機動戦士Zガンダムアドバンス・オブ・ゼータ二次創作「ネバダの白い将軍」・直接文章張り版

もの書きIRCの方で二次創作を書いたら良いといわれたので、AOZの二次創作書いてみました。
個人的に、AOZ本編中であまりにも微妙な扱いだったウーンドウォートを活躍させたくて書いてみました。
(AOZに出てきた登場人物は一人として登場していないし(w)
あと、本来は公開を目的にしておらず、好き放題書いたので出来のほうはご容赦ください><;

TR-6に関してはWikipediaも参照してにゃー。

今度は、文章を直接張った方が良いとご指摘を頂いたので張ってみました。
それでは、どうぞー。

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 アドバンスト・オブ・ゼータ外伝「ネバダの白い将軍」

 U.C.0088年。
 地球連邦軍特殊部隊ティターンズ、それに対抗する反地球連邦組織エウーゴによる「グリプス戦役」はエウーゴの勝利で終わった。
 しかし、その影でかつての一年戦争の敗戦国、ジオン公国の残党アクシズは戦力を温存し、グリプス戦役の終結後、地球連邦に牙をむいた。
 後の歴史家が呼ぶところの「第一次ネオジオン紛争」の幕開けである。
 アクシズから改名した、ハマーン・カーン率いるネオジオンは、各スペースコロニーに軍を派遣し、その後、地球に降下。
 地球連邦の首都ダカールや、その他の重要拠点、軍基地などに向けて攻略を開始した。
 これより語られる物語は、そのうちの一つの目標においてえがかれた物語である──。

                    *

 地球連邦・北アメリカ地域。
 旧アメリカ合衆国のネバダ州に存在するネバダ基地は、ジャブローやキリマンジャロ、それに宇宙上でのスペースコロニー・グリプスのように、人型機動兵器モビルスーツ(MS)や非人型大型機動兵器(MA)の開発拠点というわけではなかった。
 がしかし、周囲の広大な砂漠を利用して、旧世紀から新兵器のテストが盛んであり、また宇宙世紀に入ってからは軍用のシャトル打ち上げ場として利用されるようになり、地球連邦軍の一大拠点として利用されてきた。
 ティターンズの発足後、ネバダ基地は彼らの一拠点として、試験・試作型MS・MAの開発、試験、少数生産が行なわれ、また有事の作戦拠点として活用されてきたが、ティターンズの崩壊後、基地は地球連邦軍に引き渡された。
 かれらが地球で、そして宇宙で作ってきた、大量の「おもちゃ」を残して──。

 荒涼とした砂漠を、鋼鉄の巨人達が行進していた。
 モビルスーツである。
 その数、十二機。
 かれらはとても雑多であった。
 旧ジオン公国のMSの名機、ザクII。
 同じく旧ジオン公国の重機動MS、ドム。
 旧ジオン公国の高性能量産機、ゲルググ。
 アクシズの支援用MS、ズサ。
 ザクの流れを引きつつも、仇敵である地球連邦軍の手により開発された、ハイザック。
 そして、地球連邦軍のベストセラーMSの改良型である、ジムIIであった。
 何故このような敵味方を超えた集団なのか。
 それは、かれらネオジオン軍、北アメリカ方面隊の司令官グラウ・アデルソンの性格と、かれらが地球に降下して、まず攻略した場所が関係している。
 アデルソンは、とても正直な性格であった。
 正直すぎる、と言った方がいいかもしれない。
 かれは一年戦争からの猛者であったが、その性格ゆえ、他人から疎まれることも多かった。
 アデルソンいわく、
「アクシズで生産されたMSは使えない」
 とのことであった。
 ガザシリーズは作業用MSの発展系であり、集団戦で使うしかなかったし、試作機であるガルスJやハンマ・ハンマは、アームパンチやフィンガーランチャー、有線式サイコミュなど、(地球上での)実戦に使うには首をかしげるものであった。
 かといってRジャジャやバウ、といった高性能MSは、アデルソンが「赤毛の狂人」「金髪の小僧」と忌み嫌うキャラ・スーンやグレミー・トトといった、ハマーン・カーンに近い自称「エリート」達に優先的に配備されていたし、ザク3やドライセン、ドーベンウルフといった次世代機は、まだ少数の生産に留まっていたか、開発道半ばであった。
 かれが使えると思ったアクシズのMSは、ただ一機種。
 その運用目的をミサイルによる支援と限定した、ズサのみであった。
 それゆえ、アデルソンは自らに「押し付けられた」北米攻略にあたり、信頼性の高い旧ジオン公国のMSと、崩壊したティターンズや、疲弊した地球連邦軍・エウーゴの機体を鹵獲したり現地徴用するなどして戦力の構築に務めた。
 そして、アメリカの地球連邦軍カリフォルニアベースに奇襲降下したアデルソン軍は、激戦の末基地を占領。
 そこでさらに連邦のMSや航空機などを現地徴用し、次の目標──ネバダ基地攻略におもむくことになった。
 今、ネバダ砂漠を歩いている雑多なMSの集団は、このような経緯をたどり、生まれたのである。

「……ねぇ、隊長。ネバダ基地までまだなんすか? ドダイとか使えばよかったんじゃないですかぁ?」
 揺れるザクIIのコックピットの中で、ジオンの軍服のすそをあけ広げた、まだ若い顔の兵士が大きなあくびをしながら言った。
 すぐさま、コックピット内のスピーカーから怒声が飛ぶ。
「こらニック! 今は無線封鎖中だ! 敵に位置を知られるぞ!」
 その声と共に、先頭を歩いていたMSゲルググの頭部が、こちらを振り向くのがモニターから見えた。
 モノアイでにらみつけられる。
 ニックと呼ばれた兵士は、コックピット内で首をすくめた。
 ゲルググは顔を前に向けると、再び歩き出した。
 そのゲルググの腹部に収められたコックピット内、ジオンの野戦軍帽をかぶった、四十代ぐらいの部隊長、アマルは渋い顔をしつつ、周囲を警戒する。
 まったく、最近の若い者って奴は。
 しかし。
 敵に知られないための無線封鎖の効果は、疑問だな。
 そうつぶやき、アマルは渋い顔をさらに渋くする。
 先ほどネバダ基地の方から、黄色く小さな「空飛ぶ円盤」が飛んできて、周辺を偵察していたからだ。
 あれで多分、我々は見つかっている。
 我々の目的は、ネバダ基地の威力偵察。
 必要なら敵と交戦し、その戦力を見極めろというわけだ。
 いうなれば、全滅を覚悟しての任務というわけだ。
 ドダイといったサブフライトシステムを使用しなかったのは、単に数が足りず、貴重品だという理由。それだけである。
 ここに来るまでは、カリフォルニアベースにあった連邦のミデア輸送機などでMSを安全地域ぎりぎりまで空輸し、そこからは降下してMSの足で進軍している。
 MSは核融合炉駆動のため、足で動けば燃料を消費する心配もない。
 駆動系に負担を与えるのと引き換えではあるが、そちらの方が燃料の消費を抑えられるし、見つかりにくいというアデルソンの、そしてアマルの判断だったからだ。
「さて、どのあたりでネバダの敵が現れるかだが……」
 ゲルググの狭いコックピットの中で、アマルはモニターの中の風景を見回した。
 その時だった。
 地平線の彼方に小さな点が見え、それからまもなく、一本の青い光条が空を貫いたのは。

 ネオジオンMS威力偵察部隊の、はるか前方。
 一機の白いMSが、ネバダの荒野を疾走していた。
 その姿かたちは奇妙であった。
 普通のMSと比べて、胴体は極端に小さく、頭は大きく、腕は細く、足は太ももが極端に大きく、ひざから下はほとんど一本の棒であった。
 それはまるで、子供というか、少女のようであった。
 右腕に大きな銃とも剣とも盾ともつかぬ武器を装着し、地上からわずか数メートルの空を土煙を上げながら、飛んでいる。
 そのMSの顔は、二つの鋭い目に赤い顎、V字型の黄色いアンテナ。
 それはまさしく、連邦の勝利の象徴。
 ガンダムであった。
 その小さな胴体のコックピットの中。
 白いノーマルスーツを着込んだパイロットが、360度モニターに浮かんだリニアシートに座り、両手でそれぞれのスティックを握り、ガンダムを操っている。
 パイロットの顔はヘルメットのバイザーに隠れてうかがえない。
 単調ながらもめまぐるしく変化する景色の中、モニターの中に、ウィンドウが現れる。
 そのウィンドウに映し出された拡大映像には、地上を歩く巨人たちの姿が。
 それに目をやると、パイロットは自分に言い聞かせるように、感情をまったく込めない口調でつぶやいた。
「……敵、MS部隊確認。ウーンドウォート、ストライカー01。敵を駆逐する」
 そして、スティックと手元のパネルのボタンをいくつか操作し、ウィンドウの中のMSのうち、一機にポインタを合わせる。
 そして、右親指で、スティック先端のもっとも大きなボタンを、まるでシャープペンシルの後部を優しく押すように、ゆっくりと押した。
 その瞬間、白いMSの右腕が動き、前方に持ち上げられた武器の先端が割れ、その先から、青い光条が地平線の向こう側へと放たれた。

 ネオジオン北アメリカ方面軍威力偵察MS部隊の陣形は、三機で構成されたMS小隊が四個小隊で成り立っており、逆V字型を描いた小隊が、それぞれひし形に置かれるという陣形だった。
 ひし形の頂点の小隊は部隊長のアマルとニックの小隊であり、アマルのゲルググが逆V字の頂点、ニックのザクJ型がその左下、別の小隊員が、ザクF2型に乗り進軍していた。
 その左下と右下は連邦の機材で構成された小隊であり、連邦のザクであるハイザックが小隊長機として、またジムIIが部隊員機として、ジオンの象徴である緑に塗り替えられて運用されていた。
 ひし形の最も下の部分は火力支援小隊であり、ミサイルを大量に積んだズサが小隊長機として、大型の手持ち式ロケット砲であるラケテン・バズをかついだドム・トローペン二機が、その後方を占めていた。
 そして青い光の束は、アマルの右後方、ニックの隣のザクF2型を貫いた。
「アマーティ!」
 アマルがゲルググのカメラでアマーティのザクを見たときには、ザクの胴体には大きな穴が開いており、その穴に吸い込まれるような格好で、一つ目の巨人は後方に吹き飛ばされつつ、
上半身がばらばらになっていく。
 アマルと、アマーティの隣にいたニックには、一連の動きがスローモーションのように見えた。
 そして、再び前にカメラを向ける。
 はるか前方、地平線の向こう側から、土煙を上げながらこちらに接近してくる白い何かが見えた。
 データベースにはない。新型らしい。
「新型かっ! ラシュリーっっ!」
 アマルは、火力支援小隊のズサのパイロットに叫ぶ。
 ズサのパイロットは既に気がついていたらしく、その黄色い胴体を立ち止まらせると足を折り曲げ、両肩のミサイルポッドの仰角をつける。
 その間に、二機のドム・トローペンは足のホバーを起動させ、高機動モードに入ろうとする。
 足の下から圧縮空気があふれ、ドムの大柄な機体をゆっくりと浮かび上がらせる。
「各自散開しつつ射撃開始! 無線封鎖解除っ!!」
 アマルは指示を矢継ぎ早に与えながら、自らも動きつつ射撃を開始する。
 その間にも白い物体は、土煙を後方に猛烈に巻き上げながら急速に接近し、そのフォルムをはっきりさせていく。
 白い機体、二つの目。V字型の黄色いアンテナ。
 その姿をモニターで確認した兵士たちは、一様に恐怖の声色で叫んだ。
「……が、ガンダムだっ!」
 連邦の白い悪魔。
 その名は、ジオンの将兵の間に恐怖として語り継がれた名前だ。
「落ち着け! あれはガンダムでもなんでもないっ! ただの新型MSだっ!」
 軽いパニックを起こした部下たちを、アマルは叱咤する。
 その間にもズサから放たれたミサイル群は白煙を上げながら飛んでいくが、ガンダムのあまりにも急速な接近と、パイロットがデータを慌てて入力したためか、距離を詰めていくガンダムのはるか上を弧を描きながら飛んでいく。
「ちっ!」
 そう歯噛みながらアマルはビームをガンダムに叩き込むが、速すぎてこれもあさっての方向に飛んでいく。
 少女のような形をしたガンダムは、右腕の武器からビームを放ちながら、アマルから見て右側に動き、部隊の後方に回り込む動きを見せる。
「右翼隊! 迎撃っ!」
 アマルの怒声に、右側のハイザックとジムII二機は慌ててガンダムが動く方に機体を向け、マシンガンやビームライフルをかまえ、射撃を開始する。
 それにすばやく反応したガンダムは、右腕と一体化した武器を右翼隊の方に向ける。
 その先端が割れ、青い光が数発放たれた。
 正確な射撃は、まず先頭のハイザックを貫き、それからリズムよく、後方のザクカラーのジムIIを貫いた。
「うぁ!」
「おかぁ……」
「うわーっ!」
 無線機がら流れる悲鳴。
 それに続けて、三機のMSが自らのボディからあふれ出た爆発にのまれ、崩れ落ちる。
「一度に三機っ! よくもっ!」
 失われた部下に思いを巡らせる暇もなく、アマルはゲルググを旋回させる。
 カメラを向けた後方では、火力支援小隊が散開し、ズサが腕のグレネードを、ドムがラケテン・バズからロケット弾を発射し、ガンダムを迎撃する。
 ガンダムは、放たれたロケット弾やグレネードを、速度を遅くしたり動きを変えて回避しながら距離を取り、右腕を機械的に動かして、右側のドムに狙いを定め、ビームを放つ。
 命中。
 ドムの強固な装甲をビームが貫き、茶色のドム・トローペンは爆発した。
「よくもジャンを……!」
 アマルの無線機に怒りの声色を含んだ声が飛び込む。
 火力支援小隊の隊長、ラシュリーだ。
 その声と同時に、ズサの各所に設けられたスラスターから、光が放たれる。
 ズサがふわっと浮き上がり、ロケット噴射の炎を上げながら、回避した事で速度の鈍ったガンダムに突進していく。
「ラシュリー!」
 ラシュリーは一年戦争時からの戦友だ。
 彼がなにをしようとするのか、理解できた。
 ガンダムの動きを止めるために、自らの機体をぶつける気なのだ。
「ラシュリーがガンダムの気を引いている間に、奴を包囲しろ!」
 アマルはそう指示しながら、愛機をガンダムを取り囲む位置へと突進させる。
 ズサはその間にも、ガンダムに迫る。
 間合いが狭まった、その瞬間。
 白く小さなガンダムは、その体に不釣合いな右腕の武器を、振り上げる。
 その三分の一ほどを占める板状のパーツの両側が、赤く染まる。
 そして、その「刃」をズサが飛び込んできた場所に、振り下ろした。
 黄色いズサの四角張った機体に、刃がたやすくめり込む。
 ズサの動きが、止まる。
 そして刃はズサのボディにどんどんめり込み、そして。
 ズサの巨体は、斜めに切り落とされた。
 一瞬、すべての動きが止まる。
 次に動き出したのは、裂かれた上半身。
 下半身はそのままに、大地に崩れ落ちる。
 そして、力を失った下半身も、遅れて崩れ落ちた。
「あれはヒートソードでもあったのか……!」
 アマルは驚きの声を上げる。
 複合兵装。
 ビームライフルの機能に加え、ヒートソードの機能まで兼ね備えた高性能銃器。
「連邦はなんて物をっ!」
 アマルは理不尽な怒りをあらわにするが、
「だがっ、この距離ならっ!」
 モニター内の照準を白い悪魔に合わせ、スティックのボタンを押す。
 ガンダムは右側をこちらに向けて、次の動きを見せようとしている。
「遅いっ!」
 ゲルググは突進を止めるとビームライフルを両手で構え、指で引き金を引く。
 銃口に、赤い光が集まる。
 そしてビームが、一直線にガンダムに向けて飛んだ。
 その寸前、ガンダムは奇妙な動きを見せた。
 右腕の複合兵装を、盾のようにこちらに向ける。
 特に、後部の凹んだところをビームライフルの射線に合わせる。
 その動きを終えたところで、ビームが放たれた。
 必中の魔弾。
 赤い光がガンダムを貫くのを、アマルは期待した。
 だが。
 ビームはガンダムの盾に届く前に、見えない風船のような何かにぶつかり、何条にも分かれてはじかれる。
 盾を振り下ろしたガンダムの両目が、白く輝く。
 それを見て、アマルは即座に悟った。
「Iフィールドっ……! なんて奴だっ!」
 強力なビーム兵器に対抗するための盾。それがミノフスキー工学を応用した力場、Iフィールドを使用したIフィールドバリアだ。
 ジオンでは、ビグザムやノイエジールといった超大型モビルアーマーにしか装備されなかった装備だ。
 それを、この小さな機体が持っているとは、アマルには想像もしえなかった。
 ゲルググを急速に後退させ、ガンダムと距離を取りつつ、アマルは歯ぎしりをする。
「ええい、連邦の新型モビルスーツは……、化け物かっ!」
 距離を取りながらも、ガンダムの動きをふさぐ位置に機体を置く。
 他の機体も恐れおののくようにアマルに習う。
「囲めば、恐るるに足らん! 距離を取って狙い撃て!」
 自ら虚勢を隠すように、アマルは声を張り上げて、生き残っている部下に指示を送る。
 残りのドムトローペン、ハイザック、ジムII、ニックのザクIIJ型、そしてアマルのゲルググ、それぞれがガンダムを取り囲み、武器を構え、狙い撃つ。
 その射線をガンダムはホバー機動でひらり、ひらりとかわし、けん制のビームを放つが、それが精一杯に見えた。
 じっくり追い込めば、倒せる。
 アマルが思った、その時だった。
 
「はは、さすがにあの数じゃ、ムラサメも苦戦するかぁ」
 ガンダムとジオン軍の戦闘から大分離れた、ガンダムがやってきた方角にある小高い丘というよりも小山に近い場所。
 その頂上に、一機の白い、連邦のオードソックスなジムやガンダム型のMSが片ひざを下ろしてライフルを構えていた。
 ただのライフルではない。
 物干し竿のように、銃身が異様に長いライフルである。
 短銃身のビームライフルの前方と後方に部品を追加して、スナイパーライフル化したライフルだ。
「さて、こちらも仕事をしますかぁ」
 モビルスーツの三六〇度コックピットの中、ノーマルスーツでヘルメットを外した長髪のパイロットがとぼけて、微笑んだ。
 切れ長の目と整った顔は、女性に好かれそうな優男のそれだ。
 手元のパネルをいくつか操作する。
 MSの頭部、目の部分を覆っている「マスク」が上下に割れ、そこからモノアイが青く輝き、動く。
 わずか左右に動いた後、動きが止まり、わずかにモーター音が唸る。
 既に開いた遠距離狙撃用のウィンドウの中、スティックを慎重に動かし、一番右側のMSに照準を合わせる。
 そして、呼吸を整えて……。
「当たれっ!」
 さきほどとは違う鋭い目つき、鋭い声と共に、スティックのボタンを力強く押した。
 
 ガンダムを取り囲んだMSで一番右側にいたのは、火力支援小隊の生き残りのドムだった。
 そのドムが、突如として青いビームに貫かれる。
 パイロットが悲鳴を上げる間もなく、ドムの鋼鉄の体は前のめりに倒れる。
「!?」
 その突然の出来事に、ジオンMSパイロットの誰もが後方にMSのカメラを向ける。
「狙撃! スナイパーかっ!?」
 アマルは叫びながら、ゲルググを回避行動に移らせる。
「どっ、どこからっ!?」
 鹵獲したジムIIのうち、一機のパイロットが狼狽した声を上げる。
 青い光が、再び飛んできた。
 地平線近く、小山の辺りから。
 その光に、慌てふためいた別のジムIIが貫かれる。
 ぞれから連続した、狙撃。
 MS部隊が回避行動をとり始めたことで、命中精度はそれきり当たる事は無かったが、それでも彼らを混乱させ、包囲の輪を解くには十分だった。
「ショーンか」
 ガンダムのコックピットで、ノーマルスーツ姿のパイロットは冷静に一言だけつぶやく。
 それから混乱を突き、ライフルで再び射撃する。
 まずハイザックの胸部が砕け散り、次の射撃で最後のジムIIの胸から上が爆発で吹き飛ばされた。
 残るは、アマルのゲルググと、ニックのザクIIのみ。
「たっ、隊長っ……!」
 ニックが震える声で呼びかける。
 その声に、アマルは決断した。
「逃げろ! ニック! お前だけは生き残れ!」
 そう叫ぶと、アマルはゲルググをガンダムに突進させる。
「やらせはせんぞぉ! やらせはせんぞぉ!」
 ライフルを乱射しながら、片手でビームなぎなたを背中から抜く。
 ビームの乱射にひるむことなく、ガンダムは冷静にビームを撃つ。
 ゲルググのライフルを持っていた右腕が、打ち砕かれる。
「まだまだぁ!」
 だが、アマルはそれでよかった。
 ガンダムの懐に飛び込めれば。
「ガンダム、お前の弱点はっ!」
 そう叫びながら、なぎなたを振り下ろす。
 ガンダムはなぎなたを冷静に複合兵装の銃身で受け止めるが、ビームには勝てず、刀身でもある銃身は両断される。
 時が、止まる。
「その一体化された武装が破壊されれば、脆いことだっ!」
 そう叫びながら、アマルは、勝機を見出した。
 だが。
 突然、ガンダムの右腕で保持していた複合兵装の中ほどが動き出した。
 銃身を保持してたその部分が動き出すと、両断された銃身は簡単に大地に落ちる。
 保持していた棒、というよりは、爪が展開していく。
 銃であった複合兵装は、あっという間に、巨大な四本の爪を持つクローになった。
「なっ、なにぃっ!?」
 アマルが叫ぶまもなく、ガンダムはクローでゲルググの上半身をわしづかみにする。
 そして、クロー中央部にあったビーム発信器でビームを発生させると、一気に貫いた。
 短い悲鳴。
 すぐにそれは途絶えた。
「あ、あ、あ」
 ニックは、モニターと無線機越しのその光景に、恐怖で打ち震えていた。
 ゲルググの残骸を掴んで立ち尽くすガンダムの姿が揺れて、かすんで見えた。
 目から、涙が流れていた。
 指が、体が、震えていた。
 股間が生暖かかった。
 だが、そんなことは気にしていられなかった。
 今は、今は、今は、今は。
「わ、わぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
 そう叫ぶと一目散にガンダムのそばから逃げ出す。
 敵前逃亡と呼ばれようと、どうでも良かった。
 ただ、
 生き残れ。
 そうアマル隊長が言ったから、従うまでなのだ。
 自分に言い聞かせて、ニックは逃走する。
 だが。
 強い揺れと共に、ザクの動きが止まった。
 いや、止まらされたと、言うべきか。
「な、なぁ!?」
 そう思う間もなく。
 背中から熱いも何かを感じた刹那、ニックの意識ははじけとんだ。

 生き残りのザクIIが逃走を始めた瞬間、ガンダムのパイロット、ムラサメ・フィフスはそれを見逃さなかった。
 掴んでいたクローをゲルググの残骸から手放すと、即座に向きを変え、クローを逃走するザクIIの背中に向ける。
 そして、クローの最後部から、ジェットの炎が放たれると、複合兵装と右腕を繋いでいたラッチがはずれ、クローは勢いよくザクの背中に向かって飛んでいく。
 クローと本体の背中は、線でつながれており、ウィンチが回転して線を引き出していく。
 クローは大きく開いたまま、ザクの背中に追いつく。
 そして、掴む。
 がしっ、と、鈍い音。
 同時にウィンチが逆回転し、逃げるザクを引き戻す。
 走る姿勢から、後ろにのけぞるザク。
 必死に進もうとするが、進まない。
 線がぴんと、真っ直ぐになる。
 ムラサメは、ためらわずボタンを押した。
 太いビームサーベルが、ザクの体を貫いた。
 光の剣に貫かれたザクは、力を失い、後ろ向きに大地に倒れこむ。
 その途中で、クローを離し、ウィンチで巻き戻す。
 クローを回収すると、ムラサメは、ヘルメットのバイザー越しに残骸と化したザクを見下ろし、
「ガンダム・ウーンドウォート《将軍》。ミッションコンプリート」
 と、一言、つぶやいた。

 同時刻。
 小山で、戦況を眺めていた地球連邦軍緊急展開部隊《ストライカーズ》ショーン・ヘイズ大尉は戦いの終わりを見届けると、
「ガンダム・ヘイズル・スナイパー、作戦終了だ」
 と短く通信を入れ、すぐに切る。
 そして機体を立ち上がらせ、ムラサメの乗るRX-124ガンダムTR-6「ウーンドウォート」がいる方に、頭部のカメラを向ける。
 そして、最大望遠で拡大する。
 ウィンドウに映し出された、白く小さなモビルスーツ。
 それを眺めながら、ショーンは、
「ウーンドウォート。か……。
 あれはイギリスの物語に登場する、うさぎの将軍から名前がつけられているんだよな……。
 ネバダの白い将軍、ってわけかぁ……」
 一人納得するとショーンは、ハハ、と乾いた笑い声を上げ、三六〇度モニターに映し出されたネバダの赤い砂漠を見、そして青い空を見上げた。

                                       <終>

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