『機動戦士ガンダム00』のSFネタ解説その5:ソレスタルビーイングの秘密基地を探せ
広島では一週遅れのガンダム00。第3話では、いよいよソレスタルビーイングの正体を探る三大国の思惑が描かれるようになった。
ユニオンのグラハム・エーカー中尉とカタギリ技術顧問が対ガンダムチームに配属された場面では、「もしかしたらコッチが主人公ではなかろうか」と思ってしまうカッコいいBGMが流れていた。AEUの諜報部も、人類革新連盟のセルゲイ中佐もなかなか良いセリフや演出をもらっている。
ガンダムを追う人々ががんばってくれると、私としてもネタが増えるので今後の活躍に期待である。
今回のSFネタは3話に対応し、秘密基地である。
ガンダムをいかに秘密に作るか――そこに絡めて考えてみよう。
たとえば現代において、F-22ラプターのような最新鋭戦闘機を凌駕する兵器をどの国家からも秘密に作ろうとしたら――どうすればいいだろう。
そんなことは不可能だと言うなかれ。現実で不可能なら妄想で可能にしろとは、英霊なアーチャーのお言葉である。
もっとも楽なのは、世界を裏から支配している設定にしちゃうのだ。世界を支配しているのなら世界中の軍事機密をはじめ、企業の技術力や生産力を利用できる。これでF-22を凌駕する機体を生産できるだろう。
では、その世界を裏から支配するのに必要なものはなんだろう?
それはやはり、「こちらの意志を強要する能力」だ。洗脳やテレパシーによって他人を意のままに操れるようになれば、世界を裏から支配できる。
たとえば、『強殖装甲ガイバー』に出てくる秘密結社“クロノス”は、人間を獣化兵(ゾアノイド)に調整することで、指揮官である獣神将(ゾアロード)の意志に絶対服従させることができる。クロノスが社会の表面に出る時にアメリカの大統領補佐官が実は獣化兵であったと分かる場面があるが、このようにして世界にある各組織の要所要所に絶対忠誠を誓う相手をまぎれこませることができるのがクロノスの強みであった。
ただ、洗脳とか思考制御は強力であるがゆえに、使いどころが難しい。
“黒い幽霊団”(サイボーグ009)も、どうやって洗脳ないし構成員を制御しているかは置いておいて、やはり世界を裏から支配している感じであった。(ただこれは作品によってだいぶ違ってくる)
そこで続くのが、“四人姉妹”(創竜伝)とか“ナイト財団”(ナイトライダー)、“P4”(エリア88)などのように強力な資金と影響力を持って世界経済を支配する組織だ。
こうした組織の場合、完全にはその正体を隠すことができない。秘密基地のようなものも、金さえあれば無人島を買い取って――という手があるが、そこで働く人々はあくまで表の企業の雇い人である。
木を隠すなら森の中というように、秘密兵器を作るのであれば普通の工場で堂々とプロジェクト立ち上げて、でも要所だけは隠してというのが半ば以上表の世界に存在する秘密組織のやり方だ。
一方で、完全に闇に隠れてしまうタイプの秘密結社もある。たとえば“ショッカー”(仮面ライダー)のような特撮ヒーロー物に多いタイプの敵組織だ。すごい力や技術を持つ犯罪者組織ではあるのだが、現実世界との間にほとんど接点を持たないので、政治力や経済力をうまく利用できず、すべてが力業に解決しないといけない。
だから、“ショッカー”型の秘密組織が新兵器を手に入れるためには、研究を行う科学者は誘拐するし、開発に必要な資料や資材もすべて、盗み出すことになる。
そして実際に研究開発から生産まですべての作業を隠れてやらなければならず――秘密基地が是が非でも必要になるのだ。
このように、秘密結社の性質と秘密基地の必要性は密接な関連がある。
ようは、表の社会への影響力がどれほどあるか、なのだ。表の社会へ影響力があればあるほど、隠れる必要性はなくなってくる。
ガンダムを作り運用するソレスタルビーイングにも、これは言える。
第三話までの演出を見る限り、ソレスタルビーイングにはそれほど強力な表社会への影響力はなさそうである。王留美のような表の社会で活動できる肩書きを持つメンバーはそれなりに多いようだが、見た感じでは“四人姉妹”ほどの力はなく“フリーメーソン”のような、一種の信仰によって結びついている印象がある。
表の力がないとなると、逆に秘密基地の重要性は増す。
たとえば、ガンダムキュリオスが2話で使用した爆撃用のオプションパーツを分析した人革連の技術兵が「これと同じ規格を生産している国や企業はない」と言っているのもこれを裏付ける。
つまり、ソレスタルビーイングは“ショッカー”ほどではないにしてもどこかにかなり大規模な秘密基地を用意しているのだ。
さて、ここからはいつもの私の妄想のターンである。
結論から言えば、私はソレスタルビーイングの秘密基地は月にあると考えている。
なぜ月かというと、ガンダムヴァーチェのティアリエが「地球はキライだ/宇宙はいい」という部分からである。別に根拠というわけではない。この言葉をキーに妄想を広げてみたのだ。
宇宙に進出した人と地球に残った人の対立で古典的なSFの名作といえば『月は無慈悲な夜の女王』(ロバート・A・ハインライン)がある。これは月の住人が地球へ独立を宣言して戦争をふっかけるという初代ガンダムの元ネタにもなっている。
ではなぜ対立するかというと、月で生まれ育った子供は重力1/6の世界に適応してしまうので、地球の1G環境下では生きていけないという医学的、生物学的な理由が原因とされることが多い。『プラネテス』(幸村誠)にもそうしたエピソードがある。
あるいは、タイトルや作者は思い出せないが『SF未来戦記 全艦発進せよ!』収録の作品に、低い重力環境下で肉体的機能は落ちたが精神的には超人的な知力をもった若い月の少年たちが、地球への独立戦争を行うというものがある。この作品では圧倒的な地球艦隊を月の天才少年たちは奇想天外な超兵器で殲滅している。
ガンダム00のティアリエにはどこかそういう印象がある。
ちなみに歴史改変ネタというのが正しければ、すべてが失敗に終わった歴史からタイムトラベルで200年過去に転移してソレスタルビーイングを設立したのがティアリエだと妄想している。つまり1話の最後に出てきたあのハゲ親父はティアリエ君のなれの果てということで、時の流れというのは残酷である。『ジェネレイターガウル』もそうだったじゃないか。
なお、その時にタイムトラベルで200年過去に運び去った4つの太陽炉を作ったのは沙慈・クロスロード君(が成長した後)であろう。
閑話休題。
月で生まれ育った人々の中にはソレスタルビーイングのメンバーが大勢いるものと考えられる。だが、いくら軌道エレベーターがあるといっても月は遠いし人口もそれほどはないだろう。それが逆に、ソレスタルビーイングを地球の人間が誰も知らない秘密結社めいたものへとしているのではないか。
それに人口が少ないといっても軌道エレベーターやコロニー建設の資材調達のために、月には高度な技術力と生産施設がそろっているはずだ。それらがガンダム製造に流用されたのだとすると、いろいろとツジツマがあう。
が、これはやがてバレることでもある。
簡単な消去法である。地球にある三大国の管理下にある施設をしらみつぶしにしていけば、やがて地球にはガンダムを作った工場も人間もいないことが分かるだろう。
そうなれば、ソレスタルビーイングを探す地球の三大国の視点は月へ――宇宙へと向けられる。
秘密結社がその正体を暴かれる時は、滅びる時である。
だが、滅びてそれで終わりというばかりではない。
ソレスタルビーイングの本当の目的は、正体を暴かれたその時にこそ、明らかになるだろう。
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