『馬車馬戦記:BOMBER ANGEL』(速水螺旋人)の続編を考えてみた……
原子力潜水艦やら、原子力空母やらの原子力時代が到来した1950~60年代。
原子力エンジンで永久に空を飛び続ける原子力爆撃機は人類の夢であった。もっともコレがどうにもこうにも悪夢であることが判明するまで時間はかからなかったが。何せあなた、剥き出しの炉心に圧縮空気ぶちこんで加熱して噴射するという放射能だだもれなジェットエンジンとかが考えられていたのですよっ?!
さて、『馬車馬戦記:BOMBER ANGEL』は何かの間違いでそんな機体を実用化してしまった架空世界のお話である。無着陸ミサイルプラットフォーム『伝統と自由』号は、出撃から20年間、ひたすら飛び続けたという、悪夢を通り越して何かの呪いのような巨人機である。
新任の機長である男爵ウズマキ中佐が一年の勤務で中に入ってみると子供がいた。14年前に空で生まれて(美人の士官がいたのである)それからずっと空で暮らしてきたというリュールカちゃんだ。なぜ彼女がこの機体にいるかというと、もちろん存在しないはずの子供を下ろすには役所的にアレだからだが、もうひとつ。
すでに20年間空を飛び続けてきた『伝統と自由』号はすでにあちこちガタガタでしょっちゅうおかしくなっているのだ。で、その時に何とかできるのが機で生まれ育ったリュールカちゃんだけなので、下ろそうにも下ろせないという……
残念ながら、速水さんの漫画ではココまでである。
そこで続編を脳内で妄想してみた。ここにその予告編を紹介したい。
ちゃちゃらちゃーちゃーちゃーらーちゃーん。
(がうんがうんがうん、と空を飛ぶ『伝統と自由』号)
(そこに近付いてくる大型の輸送機)
「補給が来たぞー」
「やれやれ、久しぶりに新鮮な野菜が食える」
(盛り上がる機内で、機長が先任にこそこそと尋ねる)
「おい、例のやつは大丈夫だろうな?」
「リュールカの誕生パーティ用のグッズですか? 任せてください。補給廠にはツテもコネもありますからね」
(そこへ天真爛漫な笑みを浮かべてリュールカ登場)
「あれ、機長さん、どうしたのー?」
「な、なんでもないぞっ」
(ところが、輸送機の中にはテロリストが乗っていた! たちまち制圧される『伝統と自由』号)
「無駄だ、この機の核兵器は中央からの指令書がなければ起爆しない」
「違うな。我々が欲しいのは、この機体だよ。こいつを地上に落とせば、世界のどこであろうと大惨事だ」
(機内を知り尽くしたリュールカの手助けで何とかテロリストから逃れた機長。ふたりでテロリストから『伝統と自由』号を取り戻すために戦う)
「ダメだ。補給品の中に武器はない……当たり前の話だがな」
「機長さん、これは?」
「あ、そいつはパーティー用グッズだ」
(勇気と機転で、テロリストを撃退する)
『覚えておくがいい! この機体が空を飛び続ける限り、放射能の恐怖はなくなりはしない! この機体はな、恐怖の象徴なんだっ!』
「リュールカ、こんなところにいたのか」
「あ、機長さん……」
「ひとりになりたいって事もあるだろうが、ここは寒いからな。女の子が長くいちゃいけない」
「この子は、空を飛んでいちゃ、いけないのかな? 私は、空にいちゃ、いけないのかな?」
「……」
(やがて、機長の1年の任期が終わる)
「さようなら、機長さん」
「リュールカ、その、何だ。約束はできないし、うまくいくかどうか分からないが……その……また……会おう」
(リュールカがにっこりと笑い、機長に抱きついてキスをする)
(それから半年。『伝統と自由』号に最後の時がくる)
「だめだっ、1号炉も緊急停止!」
「何とかしてくれリュールカっ!」
「(ふるふる)……もう、ダメ」
「わ、私は逃げるぞっ! こんなところで死にたくないっ!」
「あんた機長だろうがっ……くそ、同じ貴族でも前のウズマキ中佐とはえらい違いだ」
「いいの。みんなも、機体から脱出して」
(誰もいなくなった機体の中、リュールカはひとり操縦室で膝を抱える)
「私ぐらい、一緒にいてもいいよね……」
(がくん、と衝撃が『伝統と自由』号を揺らし、少しずつ、浮力が得られるようになる)
「え? 何が……白い、壁? じゃなくて、飛行船? でも、燃料棒交換用の飛行船よりずっと大きい……」
『おーい、リュールカ。ちょっとの間でいいから、機を安定させてくれー』
「機長さん!」
(熱核気球――超巨大な、空の大要塞「陰山」。空を飛びながら原子炉の燃料棒交換などを行うための作業用巨大飛行船をアップグレードしたものだ。ただし、現在は原子炉を搭載していないためそれほど長時間の浮力はない)
(『伝統と自由』号の最後の大作戦。原子炉を取り外し、気球へと移す。歴代の『伝統と自由』号の乗員たちが総出で突貫工事を行い、無事に原子炉と核兵器の取り外しが完了する)
(原子炉と核兵器を取り外した『伝統と自由』号は砂漠地帯に墜落する)
「役所的には、この原子炉を使ってこの気球を熱核気球として、永遠に飛ばすという形で予算をとったんだが……ま、無理だな」
「無理だよ、もう。この子、よくがんばったもの。休ませてあげようよ」
(気球はゆっくりと地上へと帰還)
「私、どうなるのかな?」
「私の領地に来ればいい。領地といっても城ひとつ、町ひとつの小さなものだがね。父と母にも話はつけてある(養子の)」
「本当にっ?!」
「本当さ。それに農道に手を加えた飛行場もある。農薬散布なんかの仕事をする複葉機もね。空も、飛べるさ」
「ありがとう! 本当は機長さんの子供、私ひとりで育てるつもりだったの! すごくうれしい!」
「……は?」
(ずずい、と割り込んでくる乗員一同)
「ちょっと機長、あいや元機長。こいつはどういうことですかね」「あんたまさか、こんな子供に」「リュールカは俺たち全員の娘みたいなもんだ。コトとシダイによっちゃ、このまま外に放り出しますぜ」
「ま、待てっ、私にも何がなんだか……」
(真っ赤な夕焼け空の下、巨大飛行船が飛んでいく)
「え? キスしたら子供ができるんじゃなかったの?」
【おしまい】

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