石田衣良、著、『少年計数機』(I.W.G.P.II)「どうせ貧乏人は互いに盗みあい、助けあう」

小年計数機』は、石田衣良さんの連作小説「池袋ウエストゲートパークI.W.G.P.)」本編2冊めの作品集。
 語り手キャラのマコト(真島誠)は、東京池袋のウエストゲートパーク(西口公園)近くにある、実家、「間口一間」の果物屋(『死に至る玩具』)の店員。彼は、ストリートのトラブルをボランティア的に解決していくトラブル・シューターでもあった。

 2冊めの作品集では、採録作を通じて、マコトの、トラブル・シューターとしてのスタイルが固まっていく頃の様子が、楽しめる。

Cover image
(文春文庫版、書影)

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 作品集『少年計数機』には、表題作を含めて4作が収められてる。
 採録順で言うと『妖精の庭』、表題作『少年計数機』、『銀十字』、『水の中の目』の4作だ。

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妖精の庭』は、マコトの小学生時代の悪ガキ仲間が、トラブル・シューティングの依頼を持ち込んでくる物語。
 今では素人娘の“覗き部屋サイト”を運営してる怪しげな会社でスカウトをしてるショー(祥)は、サイトで任期No.1のアスミに、リアルでつきまとってるストーカーへの対処を依頼する。

 主に、9月のある金曜日から翌週の火曜深夜までの出来事が語られる。エピローグ的なパートでは、さらに数日後のことまでが回想されてる。
 おそらく『サンシャイン通り内戦』(『池袋ウエストゲートパーク』所収)で語られた7月の翌々月のできごとなのでしょう。

 この頃マコトは「ストリートファッション誌のコラム書きで、池袋の街の灰色ゾーンにでたりはいったりを繰り返していた」。「もちこまれるやっかい事」が増えたと回想されてるし。グレー・ゾーンに近いあたりでは、トラブル・シューターとして、ある程度知られるようになったのだろうと思える。
(回想してるマコトの「語り手の今」がいつ頃かは、定かで無いけど。エピローグ的な「数日後」からさほど遠くないかもしれない)

 2番目に収められた『少年計数機』は、表題作に選ばれるにふさわしく、印象深い作品。
 文春文庫版巻末の「解説」で、北上次郎さんが「いちばん印象深い」シーンを、この物語から引用されてるけど。アタシ(紹介者)も、鮮やかな印象の中篇だと思います。

 マコトは、友達づきあいをしてた少年ヒロキが巻き込まれるトラブルに、対処することになる。ヒロキのトラブルを知ったマコトは、依頼がなくても動いただろうと思える。
 行きがかり的にトラブル・シューティングの依頼主になるヒロキの母は、作中、池袋で勢力が強いと設定された暴力団のトップの妻(内縁かもしれない)だけど、マコトのことは知らなかったみたい。グレー・ゾーンのトラブル・シューターとしてのマコトの知名度も、まだ上昇途上って頃の物語、と思える。

 物語は、11月から翌年の1月に渡る回想で。この11月は『サンシャイン通り内戦』の翌年だろうとうかがわせる手がかりが、物語内にある。
(語り手の今は、定かで無いけど。エピローグ的な「新年も十日をすぎた頃」からさほど遠い時期では無いような印象がある)

 3番目に収められてる『銀十字』でマコトは、北池袋の老人ホームで暮らす、老人2人組みからの依頼を受ける。
 依頼の筋は、ホームのマンドナである老女も襲った連続ひったくり犯を、探し出すこと。

 年金生活者である依頼人2人は、充分な謝礼をマコトに払えないことを恥じるけど、マコトは“お人好しかもしれないが、それで結構。どうせ貧乏人は互いに盗みあい、助けあうものだ”と、無料ボランティアで依頼を受ける。

 物語で語られるのは、主に「サクラはとうに散っているがまだ肌寒い四月のなかば」の1ヵ月ほど前(三月半ば)からの出来事で、メインは「四月半ば」からの「春のおかしな一週間」に起きた事柄。『エキサイタブルボーイ』(『池袋ウエストゲートパーク』所収)で主に語られた出来事の翌年の春の物語だ、と特定する手がかりが物語内にある。
(語り手の今は、定かで無いけど。エピローグ的な「その春の終わり」よりも、さらに先の時制であるような印象がある)

 作品集の最後に収められてる『水の中の目』は、他の3作が雑誌掲載作の採録であるのと違い、おそらく単行本刊行時に書き下ろされた作品。

 マコトは、ストリート・ギャングGボーイズのタカシ(安藤崇)ともども、作中の池袋で勢力を競い合う3大暴力団から連名の依頼を受けることになる。とても断れる雰囲気では無い依頼だったけど、マコトは「金はいらない。だから、自由に動かして欲しい」とつっぱる。暴力団のヒモ付きは嫌だ、って含みだろう。

 この物語は、採録作の内で1番長い。見た目より凝った物語になってて、読み応えがあります。

「七月二十一日、明日から夏休みにはいるという金曜日の夕方」から1週間に満たない期間に起きた出来事が、高密度で語られ。エピローグ相当パートは、翌8月の第2週に及んでいる。
(語り手の今は、定かで無いけど。エピローグ的な8月第2週の火曜日よりも、さらに先の時制であるような印象がある)

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 作品集『少年計数機』を通して読むと、まず、ストリートのトラブル・シューターとしてのマコトが、いよいよ池袋界隈で有名になる時期が、4編の中篇で点描されている形。

 特に、『少年計数機』と『水の中の目』の活躍で、ダーク・サイドの暴力団トップにもマコトは名を売った形になってるだろう。もちろん、マコトは、名を売ろうと思って事件を解決したわけじゃぁないけど。

  マコトが、ストリートのトラブル・シューターをはじめるきっかけになった『池袋ウエストゲートパーク』の「ストラングラー事件(絞殺魔事件)」は、しばらく後に池袋のストリートでは、Gボーイズの自警団が解決したって話になってた(『エキサイタブルボーイ』)。
 後にマコトは、自分のトラブル・シューティングのことを“おかしなもので最初に金を取らずに始めてしまうと、途中から有料にするのは困難だった。クライアントのほうでなく、おれのなかの感覚的な問題だ”と語る(『西口ミッドサマー狂乱』)。

 マコトのトラブル・シューティングは、基本的にはボランティアで、余裕がある相手からは経費分は貰う。報酬と言えるほどの報酬を受け取ることは、むしろ珍しい。

 マコトのこんなスタイルが、物語のうえで明確化するのは、中篇『銀十字』のあたりからのようだ。(詳しく語られて無いような細かな依頼は、大分前からロハで解決してたみたいだけどね)

 それから、セミプロ・ライターとしてのマコトの成長。
 目立たないかもしれないけど、こちらも、採録4作を通じて、興味深いエピソードが点描風に編み込まれてる。

 例えば、『銀十字』で事件解決の手がかりをマコトに与えるデザイナーは、マコトの文章センスを高く評価してる。そう言えば『サンシャイン通り内戦』で、マコトにストリート・ファッション誌を紹介した加奈(松井加奈)も「マコトくんは今のままじゃもったいないと思う」って言ってた。

 そんなマコトだけど、『水の中の目』で語られた出来事の頃(7月~8月)「初めて長いものを書こうとして」挫折する。
 実は、『水の中の目』の物語は、「書くことさえできない」事件(複数)の代わりにマコトに語れる事柄が紡がれたものになってる

 1人称の回想形式で語られる、I.W.G.P.本編の連作は、「語り手の今」と「語られた今」の時差を意識して読むと面白いんだけど。特に『水の中の目』の語りは、語り手と語られるマコトの視点の落差が興味深く読める。

 最初の作品集(『池袋ウエストゲートパーク』)の末尾では、“いつか、どこかでまた会おう。それまでにおもしろいネタをたくさん仕込んでおくよ。見つからなかったら、でっちあげればいい。/俺の嘘がうまいのは、ここまで読んだあんたならよくわかってるだろ? ”と語ってたマコトだけど。(『サンシャイン通り内戦』)

 ライティングについての、こうした恐れ知らずな自信は、おそらく『水の中の月』で語られた出来事の経験で、打ち砕かれたんじゃぁないかな。
 もちろん、ライターとしての成長、って含みでアタシ(紹介者)は「恐れ知らずな自信は打ち砕かれた」って言ってるんだけど。その辺のお話は、さらに長いスパンで連作を読んでくときの話題になってく。

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 さて、『少年計数機』に採録された作品は、雑誌掲載作が「オール讀物」の1999年9月号、12月号と、2000年4月号とに掲載されてて。単行本は2000年6月に刊行された。

 TVドラマ版の『I.W.G.P. 池袋ウエストゲートパーク』(脚本、宮藤官九郎さん)は、2000年初放映されてて。『妖精の庭』と『少年計数機』を原作にしたエピソードも、ドラマの一部で描かれていた。

 もちろん小説とTVドラマは別作品なんだけど。作品集『少年計数機』のあたりから、いよいよ小説版のマコトは、ドラマ版のマコトは別キャラとしての成長を示してく。
 ドラマ版未見の人には、あまり関係無いお話だろうけど。これから、DVDでドラマ版を観ても面白いと思います。
 ドラマ版から入った人も、いよいよ小説版ならではの楽しみが増えてくところ。

『少年計数機』は、そんな作品集なのです。

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書誌情報:
石田 衣良,『少年計数機』(池袋ウエストゲートパーク),文芸春秋,Tokyo,2000.
ISBN 4-16-319280-8

石田 衣良,『少年計数機 池袋ウエストゲートパークII』(文春文庫),文芸春秋,Tokyo,2002.
ISBN 4-16-717406-5

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本読みの記録 から 木, 2008-05-15 23:02 受信

少年計数機―池袋ウエストゲートパーク〈2〉 (文春文庫)作者: 石田 衣良出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2002/05メディア: 文庫 第1巻と第3巻のエントリはこちら http://book-sk.blog.so-net.ne.jp...

Drupal.cre.jp から 金, 2008-01-25 05:35 受信

『水の中の目』は、石田衣良さんの「池袋ウエストゲートパーク」(I.W.G.P.)2冊目の作品集『少年計数器』巻末に収めらた中篇。
 採録4作の内で1番長く、文庫版で144頁、紙数では採録

Drupal.cre.jp から 金, 2008-01-25 05:34 受信

『銀十字』は、石田衣良さんの「池袋ウエストゲートパーク」(I.W.G.P.)連作の1編。
 池袋界隈で、ストリートのトラブル・シューターとして知られるマコト(真島誠)が、語り手キャラ

Drupal.cre.jp から 金, 2008-01-25 05:31 受信

『妖精の庭』は、石田衣良さんの「池袋ウエストゲートパーク」連作の1編。
 2冊目の作品集『少年計数器』に収められた4作の内、巻頭に収められてる。
 2000年に放映されたTVドラ

Drupal.cre.jp から 金, 2008-01-25 05:26 受信

『少年計数器』は、石田衣良さんの「池袋ウエストゲートパーク」連作の1編。
 2冊目の作品集『少年計数器』の表題作で、収録作4作の内、2番めに収められてる。
 2000年に放映され


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