宇宙の戦闘:宇宙機雷/機動爆雷/軌道爆雷 防衛的にも、攻撃的にも使えるコストパフォーマンスの良い兵器……でも、弱いモノいじめなのはしょうがない

 スペースオペラに登場するさまざまな宇宙の戦闘について紹介する本コーナー。今回のお題は、宇宙機雷である。
 機雷、という兵器はあまり人好きのするシロモノではない。
 地雷と同様に不意打ちご免な感じでドカンといくため、機雷にやられると、どうもこう、「損をした」という気になるのである。機雷そのものは安い兵器だから、なおのことである。
 しかし、逆に言えば相手の戦力を機雷で吹き飛ばすことができれば「お得」なわけで、使わない手はない。

 さて、スペースオペラにおける宇宙機雷だが、水面に沈む機雷同様に、使い方は大きくふたつに分けられる。

 ひとつは、防衛すべき宙域に敷設することで、敵の攻撃を防ぐ、ないし敵の行動を制限することで特定の宙域に戦力を集中できるようにする、というものだ。
 宇宙空間は広いので、すべてを守ることは難しい。だから、守れない、守りにくい場所には宇宙機雷を大量に敷設して通行不能にし、通行可能な場所にパトロールなどの防衛戦力を集中するというものだ。
 宇宙ステーションや、スペースコロニーを守るのにはもってこいの使い方である。
 これが防衛的な宇宙機雷の使い方である。

 もうひとつは、敵が使用する航路上に敷設することで、敵の商船などが自由に行動するのを阻害するというものだ。
 宇宙機雷敷設艦を敵の支配宙域に侵入させる手間はかかるが、宇宙機雷を敷設されると、一個でも宇宙機雷があるかも知れないという疑いがあると、商船などの行動は大幅に制限されてしまう。うまく敷設すれば掃海(掃宙)の終了まで、長期間にわたり敵の行動を封じ込めることができる。
 これが攻撃的な宇宙機雷の使い方である。
 攻撃的な宇宙機雷の使い方のバリエーションとしては、ミサイルのような使い方というのもありえる。この場合、機動爆雷という呼び方が似つかわしい。

 宇宙機雷に必要な能力として、攻撃力の他に、敵船を探知するセンサーと、敵船に接近するためのロケットがある。
 図で示すとこういう感じだ。

宇宙機雷 宇宙機雷 

 ここで描いた宇宙機雷は、宇宙戦艦ヤマトデスラー機雷のようなものではなく、谷甲州氏の航空宇宙軍史に登場する機動爆雷に近いものだ。
 デスラー機雷は、水中の機雷と同様に、直接触れる、あるいはすぐ近くで爆発することで相手にダメージを与えるというものだ。
 一方の機動爆雷は、爆発によって大量の破片を作り、その破片の嵐で散弾のように敵を包み込み、いくつかが命中することで相手にダメージを与える確率論的な兵器である。

 破片といっても、バカにしたものではない。たとえば、第一次外惑星動乱で使用された機動爆雷は、地球圏から木星ないし土星へと向かう船団相手にしばしば使用されたが、この時の相対速度は数十キロメートル毎秒プラスから場合によっては百キロメートル毎秒プラスである。秒速30キロメートルの破片が衝突すれば、その破片がわずか10グラムほどであっても衝撃のエネルギーは莫大なものになる。何しろ、運動エネルギーは質量×速度×速度で、速度の2乗であるからだ。逆に言えば、相対速度がほぼゼロにされた状態では、機動爆雷の破片攻撃はほぼ無力になっていると考えていい。『小惑星帯急行』(『火星鉄道一九』収録)でわざわざ小惑星帯で襲撃があったのも、この時点での相対速度がもっとも大きくなるからだろう。
 もちろん、あまり相対速度が上がりすぎると、運動エネルギーが大きすぎて破壊ではなく貫通してしまいやせんかという気もしないでもないが、とにかくそこらの大砲の弾が命中するよりも痛いのだ。

 しかし、過信は禁物である。機動爆雷という兵器が使用される背景には、長射程のレーザー砲などのビーム兵器がなかったとかの理由もある。そもそも、弾頭のエネルギーすべてを目標にぶつけるのではなく、その一部を破片の形でぶつけるという時点で、エネルギーの無駄遣いという面はあるのだ。
 おそらく、第一次外惑星動乱では敵の戦闘艦相手に(それこそ、正規フリゲート艦相手でも)大活躍した機動爆雷も、その後の技術革新によって戦闘艦相手には無効化され、非装甲の商船だけを狙う兵器になったのではないかと思う。第二次外惑星動乱などの作品が描かれることがあれば、そのあたりも詳しく解説されるのではないかと期待している。

 だが、非装甲の商船がターゲットであれば、こうした破片をまき散らす兵器は有効であり続けるだろう。
 そのへんも含めて、商船と宇宙機雷の関係を描いたgifアニメを作ってみた。添付してあるのでご笑覧いただければ幸いである。

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ケスラーシンドローム

 『プラネテス』などで題材にされていますが、ケスラーシンドロームが発生すると、元も子もないような気がします。他にケスラーシンドロームが発生することまで考慮した作品はあるのかな?
 そもそも、空気抵抗で破片が減速される大気圏内ですら被害が出るというのに、宇宙空間で爆心地の破片雲を平気で突っ切る作品があまりにも多いような気がします。たぶん、なにも考慮していないのでしょうね?

爆発の中に突っ込む演出

 宇宙で発生するデブリネタの元祖とでも言えるのが『宇宙のスカイラーク』(E.E.スミス)における、砂粒をばらまいて敵をそこに突っ込ませるという戦術でしょうか。あれは衝突というのではなく、摩擦とその熱で敵戦艦の装甲を融解するという場面だったと記憶しています。時代を感じさせますね。

 ケスラー・シンドロームは、あれは現実的な脅威というよりは、一種の頭の体操のようなものと私は認識しております。低い衛星軌道では破片の多くは不安定な軌道となります。常にデブリを供給できる環境でなければ(つまり難破する宇宙船を次々と送り込まなければ)数十年、数百年のうちに軌道上は自然ときれいになるでしょう。
 もちろん、デブリそのものは危険な存在ですので、『プラネテス』のように、さまざまな宇宙のゴミを何とかする仕事は重要になると思います。

 宇宙空間の戦闘で、爆発の破片の中を突っ込んで、その中から出現するというのが危ない行為であるのは間違いありません。もちろん、相対速度や装甲の強度によっては、無視できるレベルという可能性もあります。

 が、ここは好意的解釈として、戦術的なメリットについても考えると面白いかと。

 たとえば、爆発によって生まれた強い赤外線バーストを敵との間にはさみこむことによって、煙幕の一種として使うのはどうでしょうか。ミノフスキー粒子があるようなガンダム世界では、爆発で視線を遮るだけでも敵の攻撃が当たりにくくなる効果はあると思います。
 そうやって、姿をくらませて接近し、こちらの攻撃を行うのであれば、爆発の破片の中に突っ込むという行動も、『肉を斬らせて骨を断つ』戦法であればカッコいい感じです。

 敵の目の前でミサイルを命中させずに自爆させ、その中に自らの機体を突入させる。当然、破片があちこちに命中して軋むし、揺れるし、場合によって腕か足の一本も壊れる。
 けれど、ただの一撃で敵を仕留めるため、あえて死中に活を見いだす――

 というのは、私にとって、たいそう好みの演出です。


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