『ガッツ&ブラッド ~蒸気帝国騒動記~』川﨑康宏 状況がひたすら悪化するライトノベル界のモンティパイソン……というかドリフ?
川“崎”康宏さんあらため、川“﨑”康宏さんといえば、熊が出てくる『ALICE』やエルフとドワーフの刑事ドラマな『銃と魔法』といった名作というか、怪作というか、奇作というか――とにかくまあ、スラップスティック(どたばたギャグ)な作品が上手い人である。
スラップスティックの笑いは、脱力系の笑いである。肩の力を抜いて「しょうもない」「アホかい」と頬を歪める、ダメな笑いだ。
『ガジェットポップ』の続きである『ガッツ&ブラッド』もまた、読めば読むほどに脱力する、ダメな乾いた笑いがてんこ盛りである。
一ページめくるたびに、事態はどんどん悪化し、一場面迎えるたびに、モノゴトがうまく解決する可能性から遠ざかっていく。
この本を楽しく読むポイントは、キャラに萌えようとか感情移入しようとかいう、いわゆる普通のライトノベルの読み方を「やらない」コトである。この本は活字で出来たモンティパイソンであり、ドリフであるからして、読者の位置づけは観客席で芸人のしょうもない芸を見てヤジを飛ばし、げらげら笑うことなのだ。
特に、ツッコミを入れるカンサイ風の心構えはこの本を読むときに大いに役に立つ。『ハヤテのごとく!』の咲夜のように「アホかいっ!」と裏手でツッコミをぺしぺし入れて読むとよろしい。
田中哲弥さん(『大久保町シリーズ』など)と川﨑康宏さんは、スラップスティックなノリのライトノベルが書ける方として私は尊敬し、愛読している。ただ、スラップスティックはどうしても、芸(物語)と読者の間に距離がある。この距離が寂しいというか、寒い感じがして楽しめない方もおられるだろう。
だが、モンティパイソンやドリフのノリが大好きで、最後は何もかもしっちゃかめっちゃかになって終わるという物が読みたいなら。そんな気分の時には。
ぜひ、この本を読んで欲しい。ついでにまだ読んでないなら、『ガジェットポップ』も読んで欲しい。
別にバカ売れして欲しいとは思わないが、これだけの技量と愛のこめられた作品には、もうちょいイイ目にあってもらいたいのだ。


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