『機動戦士ガンダム00』のSFネタ解説その12:ガンダムマイスター

 機動戦士ガンダム00を見て、出てくるギミックや台詞を元に妄想をたくましくしていくSFネタ解説シリーズの12回目。

 今回は、第10話の『ガンダム鹵獲作戦』をながめながら、ガンダムマイスターについて考察していこう。

 いつものように、真面目七分にホラ三分、大嘘ついても小嘘はつくなの三割精神でやっていきたい。

 ソレスタルビーイングのガンダムマイスターは中華なお嬢様曰く、「不完全」であるという。
 確かに刹那がいきなりお姫様に正体をばらしたり、あるいはティエリアがブチ切れて何やら一人称が「俺」>「僕」>「私」と変化したり、はたまたアレルヤの人格が豹変してみたりと。

 もう少し、精神的に安定、かつ成熟した人間をマイスターにしたらどうかとは、見ていて思わなくもない。

 しかし。安定した人格、円熟したそつのない精神では、ガンダムマイスターにはなれないとしたら、どうだろうか?

 ワイドスクリーン・バロックSFの傑作『キャッチワールド』(クリス・ボイス)で登場する恒星間ラムスクープ戦艦『憂国』(本当にこの名前なのだ)の乗員の例もある。後半になって明らかになるのだが、この宇宙戦艦のメンバーは、全員『先天的異常』がないとなれない。本来なら重度の精神障害を起こすはずの人間を薬物などで無理矢理に優秀な人間に育てあげて宇宙戦艦に乗せているのだ。

 上記の例はやや特殊であるが、ソレスタルビーイングのガンダムマイスターには、知性や能力ではない、何か重要な“資質”が求められている可能性は高い。超兵とか試験管ベビーとか、戦争でPTSD(外傷後ストレス障害)になっちゃってるというのは、ぶっちゃけガンダムマイスターとしてはどうでもよく。
 “資質”こそがガンダムマイスターに必要であるという可能性はある。
 では、その“資質”とは何だろうか?

 従来のガンダム作品で言うところの、ニュータイプ、あるいはシード、はたまたサイキッカーのような力……かもしれない。
 ただ、このへんは脳神経系を強化された超兵がいるので、ややネタ的にかぶる。美しくない。

 そこでまず、ソレスタルビーイングという組織の目的にまでさかのぼって考えてみよう。
 戦争の撲滅というなんか怪しげなお題目を唱えてはいるが、それにかこつけて、何かを変えようとしているのではないかという駄法螺をここでは紹介してきた。
 タイムマシン物よろしく歴史改変なのかも知れないし、あるいは心理歴史学よろしく未来予測なのかも知れない。
 どちらにせよ、世界を変革しようというのは間違いなさそうである。
 そして、そのために『計画』というものがあり、『ヴェーダ』と呼ばれる超AIとか超知性体(クジラとか世界樹だとカッコいい)とか、そういうものがソレスタルビーイングの知恵袋のようだ。

 未来情報、あるいは未来予測を元に世界と未来を変更するのはけっこう難しい。
 もちろん、このへんは作品世界による。『エリアンダー・Mの犯罪』(ジェリー・ユルスマン)では、未来情報を知った女性がオーストリア人の青年画家を殺すことで未来が変わる。青年の名前はアドルフ・ヒトラー。彼がいなくなったことで、歴史は大きく変わる――というものだ。
 しかし、ガンダム00では今のところ、ソレスタルビーイングを使ってあれこれやってもまだうまくいってない感じなので、未来の変更はかなり難しいと考えられる。

 つまり、世界を変革しようとしても歴史の潮流がうねりのようなもので、全体としては前と同じ流れになる――わけだ。

 ちょっと古い架空戦記に『連合艦隊ついに勝つ』(高木彬光)がある。これはミッドウェー海戦レイテ海戦などの戦いに未来から来た主人公がアドバイスをすることで、歴史を変えようとするものだ。確かにその時の歴史は変わる――日本空母は奇襲で壊滅しないし、栗田艦隊は反転しない。が、それでも最後には日本は負ける。戦争の流れそのものは変わらないのだ。

 未来の予測というものであれば、『ファウンデーション対帝国』/『銀河帝国の興亡II』(アイザック・アシモフ)のハリ・セルダン心理歴史学がそれだ。衰えたりとはいえ強大な帝国の将軍がファウンデーションを攻撃するのだが、この戦いは「始める前から」敗北をハリ・セルダンの心理歴史学によって予見されている。それが分かっていても、やはり敗北するのだ。
 だが、歴史の潮流を覆す存在、ハリ・セルダンの心理歴史学を無効にする存在もまた、『銀河帝国の興亡』には登場する。
 それが、ミュールだ。彼の個人的な異能は人間の集団を対象に未来を予測する心理歴史学にとっては鬼門なのである。

 私は、ガンダムマイスターとはそういう“資質”を持った人間ではないかと考えている。
 ヴェーダによる未来予測、あるいは未来情報に対するイレギュラー的存在、規格外品(ガイバー)な個人。

 この世界には、存在しなかったはずの――個人。

 ロックオンは、もしかするとテロの時に死亡していたのかも知れない。あるいは、テロの時の歴史改変によって、ふたつの存在に分裂した(お墓参りの時に出現したのが、この時空における本来のロックオン)のかも。
 アレルヤは、宇宙を漂流する時に『冷たい方程式』的に酸素が切れて死んでいたのではないか。
 刹那は、戦場で死亡……ああ、そういや1話みるかぎり、ガンダムが来なかったらあそこで死んでたよな。
 そして、ティエリアは。彼(?)は元の時空では存在すらしなかった人間を試験管ベビー的に作り出したのではないか。

 未来情報、未来予測に存在しない、ありえないはずの彼らをガンダムマイスターにして歴史に介入させることで。
 怒濤のごとく破滅へとなだれこむ歴史の潮流を変える。

 それこそが、ガンダムマイスターの必要不可欠な“資質”なのではないか。
 そのようにも、考えてみたのである。

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