『機動戦士ガンダム00』のSFネタ解説その14:宇宙戦闘その3(宇宙要塞)

 機動戦士ガンダム00を見て、出てくるギミックや台詞を元に妄想をたくましくしていくSFネタ解説シリーズの14回目。宇宙戦闘のその3ということで、今度は宇宙要塞である。

 いつものように、真面目七分にホラ三分、大嘘ついても小嘘はつくなの三割精神でやっていきたい。

 初代ガンダムにおける、宇宙要塞ソロモンア・バオア・クーの戦いは、クライマックスにふさわしい、実に派手なものであった。
 ガンダムで宇宙要塞といえば、やはりああいうシロモノである。

 いや、ガンダムに限らない。
 映画『スターウォーズ』における、デススター
 『銀河英雄伝説』(田中芳樹)における、イゼルローン要塞
 スペースオペラでは、しばしば魅力的な宇宙要塞が登場する。

 ところで、デススターや、イゼルローン要塞と、ソロモンやア・バオア・クーを並べてみて、何か違いに気がつかないだろうか?
 大きな違いはふたつある。

 ひとつは、形、構造だ。

 ソロモンやア・バオア・クーは、元々は小惑星である。資源採掘用として、はるばる地球の軌道まで運ばれ、穴を掘って金属資源などを掘り出したものを、最後には宇宙要塞として再利用しているわけだ。実にエコロジーな宇宙要塞である。
 対するイゼルローン要塞やデススターは、骨組みから外側の装甲(アニメ版のイゼルローン要塞は流体金属)にいたるまで、工場で生産したものを組み立てて作っている。完全に人工の宇宙要塞だ。
 これはどちらがいい、というものではなく。宇宙要塞に必要とされる防御力や、宇宙要塞を建造する側の生産力や経済力によって決められる。
 ガンダム世界では、核兵器やコロニーレーザーを使わないかぎり、要塞を攻撃する側の火力はさほど大きくない。一年戦争での戦艦の主砲ぐらいなら、小惑星の分厚い岩盤で十分に防げるのだ。
 宇宙要塞に必要なのは、無敵の装甲ではない。要塞を攻撃する側の火力を防ぐことができれば、それでいいのである。

 もうひとつは、攻撃力=主砲の有無である。

 デススターのスーパーレーザー。イゼルローンのトゥールのハンマー
 いずれも、作中における超兵器である。堅牢無比な宇宙要塞が、破壊力抜群の主砲を搭載しているわけであるから、無敵の盾+すべてを貫く矛というインチキなほどの強さになっているわけだ。

 ガンダムSEED DESTINYのメサイアのようにネオ・ジェネシスという強力な兵器を持つ例もあるから、別にガンダムの宇宙要塞に主砲を搭載してはいけないわけではない。
 では、ソロモンやア・バオア・クーに主砲がないのはナゼだろう?

 一番ありそうなのは、ジオンが貧乏なので主砲まで手が回らなかったというものだし、それはそれで立派な理由だ。が、貧乏でも宇宙要塞に主砲が必須であれば、少々苦労してでも主砲を搭載しただろう。
 それをしなかったのは、主砲があれば便利だが、必要ではなかったせいだ。

 なぜなら、ソロモンにも、ア・バオア・クーにも、宇宙艦隊がいて、モビルスーツがあるからである。これらが、主砲の代わり、というか主砲ではできない機能を果たしている。

 ここで少し視点を変える。
 宇宙要塞にとって、一番まずいのは何かというと、宇宙要塞を無視されることである。宇宙要塞はとにかく強い。攻めるに難く守るに易い。宇宙要塞を攻撃すると、大損害を被る。
 ……なんで、そんなに苦労してまで、宇宙要塞を攻めねばならんのか。攻める側がそう考えて、宇宙要塞に近寄らないとなると。これはもう、宇宙要塞にとっては存在意義に関わる。

 『銀河英雄伝説』におけるイゼルローン要塞は、イゼルローン回廊という宇宙空間でも特殊な宙域に配置されている。帝国と同盟の境目にあるイゼルローン回廊を通らない限り、敵の領土には攻め込めない。だから、相手の国を攻撃するためには、まず要塞を手に入れなくてはいけない。イゼルローン要塞を巡る一連の戦いは、イゼルローン要塞の置かれた地理的な要因ゆえに、要塞を無視できないため発生している。

 デススターはもっとアクティブな存在である。でかい要塞のくせにデススターには移動力もあり、反乱軍のいる星に押しかけてスーパーレーザーを撃ってぶっ壊すのだ。これまた、無視できるような存在ではない。

 が、ソロモンやア・バオア・クーは違う。
 これらの要塞は、「無視できる」のである。
 広い宇宙空間で、見晴らしも良いし、ちょっと要塞を迂回して遠回りしてもたいして時間がかかるわけでもない。
 損害覚悟でソロモンやア・バオア・クーを攻める必要はないのだ。

 だが、それでは困るのである。宇宙要塞を持つ側はソロモンや、ア・バオア・クーに攻めてきてもらい、そいつを迎撃して大損害を与えたいのだ。
 そして、敵に攻めてもらうからには。
 「要塞を攻略して受ける損害」というデメリットを上回るデメリットを、宇宙要塞の存在によって与えれば良い。
 それが、要塞の中にある宇宙艦隊とモビルスーツなのだ。
 宇宙要塞の中に整備工場を作り、補給用の燃料弾薬などを備蓄し、そこを基地とする宇宙艦隊とモビルスーツがあれば。
 これを無視して通り過ぎたら、後ろから攻撃されてしまう。それも、宇宙要塞は補給艦などの脆弱な部隊を狙って攻撃してくるだろう。

 それを防ぐには、宇宙要塞をぐるっと包囲して、そこから敵が出撃したら迎撃すればいいが――ミノフスキー粒子による妨害もあれば、開けた宇宙空間のどっちに向かって敵が出撃するかも分からない。
 さらに、宇宙要塞への包囲部隊の数が少ないようであれば、要塞内部の艦隊によって逆襲を受けて大損害を被るかもしれない。かといって、大軍を貼り付けていては、先に進むことができない。

 結局のところ、一時的には大損害を被っても、要塞を攻略した方が長い目で見れば苦労は少ない――敵にそう思ってもらう必要がある。

 ソロモンや、ア・バオア・クーという宇宙要塞には、だから主砲よりも、宇宙艦隊とモビルスーツこそが必要であったのだ。時間と資材に余裕があれば、要塞そのものに強力な兵器を搭載していく予定もあったろうが、優先順位としては、まず宇宙艦隊とモビルスーツの基地としての価値が高い。

 宇宙要塞に強力な兵器や頑丈な防御を持たせ、難攻不落にしたとしても。
 第二次世界大戦におけるフランスのマジノ線のように、敵が攻めてきてくれなければ、その難攻不落には意味がない。

 戦いは相手があってのもの。敵をして「これなら勝てる」と思わせることにこそ、こちらの勝機は隠されているのである。

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