『機動戦士ガンダム00』のSFネタ解説その11:宇宙戦闘その2(母艦とモビルスーツ)

 機動戦士ガンダム00を見て、出てくるギミックや台詞を元に妄想をたくましくしていくSFネタ解説シリーズの11回目。

 宇宙戦闘その2では、母艦とモビルスーツという組み合わせについてSFネタ的にありえないことをさもありそうに語っていこう。

 いつものように、真面目七分にホラ三分、大嘘ついても小嘘はつくなの三割精神でやっていきたい。

 ガンダム00の第10話、『ガンダム鹵獲作戦』では、とうとう最後の輸送艦ラオホゥ4番艦も撃沈されてしまった。無骨で簡素で好みのメカであるので、次の登場にも期待したい。

 ラオホゥが撃沈された後、セルゲイ中佐らガンダム鹵獲のMS部隊は、撤退を開始している。つまり、ティエレンらモビルスーツ部隊は自力でステーション(あるいは味方に拾ってもらえるポイントまで)帰還できる能力があるということになる。
 ではなぜ、途中までラオホゥに運んでもらっていたのだろうか?
 これにはちゃんと理由がつくのである。

 宇宙空間では空気による抵抗がない。一回ロケットを噴射して移動を開始すれば、ずーっと、ずーっと燃料なしで一直線に移動できるのである。航空機であれば、100kmを飛ぶのと1000kmを飛ぶのとでは、消費する燃料に10倍の違いが出る。それが宇宙空間であれば同じ燃料で100kmが10,000kmでも1,000,000万kmでも、それこそ月にでも火星にでも移動できるのだ。

 もちろん、加速1回だけであれば、時間はかかる。人革連のモビルスーツ、ティエレンが秒速1kmで移動を開始した場合、100kmには2分弱で到達するが、10,000kmとなると3時間かかる計算になる。月まで38万kmを旅しようとなると、4日以上コクピットの中ですし詰めである。トイレや食事の問題をクリアしたとしても、おそらくパイロットは疲労困憊だろう。
 第二次世界大戦での話になるが、日本軍の零戦は、ガダルカナル上空で戦う場合、航空基地のあるラバウルから1000kmを飛んで、また帰っていった。この時には往復で7~8時間の時間がかかり、パイロットは長駆敵地への飛行にかなり消耗したという。

 そしてこれが、モビルスーツに母艦が必要な理由のひとつである。
 モビルスーツは戦闘や作業に特化した存在であり、居住性能は考えられていない。トイレも風呂もベッドもついていない。パイロットの能力を最大限に発揮できるようにするためには、風呂やベッドがあって、コックが作った美味いメシを食わせてくれる母艦があった方がいいのだ。
 もっとも、第9話で登場したプトレマイオスの食堂場面ではあまりメシが美味そうではなかった。いかにも宇宙食という感じである。メシについては、そのうちコロニーとかが出てきたときに、『美食の哀しみ』(アイザック・アシモフ)や『海底牧場』(アーサー・C・クラーク)なんかを引き合いに馬鹿話をしてみたい。

 目的地まで時間がかかりすぎてパイロットに負担になるというのなら、速度を上げてやるというアイディアはどうだろうか。加速時間を伸ばして、速度を10倍にすれば、1/10の時間で目的地へ到達するという考えである。そうすれば、母艦が必要ないとは言わないまでも、頼る割合は減るというものだ。
 これはなかなか良い考えだ。さらにガンダムのようにGNドライブを使った高機動モビルスーツであれば、母艦に頼る割合はぐっと減る。プトレマイオスという母艦が半年もの間、誰にも見つからなかった背景には、GN粒子によるジャミングの他にも捜索する側が「常識的に」母艦がいるであろうと考える場所よりも、ずっと離れた場所にいたせいでもあるだろう。いない場所をどれだけ探しても、見つからない道理である。

 が、これはやはりガンダムだからである。
 GNドライブの原理はまだ不明ながら、おそらく推進剤はゼロか、あるいはわずかで良いと思われる。だが、他のモビルスーツはそうはいかない。加速時間を伸ばすというのは、推進剤を消費するということになる。このコラムの第9回:宇宙戦闘(その1)で書いたように、モビルスーツの推進剤はやはり戦闘時に使うべきものであって、敵と戦闘に入るまではできるだけ節約するべきなのだ。
 これまた先ほど紹介した零戦がガダルカナル上空で戦う例でいくと、往復1000kmを7時間以上かけて移動するため、零戦はガダルカナル上空では、わずか15分ほどの戦闘しかできなかった。歴戦のパイロットたちがいたラバウル航空隊があたら消耗を重ねるだけでガダルカナルの制空権を取れなかったのには、そうした技量ではどうしようもない物理的な制約があったのだ。

 結論としてセルゲイ中佐が「こんな近くにいた」プトレマイオスやガンダムを攻撃するためにわざわざ4隻のラオホゥにモビルスーツを搭載して発進させたのは当然の行為なのだ。最初から母艦であるラオホゥが全滅ないしすべて航行不能になったとしても、ティエレン部隊が自力でステーションに帰還できるだけの推進剤を残すよう計算して作戦をたてたのだろう。

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航続距離と母艦の捜索について、補足

>いない場所をどれだけ探しても、見つからない道理である。

 ここに関連して、補足

 いない場所を探して見つからないという例として、太平洋戦争劈頭のフィリピンでの出来事がある。当時のフィリピンはアメリカの支配下にあり、その制圧は日本にとって必要不可欠であった。
 そこで、台湾の航空部隊がはるばるフィリピンまで行って航空戦をしかけたわけだが、この時に足の長い爆撃機はともかく、単発(エンジン1個)の最新鋭戦闘機、すなわち零戦もまた護衛として出撃している。
 が、アメリカ軍はまさか日本にそんな長い航続距離を持つ戦闘機があるとは思っていなかったため、フィリピン近海に日本の空母が来ているに違いないと、偵察を繰り返したが見つからなかったというものだ。
 これは零戦の卓越した航続距離を物語るエピソードで、比較的良く知られたものだ。ガンダムの航続距離が分からない以上、その母艦を探るにあたって「どこらへんを探せばいいか」が分からないと難しいことと関連して紹介した。

 余談であるが、私はこの「いない空母を探した」エピソードについて、嘘ではないが三割話であろうとは思う。なんとなれば、日米開戦ともなって、在フィリピン米軍としてみればいずれ来る日本の上陸部隊を事前に発見すべく、可能な限りの偵察機をとばしたのは間違いないからだ。
 そして、そのときに偵察機のパイロットにとって一番気がかりなのは、「その上陸部隊を支援する日本の空母はいるのか?」ということになる。
 なぜなら、空母が護衛についている――その可能性は高い――ということは、空母の戦闘機が上空を警戒していることになる。ただの上陸部隊であれば偵察中に撃墜される可能性は低いが、相手が護衛戦闘機ならば話は別だ。危険は格段に増す。
 偵察機を飛ばす基地の指揮官は、司令部に情報を求めたろう。
「ジャップの空母はフィリピン近海にいるのか? ハワイがやられたそうだが、こっちにも来るんじゃないか?」
「わからん。が、いるもの仮定した方がいいだろう。戦闘機しか搭載できない護衛空母であっても、空母は空母だ。上陸部隊の支援に来ている可能性は高い」
「開戦すぐにこっちに航空優勢を仕掛けてきてる中にやけに軽快な動きをする戦闘機もあるからな。あれが空母搭載機だとしたら、近くにいるんだろうな」
 それが日本軍に伝われば――そう、いもしない空母を探したというエピソードになるわけだ。嘘ではないが、真実でもない。このへんが妥当なところだろうと思う。


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