『反逆者の月2 帝国の遺産』デイヴィッド・ウェーバー スペオペの華である大規模宇宙戦闘が、これでもかとてんこ盛り 1巻に不満がある方も2巻までは読んでみよう!
月が実は異星人の巨大宇宙戦艦だった――!
というSF的には珍しくもなければ独創性があるわけでもない作品を、それでも、手堅く面白く仕上げた前作『反逆者の月』の続きである。
「王道をきちんと処理した前作の手際からいっても、そんなに悪い出来ではないだろう」
などと、軽い気持ちで本書を読みはじめ――
高い満足感とともに読み終えることができたのは、まことに重畳であった。まさか、ここまで面白いとはっ!
前作『反逆者の月』は、どこに不満があるというわけではないが、スペオペとしての最大の山場が序盤――月が宇宙戦艦であった――に来ていた。
最後に反乱者の本拠地に乗り込んでの決戦はあったものの、センス・オブ・ワンダー的な、ワクワクはやはり序盤で終わっていた感が強い。
対してこの2巻では、後から後から、ワクワクが追加されていく。
まず、帝国はどうなってしまったのか?
異星人の侵略が間近に迫ってきており、無人の警戒ステーションからの連絡も次々と入っているのに、まるで反応がないのは、いったいなぜなのか?
月=戦艦ダハクと主人公たちは、帝国領内で驚くべき――といっても、ある程度予想(読者も作中人物も)されていた現実に直面する。
すでに何万年も前に、帝国は内戦により滅びていたのだ。
それでも、帝国の援助なくしては異星人からの襲撃に対し地球を守ることはできない。帝国の生き残りを求めて月=戦艦ダハクは帝国領内深くに入り込む。だがそれは、地球が単独で異星人の襲撃を持ちこたえねばならないということでもあった。
この異星人の前衛部隊は、物語の進行の合間に、次々と生命の住む星を滅ぼして進んでいる。平和に暮らす異星人が、次々と滅ぼされていく挿入場面は、ひとつひとつは短くはあるが、繰り返しによって、なかなかツボを押さえた心憎い演出になっている。
一方、地球に残った人々は、人類の総力をあげて対異星人の軍備を整えていく。2年後には異星人の先遣隊が到着するので人々を納得させる時間も手間も今はかけられない。
知的エリートでもある軍人たちの独裁によって地球がひとつにまとまっていくあたりは、政治心情的に気に入らない人も多かろうが、私としてはペリー・ローダンの第三勢力などの「ああ、いつものアレかぁ」とニヤニヤしつつ読んでしまう。このへん、世界史的なパワー闘争に勝ち抜いた西洋人的な無意識の自信――つまり、異星人がやってきてルールが外から押しつけられても、それは俺たちヨーロッパ文明的なものの延長線上にあるはずだ――が見られて、ほほえましい。civilization4ですべての文明が鉄道や蒸気機関、コンピュータや内燃機関などを発達させてインターネットでハリウッド映画見ているようなアレである。
おきまりの抵抗勢力による反抗の後、創意工夫をこらした地球防衛システムと、異星人艦隊との死闘が続く最初の山場となる。『ペリー・ローダン』でも、やはりこういう母なる地球の危機に人類の総力を結集した戦いが初期シリーズのクライマックスだった。そういや、あっちでも帝国に助けを求めにいってロクなめにあっとらんなぁ。
そして満身創痍、もはや後がなくなったところで――騎兵隊の登場である。ここはもう、分かっていても、感動してしまう。マジンガーZがぼろぼろなところにグレートマジンガーが登場したあの場面と同じだ。
実は――
私は、ここで終わると思っていた。三部作だし。逆襲は第三部というのが、お約束ではないか。
が、この後も続くのだ。さらに派手に、さらに感動的に。
最初に書いたように、本書であげられているネタやギミックは、決して独創的なものではない。過去において、たくさんのSF作品が扱ってきた内容である。
異星人がなぜ生命の存在する星を滅ぼして回るのかという作品の根幹に関わる部分も、過去の多くのSFを読んでいれば「想定の範囲内」である。
しかし、それでも本書は面白い。
面白さとは独創性にあるのでもなければ、設定やプロットにあるのでもない。あらすじだけ並べたら、傑作も駄作も、そんなに変わらない。
傑作というのはひとつひとつの演出がきちんと重なっていき、感動と面白さを生み出す作品だということがよくわかる。
本書は、傑作……かどうかは、各自の判断に任せるとして、『反逆者の月』が面白かった人には、さらに面白いだろう。私は単純に比較して3倍以上楽しめた。
楽しめただけではなく、最後の戦闘での月=戦艦ダハクが“真の敵”にきった啖呵で、思わず目頭を熱くしてしまった。
この作品の真のヒロインはマッキンタイア艦長の恋人(奥さん)ではなく、このダハクであるという意見もあるが、私もこれに賛成するしだいである。

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