IF-CON夜企画:『一年戦争史・ジオンの部屋』 脳内ドラマをわきたてるアニメ設定とは

 さて、IF-CONのラスト4コマ目、深夜の開催となった『一年戦争史・ジオンの部屋』である。なぜに初代ガンダム、なぜにジオンかというと、ゲストの大山格さんが大のジオンファンだから。ジオンが悪役なのは、連邦政府による情報操作とのたもう大山さんが中心となり、歴史群像から出た『一年戦争全史』(このシリーズでは破格の売り上げであったそうな)の苦労話を中心にあれこれとおしゃべりを。

 『サイバーコミックス』が出ていた頃とは違って、俺ガンダム、俺設定にえらく厳しいご時世である。原作に矢立肇の名前がついたアニメこそが正しいという姿勢でなくては書かせてもらえない。

 だが、アニメや小説などのフィクションにおける世界設定を考える場合、そうした制約は必ずしもマイナスには作用しないとも思う。世界設定というのは、自作しはじめると世界そのものが暴走をはじめてしまい、読者どころか創造主すら置いてけぼりになる可能性があるのだ。
 アニメや小説の中心はキャラクターであり、彼らが繰り広げるドラマである。世界設定やSF設定や軍事設定は、それらキャラクターやドラマをより楽しむためにある。ハンバーガーのパンズとパティの関係だ。どっちかが自己主張しすぎると海原雄山(初期型)に怒られる。ようは、バランス感覚なのだ。

 だから、ドレン“大尉”がキャメル艦隊の指揮官というのにどう理屈をつけるかであれこれ頭をひねった結果として出てきた、
「キャメル艦隊は常設の艦隊ではない。Uボートの狼群戦法よろしく、ジャブローから発進した艦(木馬)を封じ込めるべく近場の3隻のムサイを集めてキャメル艦隊が臨時編制されたのだ。ドレン大尉は先任将校として、その指揮官となった」
 という解釈は、なかなかに面白く、もっともらしい。『一年戦争全史 下』p154のドレン大尉紹介を読む限りその解釈は採用されていないが、アニメ本編を否定することなく、ミリオタ的な面白さも満載だ。
 たとえば、そう、こんな風に――

>>>脳内ドラマ開始

 オデッサの敗北、そしてジャブロー攻略も失敗に終わり、いよいよ連邦軍が宇宙に進出しようかという0079年12月。
 ジオンはまだかろうじて掌中にある地球軌道の制宙権を確保すべく、何隻ものムサイを地球低軌道(350~1000km)を巡る位置に置いていた。地上から打ち上げられた連邦軍の艦艇がもっとも脆弱なタイミングで迎撃をかけるためだ。
 ジャブローから木馬=ホワイトベースが打ち上げられたのは、そうやって何度か連邦軍に痛打を与えた直後のことであった。

「ジャブローから戦艦クラスの物体が打ち上げられました」
「軌道要素の割り出し急げ」

 南米上空3万6千km。静止衛星軌道にあるチベ級巡洋艦では、地上から届く情報を、司令部スタッフが手早くまとめていた。
 静止衛星軌道からは常時ジャブローを監視できるが、ここから攻撃隊を発進させたのでは到達までに時間がかかりすぎる。
 攻撃を担当するムサイがいるのは低軌道――地上にほど近い位置だ。地球一周にかかるのは2時間弱。相互の軌道要素にもよるが、現時点なら最低でも2隻、最大で6隻のムサイを標的に差し向けることができるだろう。

「とはいえ、どのムサイも、そろそろ燃料や弾薬が心細くなっているはずです」
「補給を要請してはいるんだがな……特に燃料が乏しくなっているのがキツイな」

 燃料が乏しくなれば、柔軟な戦術行動が取れなくなる。戦闘前に敵の頭を押さえる軌道に出るのが精一杯で、後は足を止めて(相対速度が固定のままで)どちらかが倒れるまで殴り合いという消耗戦になる。

「軌道要素、出ました!」
「ちっ、かなりねじって上がってきたな。追撃できるのはキャメル、トクメル、スワメルの3艦だけか。おい、燃料はどうなっている?」
「ここで追撃すると、3艦ともほぼ空になりますね。どうします?」
「マッドアングラー隊から通信! 打ち上げられた敵艦は木馬です。そしてシャア大佐がザンジバルで追撃に入るとのことです」
「なに? そうか、ザンジバルが出るなら足止めだけできれば大丈夫だな。よし、3艦とも向かわせろ――先任将校は誰だ?」
「キャメルのドレン大尉です」
「よし、これより木馬追撃艦隊はキャメル艦隊と呼称。指揮官はドレン大尉だ」

>>>脳内ドラマ終了

 こういうのも面白そうではないか。
 静止衛星軌道上の司令艦となったチベでは、砲塔を下ろしてかわりに光学観測用のでかい望遠鏡を地上に向けているとか。
 星一号作戦前に、この司令艦のチベを排除すべく連邦艦隊が動きはじめたが、果たして武装がほとんどないチベ(ついでに、モビルスーツも旧式のザクが2機だけ)でどうやって逃げ落ちるかとか。
 いろいろと脳内ドラマが沸き立つ90分であった。

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