『ドルアーガの塔』にみるダンジョン攻略法:その3 食糧

 アニメ『ドルアーガの塔』をダシに、RPG的(TRPG的)にあれこれ馬鹿話をするよもやま講座その3回。
 今回はダンジョン内での食糧である。

 ダンジョン攻略において、食糧の調達はたいへん大事だ。
 この問題については、以前、『RPG今昔物語』で書いたことがあるのでご紹介しよう。  RPG今昔物語/食う である。

 とにかく腹が減った人間は危険だ。ケモノの行動原理とヒトの狡猾さを合わせもつ狩猟採集型ホモ・サピエンス・サピエンスは、自然界でも最優秀のハンターなのである。普段は社会道徳だの常識だの倫理だのがあるが、腹が減ればそんなものは消えてなくなるのである。
 仲間に食われて終わりではバッドエンドにも程があるというものだ。

 そういう悲しいひぐらし風結末を迎えないためにも、ダンジョン攻略に食糧は必須なのだ。
 では、何を、どれだけダンジョンに持ち込めばいいのだろうか?

 我々が日常に口にするものの中で、これがないとてきめんに生命の危機となるのが、水である。成人は調理に含まれるものも含めて一日に約4リットルの水を必要とする。そして水はたいへん重い。4リットルの水は4キログラムの重量となる。10日分では40キログラムだ。これをダンジョンに持ち込んでは、他に何も運べないことになる。

 それゆえに、水については現地調達が望ましい。
 ダンジョンの多くは地下に潜るタイプであるから、地下水が湧出することも多い。地下水湖などにもしばしば巡り会う。
 けれど、手に入る水が毒――ではないにしても、汚水であることは覚悟した方がいい。だからダンジョンに入る時には最低でも魔法ないし薬品を使って浄水する準備はしておいた方がいいだろう。
 また、水が手に入らなかった時のことを考えて最低限の飲み水は絶対に手放さないこと。水筒一本分(1リットル)は各自で持っておくのだ。
 それと、水との関連でいえば塩味も忘れないように。山登りもそうだが、ダンジョンでは戦闘などで汗をかくことが多い。汗と一緒に塩分がなくなると人間は無力化する。岩塩のたぐいで良いので、一緒に持ち込むように。梅干しのようなものがあれば、それでも良い。

 そして水さえ手に入るのなら、ダンジョンの食糧問題はほぼ解決する。ダンジョンに入る前に宿屋で弁当を作ってもらって中に入り、弁当食べたら帰ればいいのである。ウィザードリィタイプの日帰りダンジョンであれば、おおむねこの方法で良いはずだ。

 それでも何かのトラブルに巻き込まれて帰れなくなった時のことを考えて、非常食は持ち込むべきではある。
 この非常食は日持ちのするもので、軽量で高カロリーであることが望ましい。チョコレートや飴のような甘味があればいいが、このあたりはRPG世界によって手に入るものは違ってくる。まあ、どこの世界でも干し肉は手に入るだろうから、いざとなればそいつをかじることだ。

 しかしこれが日帰りではないとなると、宿屋の女の子が作ってくれたおにぎりだけでは足りないことになる。
 ダンジョンの中で数日、あるいは数週間を過ごすことを考えるのならば、その間の食事も等閑に付すわけにはいかないだろう。

 といっても食料はあればいいというものではない。たとえば食料ばかり20キログラムも30キログラムも運んでいたのでは、ダンジョン攻略に必要な他の装備を運び込めない。長期間の行動が必要ならば『ドルアーガの塔』第四話でアーメイが言ったように、食材の現地調達も考えねばならない。

 現地調達ができないが長期間ダンジョン内にいる必要がある場合は、輸送手段の確保をまず考える。クーリーを雇う、あるいは資材運搬用の畜獣や魔法のアイテムを使い、食料などの物資を運ぶのだ。

 この時に、食料と並んで重要なのが燃料である。

 米は炊飯する。小麦粉はパンにする。いずれも火を用いた調理が必要で、火を起こすには燃料がいる。だが、ダンジョンの中ともなれば日光が不足しているので薪になる植物はあまり生育していない。ダンジョンの中に石炭のようなものがあるかもしれないが、例外にすぎるだろう。となれば、調理のためだけにも燃料が必要だ。アルコール燃料、それも山登りやキャンプで使う固形アルコール燃料があれば最適だが、なければ薪の山をクーリーに運ばせよう。
 RPG世界によっては、魔法のアイテムとして固形燃料があるかもしれない。ただ、うかつにルールブックのアイテム欄に軽量でよく燃える燃料を入れておくと、プレイヤーはそれをダンジョン内の食生活を豊かにするためではなく、モンスターを焼き討ちするのに使いたがるのでデザイナーは注意が必要だ。

 運搬手段があり、燃料があれば、食材についてはさほど心配はいらない。ようは必要なカロリーと栄養素を満たす食い物を持ち込めばいいのである。が、あえてここで私としては「美味いもの」を選ぶようにお薦めしたい。
 ダンジョン攻略というのは危険と背中合わせである。ストレスは溜まるし、疲労も怪我も緊張も茶飯事だ。ストレスをそのままにしておいては、注意力や意志力の低下につながる。
 かといって、アルコールのたぐいはよろしくない。ストレスを解消するためにダンジョン内で酔っぱらっているようでは、むしろその方が危険だ。
 ならば嗜好品である。美味い物を食えば、幸せになれる。これは生物として当然の反応だ。ストレスや緊張を解消でき、生残能力も向上する。保存食にもなる甘味料はその点で必需品といっていい。
 あるいは香辛料。普段の生活では高くてあまり使えない胡椒をふんだんにぶちこんだ肉料理は、ダンジョンの中でこそ食べるべきである。明日の冒険の活力にもなるし、ダンジョンで一攫千金を目指す欲望にも火をつける。欲望というものはバランスさえ逸しなければ、仕事においてプラスに作用するものだ。
 食材というわけではないが、煙草や珈琲なども良いだろう。これらは酒と違って能力の低下をもたらさないからだ。

 ここまで読んで気づいた方もいるだろう。
 ダンジョンの食材に求められるものは軍用の糧食=ミリ飯によく似ているのだ。生命の危険があるという点で、戦場とダンジョンは同じ。だからこそ、兵隊の食事とダンジョン内の登頂者/冒険者の食事に求められるものも同じなのだ。
 缶詰などのレーションはさすがにRPG世界の多くでは手に入らないが(瓶詰めならばそれなりに)戦場で缶詰を一般に食うようになったのも、20世紀になってからの話だ。

 その点でも冒険者に近い、昔の日本帝国陸軍の食について書かれた本を下に紹介しておく。
 いずれも良い本なので、興味のある方はぜひ目を通していただきたい。

激戦場 皇軍うらばなし (藤田 昌雄)
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帝国陸軍 戦場の衣食住
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