IF-CON夜企画:『アナリストが語るアメリカ軍』 覇権帝国ローマ(共和制)と覇権帝国アメリカの軍隊に共通するアマチュアリズム

 さて、私が参加したIF-CON夜企画その2の『アナリストが語るアメリカ軍』は、ゲストの高貫布士さんによる講演会形式である。
 私はちょっと時間に遅れて入ったのだが、18畳にびっちり参加者が詰められて、窓も扉もしめきっているので皆が酸欠状態になりかけである。しかし、たとえ酸素欠乏症なテム・レイになる危険を冒しても聞く価値のある講義であった。
 ここでは、その講義の一部、危なそうであったり商売になりそうな部分を抜いてご紹介したい。

 アメリカ独立戦争では義勇兵、民兵が当時のアメリカ軍の主力をなしていた。プロの軍隊ではなく、素人の軍隊である。この、民兵こそがアメリカを作ったという意識は、200年以上たった今もアメリカ人には染みついている。
 が、素人ばかりの軍隊で勝てるほど甘いものではない。独立戦争ではプロの軍隊、傭兵も編制してある。が、これらは金がかかるので戦争が終わった後で解散してしまった。
 アメリカは素人の民兵だけしかいない時代がその後長く続いたのである。

 続く対英戦争でプロの軍隊、海軍や海兵隊を解散していたことが裏目に出てしまう。ワシントンがイギリス軍の襲撃を受けてホワイトハウスが焼けこげ、それを隠すために白く塗ったからホワイトハウスになったという。写生大会で失敗した絵を白で塗りつぶす小学生みたいな話である。

 さて、この失敗から海軍や海兵隊などのプロ軍隊を常設したアメリカ軍は、軍を指揮する将校もまた、ウェストポイントなどの士官学校で育成するようになる。

 テキサスをメキシコから奪った戦争が代表されるように、この頃のアメリカ軍というのは一種の屯田兵、しかも本来は他人の領土への屯田兵である。入植して、なんか我が物顔でふるまって、それで喧嘩になったら戦争をおこして、最終的には攻め取るわけである。どう考えても近代国家がやることではなくヤクザが縄張りを広げている感じであるが、こうした状況にも素早く対応できる柔軟性こそがアマチュアリズムあふれるアメリカ軍というものだ。

 南北戦争が屯田兵あるいはヤクザ屋なアメリカ軍のあり方を質量両面で変化させた。
 この頃までのアメリカ軍は各州の指揮下にあるため、戦争はどちらがより多くの州を確保するかという陣取り合戦な様相を呈したのである。
 このリソースの奪い合いは、士官についてもいえて、ウェストポイント卒業の南軍出身の将校の多くが割合が南軍に流れた。この苦い経験から、士官学校には政治家の推薦状が必要になるようになったのだ。

 ところで、南軍出身の将校が多かったというのは、やはりメキシコの戦いなどの歴史的な影響もあるのだろうかとふと高貫さんの講演を聴きながら思っていたり。

 南北戦争の展開はよく知られている通り、北軍の勝利だ。だが、その道は平坦ではなかった。北軍に残った上級将校は、南軍に比べて質が落ちる感じで失敗や敗北を重ねていった。さらに損害の多さによって将校の数も不足していく。
 ここで、アメリカ軍はその偉大な素人軍隊としての本領を発揮する。南北戦争の後でROC(予備練教)によって将校を大量に動員する下地ができたし、戦時中は上級将校も失敗したのを閑職にまわしてどんどん有能な人間を取り立てていくのだ。
 これもローマ共和国時代のハンニバルとの戦争、第二次ポエニ戦争を思わせる。ちなみにSPIの『ポエニ戦争PUNIC WARS)』では、ローマ共和国側の将軍コマは裏にして混ぜておき、ゲーム進行に合わせて引いていく。ハンニバルに匹敵する能力を持つスキピオを引いたら当然ながらそいつに軍勢を集中させて使うようになるわけで、このへんのルールも「有能なヤツが頭角をあらわす」課程を表していて面白い。

 南北戦争によって軍の近代化をなしとげた事は、アメリカがその後太平洋やカリブ海へ進出する下地にもなった。
 そして、それが第一次、第二次世界大戦の後でアメリカが世界に覇権をもたらすことになるのだが――このへんからが実際の講義では一番面白かったので、どうしても聞きたい人はぜひ次のIF-CONに参加してみてほしい。

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