GA文庫テーマ大賞向け企画その3:コインロッカーの巫女/定番の退魔ライトノベルっぽく……いや、二次元ドリームノベルズっぽくではなくっ
暖かくなった。陽気もいい。
「決めたぞ。さぼろう」
俺は、学校をさぼることにした。
駅のトイレで私服に着替えると、コインロッカーに制服やら鞄やらを放り込む。硬貨を入れて鍵を回す。
ぼこん。
ロッカーの中で、何かが動いた――落ちた?――感触が、鍵を通して伝わってきた。
「あん?」
鍵を引き抜かずに、左にひねって、コインロッカーの扉を開く。
目と目があった。
扉の向こうにいた“それ”が、こちらを見ていた。
卵が腐ったような臭いが、喉を刺激する煙と共に吹き出してきた。
「なっ? ななななな――――っ」
「いかん、いかんな」
後ろから声が聞こえた。
まだ10才になるかならずかの小さな女の子が、そこにいた。
「ちゃんと鍵を回したら、引き抜くのだ。そうせねば、扉は閉じぬぞ?」
ずるり、と。
コインロッカーの中から、うろこの生えた太い腕が伸びた。
「あ、いかん。もう現界しおった」
人間ではない。動物でもない。
この世の存在ではない何か。この世の理にはないナニか。
「ここはそなたの世界ではない。来ても迷子になって泣くだけだぞ?」
明らかにロッカーの扉よりもでかい角の生えた頭が、黒い羽をもつ胴体が、ロッカーの中から現れる。
「聞く耳持たぬか。そこに扉があれば、抜けたくなるというわけだな。せんもなし」
少女はそう言うと、ポケットに手を突っ込み、中から小さな銀色の鍵を取り出した。
「ならばその扉。わらわが閉じて進ぜよう」
(中略:鍵を使った少女とバケモノ(訪問者)との戦い。少年を守るために少女が苦戦する。少年が、開いたままのロッカーに駆け寄って、これを閉じて鍵をかけると、バケモノ(訪問者)の輪郭が薄れる。少女が決め技と決めセリフ(『封錠』の祝詞)で扉を封印)
「ふむ……一応は礼を言っておこう」
「あ、あれは一体なんなんだっ! お前はいったい、誰で、今のは――」
「ああ、舌をかんで咳き込むほど急く必要はないぞ。まずは深呼吸して、これを読め」
手渡されたのは、学校などでよく配られる小冊子に似た本だった。
『異界について(入門編)』
(中略:なし崩し的に、少女の弟子として使い走りの仕事をさせられる主人公。どうやら、戦いの中でロッカーに鍵をかけて引き抜いたせいで、少年の中に異界とのコネクションができたらしい。近くで扉がつながりそうになると、ロッカーの鍵が熱くなるのだ)
「学校にいる時間――昼間に、扉が開くことはないんじゃなかったのかっ!」
(携帯電話)『何事にも例外はある。とにかく早く来い』
「……同い年、だったんだな」
「ふんっ、その反応にも、すでに馴れておる」
「いやでも、中等部に同じ名前がいたから、てっきり……」
「妹だ」
「なんだ、お姉さんだけじゃなくて、妹さんもいたのか」(神社で、発育の良い少女に会っている)
「……あれが妹だ」
「……」
「……」
「……まだ、チャンスはあるってことじゃないか! 遺伝的にっ!」
「そんな慰めなどいらんわああっ!」
(中略:雑魚を倒したところで、大物の訪問者が登場。ヒロインの鍵が折られ、戦闘で苦戦することに。主人公の機転で扉を見つけ出して“鍵をかける”ことに成功)
「してやられたか。だが、お前に戦う力はなく、巫女は鍵を持たぬ。別の扉が開くまでこの世界で眠りにつかせてもらうとしよう。と、その前に、栄養(精気)を補充しておこうか」
「く、くそっ――」
「なに、痛くはしないさ。私は男の子には優しいのだ」
「わらわとは、逆だな」
「ぬ?」
「わらわは、男にはちょっと厳しいぞ? だから、痛いと思うが諦めろよ」
「ふ、鍵を持たぬ巫女風情が何を偉そうに――にいっ?!」
じゃらり。
巫女服の中から取りだしたのは、金属のわっかにずらりとついた鍵の束。
「そ、それは一体……いや、持ってるなら、なんで今まで……」
「代々の巫女が閉じた門の鍵だ。門外不出で使用厳禁なのだ。これを使ってしまうと、ご先祖様の閉じた封印が弱くなるのでな」
「そうだろう、そうだろう」
「まったくだ、ご先祖様に顔向けできないことはしないほうがいいぞ。人として。巫女として」
「うむ。これを使うと、ものすごく怒られる。婆様には折檻をくらうし、役所には嫌味を言われる。今年の夏休みは、たぶん修行から帰してもらえまい。それを考えると、内心忸怩たるものがあるのだが」
そう口にしながらも、さわやかな笑顔を見せる巫女。
「でも、わらわがここで死ぬよりは、マシであるよな?」
「ちょっと待てーっ!」
俺と訪問者の悲鳴に、うれしそうな『封錠』の祝詞が重なった。
(中略:翌日から、折檻と修行の一環としての奉仕活動――具体的には、町のあちこちにある封印の確認が始まる。巫女と一緒に、主人公も走り回ることに。ふたりのちょっとイイ場面で、締め)
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