の将軍たちの、どちらかというと及び腰の判断である。

 1940年春のフランス戦役を思い出してみよう。

 ドイツ軍は電撃戦によってフランスを降伏させた。前線の将軍たちはしばしば司令部の停止命令をふりきって前進を続け、そのどちらかといえば暴走に近い動きが、フランスをより混乱させている。

 私は、そこにどことなく「もう、前の戦いと同じになるのはイヤだ」という前線の指揮官の思いを感じる。
 彼らの多くは、泥沼の塹壕戦となった第一次世界大戦の地獄を知っている。自分たちが足を止めれば、そうなると分かっていた。
 だから進んだ。とにかく前へ、前へ。そしてそれが奇跡的な勝利を生んだ。

 さて一方のヒトラーである。フランス戦に誰よりも恐怖を抱いていたのはヒトラーである。彼もまた、前の戦争の体験がある。あんな戦いだけはイヤだったろう。そして同時に、ああなってしまう覚悟もあったろう。

 が、結果はあっという間のフランス降伏である。喜ぶと同時に、ヒトラーは考えた。つまりこれは現代の戦争とは大胆に、敵に先んじて行動すれば勝てるものなのだと。

 ヒトラー自身は、戦争については素人である。軍にいたといってもそれは兵卒や下士官としてで、プロフェッショナルではない。だから、戦闘分析や作戦研究の積み重ねではなく、経験則で判断することになる。

 ポーランドも、デンマーク&ノルウェーも、そしてフランスやベネルクス三国を相手にした戦いも。

 先手をとって大胆に戦えば成功した。

 そして1941年のバルバロッサ作戦――スターリングラードの戦いの時まで、ヒトラーはおそらくこの作戦は「それほどうまくはいかなかったが成功した」と考えていたのではないか。
 何しろ、ウクライナを中心としてヨーロッパロシアのかなりの部分をドイツは占領している。ここまで敵の領土を奪った作戦が、失敗のはずがないではないか。

 だからこその、ブラウ作戦である。
 この壮大な作戦によって、ドイツ軍はさらにソ連領土深くまで攻め込んだ。

 だが、プロであるドイツ軍の将軍たちはもはや自分たちがそれほどに戦えるとは思っていない。フランスの時とは違う。いくら進んでも戦争の終結につながらないのなら、補給線が伸びるような前進はあまりせずに、有利な場所を確保してそこで戦おうと考えたのではないか。

 しかし、将軍たちの考えにも問題がある。

「有利な場所で粘ったとして……それで戦争は終わるのか?」

 さあ、困った。戦争が終わるためにはゲームでいえば勝利条件に相当するものを満たさねばならない。
 敵を全滅させるとか、キングを取るとか、首都を落とすとか。思えば1941年のタイフーン作戦はそういうものだった。

 が、現実ではゲームほどには勝利条件ははっきりしない。ナポレオンがそれでヒドイ目にあってる。

 さて、そこで考えよう。
 どうすれば、戦争を勝てる? あるいは勝てないまでも終わらせられる?

 ヒトラーも将軍も、そこで悩んだろう。ブラウ作戦がうまくいってないのは事実だが、とにかく勝利条件(らしいもの)をひとつでも満たす努力はしないといけない。

 悩んだあげく、ヒトラーと将軍たちは決断した。

「スターリングラードはどうか? 取れるか?」
「は、スターリングラードでしたら……おそらく。可能性は高いかと」

 続いて、作戦を考える参謀や前線指揮官らが頭をひねる。

「スターリングラードを落とせ? 待てよ、かなりの戦力が必要だぞ」
「とにかく、何としてでも落とせ、だ。落とす方法を考えよう」
「戦力を集中させるとなると……そうだなぁ、側面は全部同盟国軍に任せるしかないが……リスクがあるな」
「そのリスクの判断はこっちだけではできん。とりあえず上に報告だ」

 そして上の判断は、ゴーだった。

 一般に言われるように、ヒトラーがゴリ押ししたのかも知れないし、これは私の想像だが、将軍たちもソ連軍の動向について甘い判断をして、後でヒトラーに責任を押しつけたのかも知れない。

 その判断の結果、ドイツ軍はスターリングラードで地獄を見ることになる。
 失敗である。
 責めを負うべきことでもある。
 しかし、判断の過程における、「政治的な得点を得るためにスターリングラード占領を目指す」という目的そのものについては、私は妥当性があると考える。

 スターリングラードを落としたところで得られる勝利得点など雀の涙であるということは、後世の視点だ。

 勝利条件も、勝利得点も分からないまま戦っている彼らにそこまでを求めるのはアンフェアというものだろう。

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