新作詳細プロットニューバージョンその2:「遅刻寸前」

続いて二番目のシーン。
前に出した「遅刻寸前」の改訂バージョンですね。

それでは、どうぞー。

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・「遅刻寸前」

 アークシャードという異世界の、ボーディアット大陸の超大国、ザウウェン皇国の一国家、タイクーン王国の首都タイクーン。
 その超近代的なビルの周りに、中世的な家々が取り囲むようにして立ち並ぶ、街並みの朝。

「行ってきますっ」
「行ってきますー」
 白い壁に、灰色の屋根の家から、元気よく、というより、慌てて玄関を飛び出して、トープサイド学園へと向かう、アリサとティアの姉妹の姿があった。
 レンガ敷きの道を、タタタタ……、と音を立てながら走っていく二人の少女。
 アリサは左右に両分けにしたふた房の長い髪を左右に揺らし、ティアは耳を隠す程度の短い髪を揺らしながら、走っていく。
 アリサの制服の下に隠れた二つの胸が振れ幅はちいさいものの、リズムよく横に揺れる。
 ティアの制服からは、ふくらみは感じられない。
「おねえちゃん、今日も遅れちゃうよぉ……」
「あんたが起きるのが遅かったからでしょ! 毎度毎度、まったく、もう……」
 丸目のティアに、釣り目のアリサがますます目を吊り上げながら文句を言う。
 吐息を洩らしながら、二人は走る。
「あれ、ルチアちゃんは……」
「とっくに学校に行っちゃったわよ! いつもの通り、メリルちゃんが迎えに来たから!」

 狭い下町の道を抜け、二人は大通りに出る。
 走りながら、アリサは空を見上げた。
 その、空の上には。
 学生達や通勤者達が杖に乗ったり、飛竜に乗ったりして、空を行き交い、その少し上を、人型の鎧をまとった機械、魔導機が直立不動のまま、すうっと空をすべっていく。
 そしてそれらのはるか上を、飛空艇がプロペラを回しながら、どこかへ飛び去っていった。
(まったく、空を飛べる人がほんとっ、うらやましいわねー)
 ため息をつくと、また前を向いてトープサイド魔法学園へ走って向かうアリサと、ティア。

(ここは転移魔法を使いたいけど、登下校時の転移魔法は校則で禁止されているし、第一、ティアもわたしも、転移魔法が使える職種≪ジョブ≫とっていないし、そもそもわたしが魔法を使おうとすると、なぜかいつも暴発するし……)
 走りながら、アリサは自身の不幸を嘆く。
(あーあ、魔道士系を持っている人とか、貴族の方々が、ほんとっうらやましいわねっ!)
 そのときだった。
(……あ、そーいえば)
 何かを思いついた顔で、アリサは足を止めた。
「どうしたの、おねえちゃん?」
 姉を追い抜いた妹が、立ち止まって後ろの姉を振り返る。
 アリサは、ティアの顔を見て、両目を吊り上げてにんまりとした顔で訊ねる。
「ティア、あんたエクスプローラーの免許取ったじゃない?」
「うん」
「<速足>の魔法覚えているはずでしょ?」
「もちろん覚えているよー。……お姉ちゃん、そのこと忘れてたでしょ?」
「あんたも忘れてたでしょっ!」
「てへへっ」
 アリサの言葉に、笑ってごまかすティア。
「……さっ、やるのよ」
「了解っ、おねえちゃんっ」
 ティアは目を閉じて集中し、魔法を唱えはじめる。
 ティアの目の前にかざした手のひらの中で、小さな光が生まれ、その光に応えるように、別の色の光が、ティアとアリサの足元で円を作る。
 その光が二人の体を包み、強く輝いたあと、体の中に吸い込まれていく。
 それと同時に、ティアの手のひらの光が、光り終えた蛍のようにすうっと、消える。
「……終わったわね。さっ、行くわよ!」
「うんっ!」
 それを確認すると、アリサは、足に力をこめ、地面をけり、再び駆け出す。
 ティアも少し遅れて、後からついてくる。
 さっき走ってたときよりも体が軽い。
 足が早くなったのが、確かに感じられる。
<速足>の魔法の効果だ。
 学園までの道のりを、二人は一気に駆け抜けていく。
 アリサの胸の振れのリズムが、もっと早くなる。
 途中、荷物を積んでのろのろと走る、行商人の馬車のとなりを何台も追い抜く。
 前や横を見ると、同じ系統の魔法や能力を使って走っている生徒の姿が見える。
(よしっ、これでホームルームまでには余裕で間に合いそうね)
 石造りの家々の間から見える、旧世界のビルディングの遺跡を使った校舎が、だんだん大きくなっていく。
 時間に余裕が出来たおかげで、心は軽い。
 そしてしばらくして、学園の校門の少し前までやってきた。
 目の前に見える校門が、見る見る間に大きくなっていく。
 安心したアリサは、その校門の直前で、
「ふー、間に合ったわねっ、ティア。楽勝、楽勝♪」
 と、後ろのティアへ振り向いた瞬間、
「おねえちゃん危ない!」
「えっ!?」
 妹の声に、前へ顔を戻すと、そこには人影が……!
 どんっ!
「きゃっ!」
「うわっ!?」
 アリサは誰かと激突してしまい、転んでしまった。
 自分が倒れるのと別の音がしたので、相手も倒れてしまったらしい。
「おねえちゃん、大丈夫!?」
「いたたたた……。な、なに」
 と言いかけたその時。
 先に立ち上がったのだろう、すぐ上から声がした。
「怪我は、ない?」
 アリサはその声の方を、見上げる。
 心配そうに見つめる優しげな顔が、そこにあった。
 倒れたアリサに手を差し伸べてくれたのは、学園の、アリサ達が通う専門学校高等部の制服を着ていたけれども、見たことがない感じの男の子。
 どこか、この世界の人間のようで、そうではないような気もする顔立ち。
 でも、その風貌は優しくてスマートで、アリサの好みだった。
 釣り目の端っこが、思わず垂れ下がる。
 誘われるまま彼の手をとる。
 そして、顔を見つめながら手を引かれて立ち上がると、思わず顔が赤くなる。
 ダンスパーティで、理想の相手と踊るような雰囲気だ。
「ごめん、校舎を見上げていたせいで気づかなかったんだ。本当にごめんね」
「い、いえ、そんなことないです……」
 助けを借りて立ち上がったのはいいが、なんていえばいいのか分からず、アリサは口ごもる。
 その男の子に、どこか共感を感じていたからだ。
(あ……、この人……、わたしと……、同じものを持ってる……?)
 口ごもっていると、男の子は校舎の時計を見上げて、
「ごめん、ちょっと学園長や担任に用事があるんで、これで失礼するね」
 急いでいる様子で、学園内にすぐに姿を消してしまう。
「あ……」
 その背中をぼおっと見送る、アリサ。
 そんな彼女に、ティアが突っ込みを入れる。
「おねえちゃん、あの人と、なんかいい感じだったね」
「うっ、うるさいわね! それよりも早く、わたし達も校舎に入りましょっ」
 たるんだ目を再び吊り上げ、顔を真っ赤にしながら、アリサは校舎入り口へ再び走り出す。
 そんなアリサに、ティアはにっこりとして後を追った。
「はーいっ、おねえちゃんっ」

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ではとことこ次行ってみよー。

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