『機動戦士ガンダム00』のSFネタ解説その16:太陽炉
機動戦士ガンダム00を見て、出てくるギミックや台詞を元に妄想をたくましくしていくSFネタ解説シリーズの16回目。
今回のお題は、#17『スローネ強襲』でおなくなりになったエイフマン教授に哀悼と敬意を表して太陽炉の謎に迫りたい。
エイフマン教授のセリフだけでなく、#17ではアバンタイトルでも木星軌道上で何やらソレスタルビーイングに絡む事件があった。
なぜ、木星なのだろうか。
核融合が実用化された宇宙世紀ガンダムで木星が重要であった理由は、ずばり、核燃料であるヘリウム3の採集のためであった。ヘリウム3による核融合が実用化できれば、中性子をほとんど出さない、効率が良くて(そこそこ)安全なパワープラントになるからである。
なお、ガンダム世界同様に核融合燃料として木星の重水素やヘリウム3が戦略物資となっている世界としては、『航空宇宙軍史』(谷甲州)で描かれた第一次外惑星動乱がある。このシリーズは日本が世界に誇るミリタリ系SFの傑作であると思うがゆえに、未読の方はぜひぜひ。
ガンダム00の世界においては、核融合は残念ながら実用化されていない。核融合の実用化に関しては、私が小学生だった1970年代頃から「あと10年くらいで実用化する」と言われ続けてふと気が付くと21世紀になっているわけで、この調子で300年経過してるもよう。
この核融合がうまくいかねえにはどんな理由があるのかというコトに関しては、やはりSF作家/架空戦記作家でもあり、谷甲州ファンクラブ人外協のメンバーでもある林譲治さんが
で見事な解説をされているので、どうかこちらをごらんいただきたい。
話を戻して核融合炉がない代わりに効率の良い太陽発電が実用化されているのがガンダム00世界である。
こちらは効率がものすごく良くなっている他は、現在の科学技術の延長にあるものだと思われる。
では、太陽炉はどこらへんが特別なのだろう。
太陽炉については、無尽蔵のエネルギープラントということが分かっている。
SF的に無尽蔵のエネルギーといえば、いろいろあるが、代表的なものをいくつかだそう。
ひとつは、ブラックホールを利用したエネルギープラントだ。『へびつかい座ホットライン』(ジョン・ヴァーリイ)や中性子星ではあるが『光世紀パトロール』(石原藤夫)など、多くのSF作品で登場している。イメージ的には水力発電をものすごくしたものと思っていただければよい。ダムなどでためた水を高いところから低いところに落とす時に発電する要領で、ものをブラックホールに投げ込むと落ちる過程でエネルギーが手に入るというものだ。落とすモノはゴミでもなんでもよいので、実に環境に優しい(でもリサイクルはできない)エネルギープラントである。
ただ、ブラックホールは落とすと困る。なんでも吸い込んでしまうからである。普通は磁場のネットによって確保し、へんなところに漂っていかないようにする。失敗したら、『ガイア』(デイヴィッド・ブリン)のようなすごい大騒ぎになるので注意だ。この作品は間違えて地球の中心に落としてしまったブラックホール(小さいものなら蒸発してくれる可能性があった)を、さて、どうするかというあたりが実にハードSFファンの魂をくすぐってくれる名作である。
続いて、真空やら別の宇宙やらからエネルギーを手に入れる、少々インチキめいたエネルギープラントがある。『機動戦艦ナデシコ』の相転移エンジンとか、『最終戦争シリーズ』(山田ミネコ)のメビウスコイルなどがそれだ。エネルギーが無尽蔵にある場所へ、それをくみ取る井戸のようなものをプラントとして作る方法である。ただ、インチキであるがゆえに、『うちゅう の ほうそく が みだれる!』みたいなコトになりかねない。利用には注意が必要であろう。さもないと、『神々自身』(アイザック・アシモフ)みたく宇宙の危機になってしまう危険がある。
なお、やはりアイザック・アシモフの作品に『永遠の終り』があるが、こちらは大パワーが必要なタイムマシンのためのエネルギー源として、40億年未来の地球があった空間にタイムマシンで空間を接続している。そんな未来になると、太陽が赤色巨星になっていて地球はすでに太陽に呑み込まれている。つまり、未来の時空は太陽の中と接続されており、ここから大量のエネルギーをいくらでも過去の世界へ取り込めるというこれまた少々インチキめいたものである。
そして、みっつめ。太陽炉がまさにコレではないかと思われるのが、『モノポールエンジン』である。
これは『サイバーナイト 戦士たちの肖像』(山本弘)などで登場した方式で、巨大な質量を持つモノポールで周囲の物質を原子崩壊させて、そこからエネルギーを得るというものだ。モノポールの制御は磁気単極であるがゆえに磁場で可能である。核融合炉も磁場でプラズマを閉じこめるわけだが、モノポールの方が制御は楽だと思われる。
モノポールがどこにもない、とゆー問題をのぞけば。
そう、モノポールは理論上はあるんじゃないかと思われているが、実際にはまだ観測されていない物質である。つまり、あるとしてもたいそう稀少な存在なのだ。
では、モノポールはどこで手に入るか?
理論上、モノポールは強力な磁場のある場所で手に入る可能性が指摘されている。木星は、地球などより遥かに強力な磁場を持っており、その超強力磁場によって多くの高エネルギー粒子(宇宙線)を捕らえているのだ。ひょっとしたらその中には、モノポールもあるかも知れない。ないかも知れないが、まあ、探してみる価値はあるだろう。
ただ、1個や2個のモノポールを捕まえたところで、それではモノポールエンジン=太陽炉(とここでは仮定)を作る役には立たない。
まずは、モノポールを利用して、モノポールを増やす方法を考えなければいけない。これはかなり地道で根気のいる作業になると思われる。おそらく、160年前の有人木星探査とやらで見つけたモノポールを、延々100年以上かけて少しずつ増やしていき、ようやく現在稼働中の5基の太陽炉を作り出したのだろう。
この分では、世界全部のエネルギーをまかなうほどの量を用意するにはものすごく時間がかかるし、あまり実用的でもない。増やしたモノポールの全部を、さらにモノポールを増やすのに使うのではなく、4機のガンダムのGNドライブ稼働に使っているのもそうした判断だ。
だが、ここでやはり、謎が出る。
確かに、無尽蔵のエネルギー源としてモノポールエンジンは素晴らしい。が、それはあくまで無尽蔵なだけであって、出力的にはやはり、せいぜいがガンダムに既存のモビルスーツを凌駕するパワーを与える程度の存在でしかない。
果たして、エイフマン教授が気づいたソレスタルビーイングの真の目的とは何なのだろうか?
……そういえば、『時間的無限大』(スティーブン・バクスター)のワームホール型タイムマシンって木星軌道にあったよなぁ、あれはエキゾチック物質によるシロモノであったが、モノポールを利用することでうまく作れないものかなぁ、などと牽強付会に駄法螺を考えつつ、今回はここまで。
※2010.02.20 コメントを受けて、アシモフの著作名のミスを修正:『無限の終わり』を『永遠の終わり』に
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