奥瀬サキ(原作)、目黒三吉(漫画)『低俗霊DAYDREAM』9,遅かった出会い

 原作、奥瀬サキさん、漫画、目黒三吉さんの「低俗霊DAYDREAM」は、「口寄せ屋」崔樹深小姫が、心霊の関わる事件へ「対策」をしていく物語。舞台は、現代の日本だ。
 9巻で、深小姫は、集団焼身自殺計画を阻止すべく動く。

「ハルが私を導いてくれた」「タイムリミットまでに必ず/答えを持って戻るわ」

「大直の鑽火」決行まで 13時間13分。

 計画決行地を掴むためハケ岳に入った深小姫は、首謀者YUO〔ユオ〕の魂を深く幻視することになる。

Cover image

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 不必要なネタバレは避けながら、9巻の読みどころや大筋を紹介しようと思うけど。
 8巻までの内容は、必要に応じて触れますので、よろしく。
用語:低俗霊DAYDREAMから、色々レヴュー記事もたぐれます。よければ、どうぞ)

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『低俗霊DAYDREAM』の9巻では、本編186頁のすべてが「ウェルテル」の物語に充てられてる。

「ウェルテル」は、7巻末尾からはじまり、10巻まで続く、長い物語。
 9巻採録分では、物語の焦点と言える部分が描かれる。

 アタシ(紹介者)が「物語の焦点」と言っているのは、深小姫とYUOとの対立のことだ。

 深小姫は霊感と呼ばれる特殊な感覚を使って、心霊が関わったとされる事件に「対策」を施す「口寄せ屋」。
 YUOは、自殺掲示板“Rock'n RollSucide BBS”の主催者だった。

 YUOこと、井荻ユオを「自殺関与の疑い」で通常逮捕した、用賀署捜査班の見解は、次のようだ。
「掲示板を訪れた自殺志願者に対して/各自殺志願者の状況を鑑みた自殺を実行するに相応の特定の場所のみを示唆し、/婉曲に自殺を教唆する」「手口は極めて巧妙」。

 過去に深小姫が「対策」を施してきた心霊スポットには、YUOが「自殺を実行するに相応」とみなしただろう場所が、少なからずあったのだった。

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「ウェルテル」のストーリーは、YUO逮捕後も、なお進めらていると思しい集団焼身自殺阻止を、主軸のようにして展開する。
“Rock'n RollSucide BBS”とYUOを追ってきた峨田警視は、「大直の鑽火」阻止のため予定決行地を知るべく深小姫に協力を要請し、深小姫も了承した。

 深小姫自身「もう誰一人死なせない!!」と、YUOの計画阻止の決意を口にしたけど。用賀署で接見したYUOは、短いやりとりをした後、『古事記』の一節をぶつぶつと呟き、自分に閉じこもったようになる。

 深小姫は、決行予定地を問いただせないまま、幻視の内でYUOと対峙する。
 この幻視のことを、死んだハルは、深小姫に“コレハユメ……”“ゴサイノユオノ”“ミテイルユメ----”と、告げた。ハルは、峨田警視のパートナーで、やはり優れた霊感を持っていた。

「例えば、」と、ユメ=幻視の内で、YUOは深小姫に問う。
“世界を彷徨うチンゲの魂に安らぎは訪れただろうか?”“彼は世界観を共有する誰かと出会えただろうか?”

「チンゲ」は、1巻採録の「首吊りマンション」で、深小姫が「対策」を施した少年の霊に、おそらく、生前付けられてたあだ名だ。この「首吊りマンション」もYUOが「自殺を実行するに相応」と示唆していたスポットだった。
 深小姫の「対策」終了後、掲示板では“もうあそこに何もありません”と宣言されたけれど。

 YUOの問いは、深小姫自身が自分の「対策」に抱えていた惑いや、自己不審を突いただろう、と思える。
 けれど、「--そうね」と、YUOに対峙した深小姫は応じた。
「あなたの言うとおり私は真実に蓋をし、」「咎められるべき罪を看過しているのかもしれない」「詭弁を弄して死者の魂を冒涜しているのかもしれない」

「……でも例えば」と、深小姫は言葉をついだ。
 YUOが死んだ父の罪を庇ったことは、「私のしている事と/本質的な違いがあるかしら?」と反問すると、YUOは5歳の少年の姿になって、幻視から去っていった。

 11年前に起きた火事で、YUOは孤児になっていた。この火事は、幼いユオの証言で、過失事故として処理されていたけれど。実は、YUOの父親が無理心中を謀ったのだろう、と言うのが、用賀署捜査班の推測だった。
 幻視に現れたハルの言葉を導きにして、深小姫は、ハケ岳へ向かう、11年前の火事の現場で「口寄せ」をおこなうために。

 この辺りまでが、7巻8巻での、「ウェルテル」メイン・プロットの展開概略。

 この間、“大直の鑽火”決行を準備しているグループが、メンバーを着々と集合させている様子も、主要なサイド・プロットで描写される。

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 ハケ岳で、5歳の少年の姿のYUOの生霊(?)を糸口に、深小姫が幻視する11年前の出来事の追体験は、圧巻の描写。
 YUOの意識にシンクロしたのか、小学生の頃の少女の姿になった深小姫が追体験するYUOのユメは、荒々しく、恐ろしい。
 ここ、読みどころです。何がどんなふうに、荒々しくて恐ろしいかは、作品を読んで堪能してください。

「…………/死んだ人間には/善も悪も/魂もない」
“死んだ人間の/属性も/魂の有無も”
“残された者の/恣意によって/振り分けられる”
〔後略〕

 上に引用したケ所の前後では、追体験幻視の直後に、少年の姿のYUOと少女の姿の深小姫が会話を交わす。ここも9巻の読みどころ。

「僕は決着をつけなくてはならない」と語る少年のYUO。
「…どうして?」と、少女の深小姫は問う。

“--僕は性急すぎたのかもしれない”“僕は一度立ち止まって--こうして/君に会うべきだったのかもしれない”
 おそらく、ここが、2人が最も歩み寄ったやりとりに思える。

“時間までに/君が僕の前に/戻ってこられたら”
“「大直の鑽火」が/執り行なわれる場所を/教えるよ”
「そして/生き残った/彼らを」
「今度は君が/導いてあげて/ほしい」
「もし君が/来なければ」
「僕は/行く」
「…行くって/どこへ?/
あなたは今/囚われているのよ」

「…行くってどこへ?/あなたは今囚われているのよ」
 このやりとりを最後にして、深小姫は幻視から目覚める。

 シンプルに読めば、井荻ユオが警察に「囚われている」ことを意味してるけど。
 アタシ(紹介者)には、YUOの意識が、11年前の出来事と、それを社会的に無かった事にしてきた、自身のおこないに「囚われている」って意味にも思える。
 そして、おそらくYUOには、又、違った意味で受け止められたことだろう。

 ちょっと、ネタバレ多めだったかな?
 でも、10巻採録分、末尾のエピソードとか、ドラマチックなとこで言及してないとこはまだまだあるし。だいじょぶ。

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「ウェルテル」の物語は、集団焼身自殺阻止に動く深小姫の言動をメイン・プロットに、他方では、集団自殺準備を進めるYUOの追随者たちの動きを重要なサブ・プロットにして、高速緊迫展開で続けられます。

 8巻採録分では、自殺志願者たちの間の動揺や葛藤など心理の幅が描かれて、読み応えがありました。
 9巻採録分では、いざ決行に向かう集団の異様な平静さが、その異様さまで描写されてて、やっぱり読み応えがあります。
 他にも、峨田警視の事情がうかがえるエピソードや、ミツル(藤原充)の事情が補完されるようなエピソードも編み込まれてて。いよいよ、全編が大詰めに向かうような、物語のうねりが感じられることでしょう。

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『低俗霊DAYDREAM』9巻採録分は、雑誌「月刊 少年エース」(角川書店)の、2006年2月号~8月号に掲載された分、との事。

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書誌情報:
奥瀬 サキ 原作、目黒 三吉 漫画,『低俗霊DAYDREA』9(角川コミックス・エース),角川書店,Tokyo,2006.
ISBN 4-04-713858-4

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Drupal.cre.jp から 月, 2008-02-11 08:46 受信

 原作、奥瀬サキさん、漫画、目黒三吉さんの「低俗霊DAYDREAM」は、「口寄せ屋」崔樹深小姫が、心霊の関わる事件へ「対策」をしていく物語。舞台は、現代の日本だ。
 10巻では、いよい


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