2月お題「雪の朝」
この作品は、軍神の旗を掲げるためにシリーズのお話です。簡単に言うと、上杉謙信や真田幸村や石田三成が女の子の世界です。
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ここらへんとか参照ください。
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早朝。
庭の木の枝の上に残った雪に、朝日が反射する。
真田幸村はその光をまぶしそうに、篭手をはめた片手で遮り、人の姿の見えない庭を、屋敷を、感慨深そうに見回した。
緋色の甲冑に身を包み、朱色の槍を持ち、額には六文銭をあしらわれた鉢金を巻いた。
軍馬は門で待機しており、その外では気配のみしか感じないが、勇士たちが幸村の決断を待っていた。
「お世話になりました」
一言、それだけ言うと、屋敷に礼をする。言葉を伝えたい相手は、ここにはいない。だが、それでいい。それがいい。
そして、迷いのない若武者の顔で、屋敷を後にしようとしたとき。
「行くのね」
次の瞬間、それまで誰もいなかったはずの屋敷の縁側に、直江兼続の忍者の紅葉が座っていた。
「行く。止めても駄目だからね」
「残念ながら、止めるなと言われてるから」
誰から、と聞く必要はなかった。
「一応、おせっかいだけど」
紅葉はよいしょと立ち上がると、やれやれといった風に両手を広げて見せた。
「武田信玄の義理の息子、木曽義昌が織田信長に通じて反乱。織田・木曽連合軍に武田は敗北して壊走。武田家当主勝頼は真田昌幸の城に行くか、小山田信茂のところに行くかもめたけど、一族の小山田のところに行くことにしたみたい。まあ、すぐに裏切られて殺されると思うけど」
うん、と幸村はうなづいた。
「武田勢は織田軍の前に壊滅状態。織田軍は旧武田領で、「武田狩り」と称して、武田ゆかりの人間を片っ端から殺してるみたい。ちなみに、今武田を攻めている織田・徳川・北条連合軍の総数は10万を超えるらしいわよ」
それでも行くの?という紅葉の顔に、幸村は微笑した。
「敵の数が多い、という理由で昌幸御父様を見殺しにする幸村じゃないよ。御父様が窮地に陥っている。なら、参上するしかない」
「もう少し待てば、兼続様が越後国内で反乱を起こしている新発田の討伐から帰ると思うけど」
「もう少し待てば、御父様の命は失われているかもしれない。その時に、あの時ああしてればと後悔するのだけは、絶対に嫌だ」
「困った人ね」
紅葉は両手を広げて、説得をあきらめた。幸村は微笑する。
「兼続に伝えて。幸村はもはやひとりの戦国の士だと」
「嫌よ。自分で言いなさい」
ふてくされた様子の紅葉に、幸村はうなづいて、軍馬にまたがる。
「真田幸村。これより、直江兼続殿の保護のもとを離れ、死地に赴きます」
力強く宣言すると、雪を蹴り飛ばして、一気に駆け出した。姿は見えないが、勇士たちがそれに続く。
「あの子、最後まで自分は人質だという自覚がなかったわね」
幸村の姿を見送ると、紅葉はそう言って嘆息すると、自らも身を翻した。
彼女の主に報告することが、たくさんあるのだ。
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