『機動戦士ガンダム00』のSFネタ解説その19:世界の歪み

 機動戦士ガンダム00を見て、出てくるギミックや台詞を元に妄想をたくましくしていくSFネタ解説シリーズの19回目。

 第一期最終回(広島での放映は4/5)を記念して、本編でもしばしば語られた世界の歪みについて語っていく。
 いつものように真面目七分に法螺三分、大嘘ついても小嘘はつくなの三割精神でいきたい。

 国連大使のアレハンドロ・コーナーが、ナゼか自分でモビルアーマーを操縦してみたり。
 その下にいたはずのリボンズがアレハンドロを裏切った上、四年後の世界でも何やら仲間を集めて画策していたり。
 戦いが終わった後で空気読めずに、グラハムが刹那に吶喊して相討ちになってみたり。

 ガンダム00の世界は、なるほど、確かに“世界の歪み”があるような気がする。
 どこかで何かが、狂ってしまっている。
 むろん、カエサルが二千年前にいみじくも看破したように、「どんなに悪い結末も、そもそもは善意から起きているものだ」というのは、歴史の、いや人間社会の真実であろう。
 だが、そこに悪意をこめた歪みが介入しているとしたら。
 それこそが、刹那が戦うべき相手であるのかも知れない。

 刹那自身が最終回で戦ったのは、彼が世界の歪みとして認識したアレハンドロとグラハムである。
 が、彼らが何か歪んでいるのは間違いないとしても――ふたりとも、こんなキャラじゃなかったような気がするのだが――それは歪みの“結果”である。
 世界の歪みを病気にたとえるのならば、ふたりは病気の症状である。
 病気でいえば“原因”である病原菌や内臓などの異常を見据えなければ、歪みそのものをなくすことはできない。

 アレハンドロがあんな風になったのは、リボンズの画策もあるだろう。では、リボンズが原因だろうか?
 これも、何やら違う気がする。確かにリボンズはイオリアの計画を裏から乗っ取ってあれこれしたらしい。けれども、リボンズが何年前から活動しているのかは知らないが、彼の影響範囲がそこまで広いようにも思えない。
 では、ヴェーダだろうか? リボンズがアクセスを掌握する前から、ヴェーダはイオリアの計画を逸脱し、自身の思惑でもって『マン・プラス』(フレデリック・ポール)な計画に切り替えたのだろうか?

 もう少し根本部分にさかのぼって考えてみよう。
 そもそも、“世界の歪み”を知ったからこそイオリアはソレスタルビーイングと『計画』を作り上げたのではないのか。
 つまり、200年前の時点で“世界の歪み”があったと仮定したい。イオリアの妄想の可能性もあるが、イオリアが天才だが狂っていた、世界は歪んでないしガンダムやソレスタルビーイングがなくても大丈夫だったでは、あまりに刹那たちの戦いが空しすぎる。

 SF的には、たとえば『レンズマン』(E.E.スミス)におけるアリシア人とエッドール人の戦いのようなものがある。『ファーストレンズマン』ではこのふたつの超知性の戦いに巻き込まれた地球の歴史は、しばしばエッドール人の悪意によって“歪め”られてきたことになっている。皇帝ネロの悪行も、ヒトラーによる第二次世界大戦も、米ソの第三次世界大戦も、エッドール人による“歪み”の結果である。『幻魔大戦』(平井和正)における幻魔も似たようなもので、こちらはアリシア人がいなくてエッドール人だけの宇宙だと考えるとわかりやすいか。
 他にも前回ちょろりと紹介した『百億の昼と千億の夜』(光瀬龍)における、アスタータ50の惑星開発委員会のように、良きにつれ悪しきにつれ人類の進化を司った存在が歴史に介入してきたという作品は多い。

 ガンダム00も同様に超存在が“世界を歪め”てきたのかも知れない。
 しかし、『フェッセンデンの宇宙』(エドモンド・ハミルトン)のような超存在は、この時空連続体にいる我々には手出しできない。果たして、ガンダムは時空を超えて“歪み”の元凶を断ち切ることはできるのだろうか。

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歪みの正体

ガンダム00世界の歪みって「監督」とか「脚本家」とか言うのではないでしょうか?

SFメタ話

>ガンダム00世界の歪みって「監督」とか「脚本家」とか言うのではないでしょうか?

 ふむ、興味深い視点です。アニメスタッフが“歪み”の元凶というと、『勇者特急マイトガイン』を思い出します。
 SFネタ話としては危険ですが、25話のアレハンドロvs刹那の戦いに託してメタ話にしてみるとこういう感じでしょうかね。
 脳内イラストは、『月刊OUT』時代のゆうきまさみさんの絵で。

「アレハンドロ・コーナー、なぜこんな事をするっ!」
「ガンダムだよ。君がガンダムだからいけないのだ」
「なにっ?」
「新作ガンダムというだけで、金が動く! 人が動く! 株価も上下し、多くの人間がガンダムという掌の上で踊らされる! 私にはそれが許せないっ!」
「それのどこがいけないというんだっ!」
「初代ガンダム以外は、ガンダムではないからだ!」
「それは違うっ! 俺はガンダムだっ!」
「ナンセンスだなっ! 初代ガンダムだけは、『戦争ドラマをロボットアニメで』作られたものだった! だがその後は違うっ! その後はすべて、『ガンダムのようなガンダムアニメを』作ろうとしたっ! 作らされたっ! そして“歪み”は広がったっ! ガンダムという“歪み”がなっ! ただひとつっ! ターンエーこそは、その“歪み”を断ち切るはずのものだったっ!」
「……こいつ、ファースト原理主義者かっ?」
「TVアニメで新作ガンダムというだけで、どれだけ多くの人から圧力を受けるか君は知っているかっ! 視聴者やファンの声などではないっ! 動く金に! 新たな仕事にっ! 参加したい、おこぼれをいただきたい、損をしたくないという人間がどれだけ群がるかっ! まるで時間が足りない中で、『あ、この設定については**君の外伝が担当なので本編では触れないようにしてください』などと釘を刺されつつ仕事をする人間の気持ちがっ! 悔しさがっ! 貴様に分かるというのかーっ!」
「……よく分かった」
「なっ?!――世迷い言をっ!」
「お前は、自分の不平不満を世界の“歪み”のように認識しているだけだ。そんなもの、どこの業界の、どの仕事でも普通にあることだ。クライアントは夢のようなことをしみったれた金で実現しようとし、上司は無理難題を唯々諾々と下へ流し、部下はやりたくないことに予防線を張って言い逃れに汲々とする。その程度のことは“歪み”でもなんでもなく、普通に社会に生きればあることだ。その上でっ! 自分にできることを精一杯やるのがっ! 大人というものじゃないのかっ!」
「若造がっ! 聞いた風な口を~~~っ!」
「――ガンダム・エクシア、目標を駆逐するっ!」

 ちなみにSFメタ話で私が好きなのは、豊田有恒さんの短編で、半村良さんとか小松左京さんらとマージャン打ちながら、「そういや誰も星新一さんの悪口は言わないよな」というあたりから現実がゆらいでいくメタ話でしょうか。
 タイトル忘れましたが、あのオチは実に秀逸でした。

 なるほど、このメ

 なるほど、このメタ話からすると、ガンダム00の歪みの元凶は「スポンサー」とか「製作会社」と言うことになり、ひいては、それらを許す我々ガンダムを求める視聴者ということになるわけですね。
 そう考えると、200年前(つまり現在)から物語がスタートしているのも当然とういうことになります。おお、そうするとガンダムは200年続くぞと言う宣言なのでしょうか(笑)。
 いずれにせよ、世界の歪みとはすなわち我々のガンダムを求める心なのだとすれば、ソレスタルビーイングはその心を討つことが目的なわけですね。なるほど、なるほど、そう考えると、なんだかいろいろ納得がいきました(笑)。


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