情欲になにかを失う人々を描く平安怪奇譚――『鬼譚草紙』

鬼譚草紙は、陰陽師シリーズのエロス版などと言われますように、平安時代を舞台とし、伝承をベースとして怪異を語る小説です。著者は夢枕獏で、天野喜孝のカラーイラストがついた、豪華な作りの本となっています(文庫版も)。

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三本立てですが、どれも情欲に囚われ熱情のあまりの行動で取り返しのつかないことをしてしまうというお話。禁欲修行の成果も打ち捨てて鬼と化した行者、鬼と競い得た女を約束を守れずに失ってしまった紀長谷雄、妹と通じ死したのちも眠りを妨げた小野篁。三者三様の哀切なる女への執着の形。執着をあっさりと納得して理解して追認してしまいたくなるあたりが筆力でしょうか。

こうしてみますと、という概念は情念の具現としてひじょうに便利なガジェットなんだなあと思いました。語り部の平安時代もの平安陰陽絵巻なんかでも、情念の形としての異形ってのは、色々と使えそうですね。


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