ショートショート「発明」
まるで理科の実験室のような、博士の研究所。そこで記者はこの度の画期的な発明についてインタビューをしていた。
「博士、今回の発明は究極の娯楽だとお聞きしましたが?」
「うむ。ところで私が常々思っているのは、娯楽というのはおおむね金がかかる」
「まあ、そうですね。しかしそれは仕方ないことでは……」
「そう思うだろう。ところで、君の趣味はなんだね?」
急に質問を受けて、記者は椅子の上で少し身じろぎをしてから答えた。
「はあ、私ですか。私は三度の飯よりスノーボードが好きでして。時間が許すなら、いつまでもやっていたいくらいですね」
「じゃあ君は大好きなスノーボードが夏に、リフト代もかからずに、しかも自宅で、怪我の心配もなくできるとしたらどう思う?」
「まさか! そんなことはありえませんが……もし出来るなら素晴らしい事ですね!」
それを聞くと博士は、今回の発明品を指差した。それは大人もすっぽり包んでしまえそうな大きな機械だった。台座に置いた卵のようにも見える。
「私が開発した、このヴァーチャルツールならそれができるのだよ」
記者はそれをみると幾分、がっかりしたように博士に尋ねた。
「はあ、つまり仮想現実……夢を見ているようなものですか?」
「論より証拠だ、君。やってみたまえ」
そう言って博士は、卵型の機械を開いて、記者をその中に入れた。巨大なヘルメットを被せられた記者は不安そうに博士に聞いた。
「博士、いざとなったら内側から出られるんでしょうね?」
「そんな気にもならないから安心したまえ」
「あ、博士。できればナイターのほうが好きなのですが……」
「ははは、オマケに金髪美女でもつけてあげようか?」
「本当ですか!? 私は女性の好みにはちょっとうるさいですよ」
「思う存分、楽しんできたまえ」
機械が作動してから、数日が過ぎた。博士は懇願するように機械を叩いている。
「おおい君。もう十分だろう……開けてくれ!」
機械は外から開けられるように作られていなかったのである。
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