RPG今昔物語:ゲーマーは勝利を求める(Gary Gygaxを偲びつつ)

 ゲーマーは勝利を求める。

 なぜ勝利を求めるのか? 哲学的、思想的にはイロイロあるだろうが、ゲームデザイン的には明確な理由がある。
 プレイヤーが勝利を求めて思考し、決断し、行動することがゲームシステムをもっとも上手く動かすからだ。

 誰でもやる鬼ごっこやかくれんぼという遊戯(ゲーム)を考えて欲しい。
 追いかける鬼が、勝利を目指さず。ごろごろ昼寝をしていたら?
 逃げたり隠れたりするはずのプレイヤーが、勝利を目指さずすぐに鬼に捕まってしまったら?

 その場合、ゲームは成り立たない。
 ゲームの多くは、プレイヤーが勝利を求めてこそ、はじめて機能するのだ。

 RPGが登場した頃。これを遊んだのはウォーゲームあがりのゲーマーたちだった。ミニチュアゲームを遊ぶ人々も多数いたのだが残念ながら私の知り合いはみな、ウォーゲーマーであったのでそっちには詳しくない。

 彼らは、勝利を求める心こそがゲームを機能させることを肌で知っていた。たとえ、陰謀ルールで鉄砲隊(あるいはロングボウ部隊)が待ちかまえる野戦陣地へ攻撃を強制されたとしても、明らかに勝てない第三次ポエニ戦争のような戦いに追い込まれても(SPI社のPUNIC WARS』)プレイヤーは頑張って勝利を目指す。そうしなければ、ゲームが成り立たなくなるからだ。

 しかし、勝利がナニかというのが曖昧になると、ゲーマーのそうした性向はマイナスにも作用する。いわゆる、マンチキンで言う「プラスが多いものたくさん」という奴だ。

 RPGは、そうした点においてイロイロな問題を生じてきた。

 プレイヤーにとって、PCにとって勝利は何か?
 経験点が手に入ると、勝利なのか? レベルアップすると、勝利なのか?
 ならば、『クトゥルフの呼び声』で怪しげな手紙を見れば読まずに焼き払い、地下からヘンな声が聞こえてくれば穴を埋めるというプレイは、勝利のために正しいとうのか?

 ゲームマスターはもっと難しい。彼の勝利は何か?
 PCのパーティーを毎回全滅させてはマズイのは、何となく想像がつく。かといって、プレイヤーがどんなミスをしても楽勝というプレイも、違う感じだ。
 ならば、生かさず殺さずで経験値を出し渋り、アイテムや金を搾り取るようなシナリオは、それが勝利につながるというのか?

 その後、RPGのいくつかは参加者全員が楽しむことが勝利の目的として明記されるようになった。そのように誘導したり、アドバイスする本もある。
 これは正しいモノの見方ではあろうが、新たな問題も生じた。

「お前の楽しいって、ナニよ?」
「……んー、オレサマ最強で、敵も味方も他のPCも、オレサマの前にひざまずいて忠誠を誓うのが楽しいなぁ」

 などという人間ばかりが集まってしまうと、全員が楽しむという勝利条件は難易度が高すぎることになる。
 そこで、ここは逆に考えてみよう。

「お前の楽しいって、ナニよ?」
「……んー、そうだな。強敵を倒したり、煮えたセリフを言ったりするのも楽しいけど。他のプレイヤーやそのキャラクターをサポートして出番を用意したり、演出してやるのも楽しいな。GMのシナリオを理解して、より面白い展開へとつなげるのも楽しいし。GMをやる時には、プレイヤーが喜ぶ演出をシナリオからひろって、見せ場を作ってあげるのも楽しいよ」

 こういう人間が集まってくれれば、ぐっと勝利を目指すための難易度が下がる。
 その点でいえば、現在遊ばれているRPGの多くは、そうした「他人を楽しませることで自分も楽しい」人が勝利しやすくなっているとは言えるだろう。

 もちろん、私のように古強者霊媒師なウォーゲーマー上がりにとっては、他のプレイヤーと力量を競い、打ち負かすことによって得る勝利というものもなかなかに捨てがたい。GMをやるからには、プレイヤーを大金とマジックアイテムで釣っておきながら、最後の最後で一文無しに追い込むというシナリオを楽しみたい、という気持ちもないわけではない。

 それでも、やはりゲームには、それぞれのゲームに適した勝利条件がある。
 RPGはやはり全員が楽しめば勝ち、という勝利条件がもっとも適していると思うのだ。

 時にそれは困難を伴うかも知れない。ナニを楽しいとするかは、プレイヤーによって、またそのときの気分によって大きく変わってくる。私もそれで失敗したことが何度もある。

 だが、いかに難しくとも、やはりゲーマーたるものゲームにおいては勝利を目指すべきなのだ。その気持ちこそが、ゲームをもっともうまく機能させるエンジンになるからである。
 参加した全員が楽しめるのがRPGの勝利であるならば、それを目指すことこそがゲーマーとして正しきありようなのだ。

 以上――

 今は昔の、物語である。

 この他の『RPG今昔物語』は こちら に。

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