『キャプテン・フューチャー全集11 鉄の神経お許しを 他全短編』エドモンド・ハミルトン
■本日の読書:『キャプテン・フューチャー全集11 鉄の神経お許しを 他全短編』エドモンド・ハミルトン
これまで、キャプテン・フューチャー・ハンドブック(SFマガジン別冊。たいへん稀少。うかつにも私は捨てたので長らく友人のhiroクンから借りている。今度返すからね)ぐらいでしか読むことのできなかった短編が集まった、まことにめでたい1冊。
めでたいので短編ひとつずつ紹介。
『キャプテン・フューチャーの帰還』
太陽系人類の先祖であるデネブ人の秘密を追うカーティスが、アンドロメダ星雲にある遺跡で凍結されていた異種族ライニッドの一柱を発見する。彼はこれをよみがえらせて失われた知識を得ようとするのだが……というもの。
このライニッドという種族はそのままデモンベインあたりで邪神かその眷属として登場してもおかしくないやつである。人類の科学では滅ぼすこと能わず、っつうので封印されているところといい、なんともRPG向きの敵なのだ。
『太陽の子供たち』
身体をガスに変換して太陽の中で生存する生命となった友人を追って、自らも太陽に飛び込んだカーティスはその生活が素晴らしいものであると知り……というもの。
『サンダイバー』(デイヴィッド・プリン)と『都市』(クリフォード・D・シマック)を足したようなお話。
他の短編とも共通する、ビターな味わいが実にグッド。
『衛星タイタンの〈歌い鳥〉』
タイタンの原住民と鉱夫との争いを仲介できる人物が殺される。だが脳をのぞく肉体はほぼ無傷であることから、『生きている脳』サイモン教授の脳を移植して事態を沈静化させようとする……というもの。
『太陽の子供たち』とは逆に、失われた肉体を再び取り戻したサイモンが、肉体に伴う情動に揺さぶられる。サイモンが肉体を借りている死んだ男の息子が登場。すでに父は死んでいると知らぬまま、父を守るために凶漢の攻撃を受けて死ぬくだりは涙なくしては読めない。
『鉄の神経お許しを』
自分が神経症になったと思いこむグラッグが、治療も兼ねて連絡の途絶えた衛星鉱山にゆくと、そこの自動機械鉱夫たちは知性を獲得して人間らしく仕事をボイコットしていた……というもの。
人間にコンプレックスを持つグラッグが、精神科医に薬の処方を要求したりするバカバカしさが、後半になると知性を獲得した機械どもの仕事をさぼるバカバカしさと重なる。
グラッグの一人称なので彼は己の愚かさを認識していないが、読者にはグラッグも、自動鉱夫機械(マック)も同じ愚かさをもっていることがわかるので、これまたホロ苦い感じである。
『忘れじの月』
かつての喜ばしい記憶を再現させる麻薬〈リフレイン〉の中毒患者が……って、それは『コードギアス』の第9話か。
正しくは〈第二の生〉、その名も〈セカンド・ライフ〉である。本当。
老人たちに蔓延する〈第二の生〉の調査をしていたエズラ・ガーニーもまた、その虜になってしまい……というもの。
『衛星タイタンの〈歌い鳥〉』のバリエーションのひとつ。やっぱり苦い。
『もう、地球人では……』
小惑星帯で乗っていたロケットが遭難し、仮死状態で漂流していた宇宙飛行士がキャプテン・フューチャーらによって蘇生される。だが彼は宇宙時代の初期、1991年に遭難した過去の男だった。彼にとり地球はもはや見知らぬ世界で……というもの。
ウラシマ効果といえば宇宙SFには付きものである。光速に近い速度の宇宙飛行により、時間の流れが遅くなって何年も未来へ飛ばされるというやつだ。自分の故郷も家族も恋人もすべて過去に消え、孤独な未来に取り残されるという点がドラマにぴったりなので女性漫画家(萩尾望都、竹宮恵子ら)によって傑作がいくつも描かれている。
そのバリエーションである本作は他の短編同様にいかにも苦そうな設定なのだが、あにはからんや、実はけっこう最後でイイ具合に未来へとつながるお話である。
『〈物質生成の場〉の秘密』
かつて水星の危機を救う事件でキャプテン・フューチャーが発見した〈物質生成の場〉。無から有を生み出すこの究極の秘密を探ろうとした若い科学者を追って、カーティスは再び宇宙の中心へと向かう……というもの。
全短編集の中で私がもっとも好む一編。

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