『エートレインで行こう!』プロット後半
『エートレインで行こう!』プロット後半
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3.
屋敷はまたもや停電した。あの電気屋を呼びたくなくて、俊はハンスに詰め寄った。しかしハンスは電気工事などできはしない。屋敷の守護霊のくせに役に立たないなぁと俊がぼやいたら、ハンスはいきなり怒りだして、鼻息も荒く屋敷の二階に駆けあがっていった。俊がついていくと、ありったけの蔵書の中から、英語の本を引っ張り出して手当たり次第に読んでいたが、やがてあきらめて泣きはじめた。
きついことを言ってごめんと俊は謝り、ハンスに電気屋を呼ぶように言う。電気屋は、今日はこれないとの返事だった。こないだの事件で裕子さんに逆恨みをしているのか。電気が使えなければ井戸水も汲み上げられない。一週間不自由な思いをしたのちに、やっと電気屋は現れた。
「こうしょっちゅう漏電するようなら、一回屋敷中の配線を見直したほうがいい。火事になっても責任持てん。取りあえず今日は、ブレーカーを感度のいい新しいものに取り替えておく。請求書はあとで送るからと、裕子さんにそう伝えとけ、坊主」
またそこいらじゅうを散らかして、電気屋は帰っていった。
「よし、僕、やっぱり学校へ行く」
意を決して俊は言った。
「学校なんか行って、なにを勉強するの?」
とは、裕子さん。
「電気の勉強。漏電くらい自分で直せるようにしないと、裕子さんはずっとあの電気屋につきまとわれるだろ」
「わたしは平気よ。俊くんはそんなこと考えなくても大丈夫」
「なんで? 僕、勉強きらいだけどさ、あんな大人にいじめられたりしないように、ちゃんと学校で勉強したいんだ。行ってもいいでしょ、ちゃんと勉強するからさ!」
生まれてはじめて、俊は自分のために学びたいという気持ちになったのだ。だけど裕子さんは悲しそうに首を振った。
「俊くんは、学校には行けないの」
そう言うと、俊の前から立ち去っていった。
なんでだ、なんで僕は学校へ行けないんだ……。
そこで思いだしたのが、リンの言葉。
『この技を一度使えば、あんたはもう、普通の人間には戻れない』
そのときリンの仲間のあずさという少女が差し入れを持ってきた。
「職場でもらった。大豆と味付け海苔。裕子さんに渡しといて」
「あのさ、職場って、どんな職場なの?」
「え? そんなのいろいろよ。コンビニとか食堂とかパチンコ屋、港で働いてる子もいるし」
港。こないだタコを持ってきた子か。
「普通、僕らの年頃の子供は、おおっぴらには働けないだろ。なんでみんな学校いかないのさ」
「うるさいわね。この町は、そういうふうな仕組みになってんだから。そんなこと了解済みで鰐淵屋敷にきたんじゃないの?」
「なにも聞いてなかったよ」
「うそよ。裕子さんに会ったとき、最初になんて言われた?」
「なんてって……」
よく思いだしてみる。両親が失踪して途方に暮れていた俊は、役所の人や債権者だと名乗る人達から逃げだして、切符も買わずにちょうどやってきた電車に飛び乗った。そこで出会ったのが裕子さんだ。
──私の世界にくる?
ああ、たしか、そう言ってた。
「でしょ。ここは裕子さんの世界なんだから。前住んでた世界と違うにきまってるわよ。じゃね、またくるからって裕子さんに伝えといてよ」
「うん……」
「あ、これ」
あずさはポケットからしわくちゃの封筒を取り出すと、
「今月分って言っといて」
「お金?」
「そうよ。ちゃんと裕子さんに渡してね。しっかりしなさい、あんた男でしょ」
男でしょって言われたって。
俊は鏡の前に立った。
僕って、本当に人間じゃなくなったの?
鏡に映る自分の姿は、前となんら変わりはない。試しに息を止めてみる。
すーっと姿が薄くなり……。
自分が見えなくなってしまう、ということの恐怖。
僕はどうなっちゃったんだろう。
息が苦しいのがこらえられないんじゃなく、自分の姿を直視することが耐えられなくなって、俊は大きく深呼吸した。鏡の中には、じょじょに質感を取り戻した自分の姿が戻ってきたけれど、それは青い顔をした──軽はずみだった少年。
覚悟はよくて? とリンは言ったけど、俊はあのとき、こんなふうになるなんて思いもよらなかった。
駅に。
電車に乗って、もといた町に戻るんだ。
俊は走りだしていた。
電車に乗って前住んでいた町に戻れば、たとえ親兄弟がいなくったって、もとの生活に戻れるにきまっている。
僕がこんなふうになったのは、この町がおかしいからだ。あの屋敷が狂ってるからなんだ……。
すっかり葉っぱだらけになった桜の木の前を横切り、駅に入っていこうとする俊の姿をリンが見とがめた。
「俊!」
「離せ」
「あんた電車に乗るつもり?」
「前住んでた家に帰るんだ」
「なに言ってんの。そんなことできっこないって、あんたには薄々わかってるはずよ」
「うるさい。僕は学校へ行く。友達と遊んでごはん食べてゲームして、朝起きたら、朝起きたら」
母さんに、おはようって、言うんだ。
俊は母親に、おはようと言ったことがない。
涙が出そうになって、俊はリンを突き飛ばした。よろけながらリンは。
「あんたお金持ってんの! 切符買わなきゃ捕まっちゃう」
俊に小銭を握らせた。
心配そうに見つめてくるリンの視線が煩わしい。
そうして電車に乗った俊は、自分の乗った電車が──。
永遠に、よその駅には着かないことに気づいた。
車窓からは、たしかに違う景色が見えるのに、ホームに降り、階段を、登って下って、改札の向こうに拡がる景色は。
あの日リンが立っていた、満開の桜の花。
『綺麗でしょう。この町のシンボルなのよ』
裕子さんの声が耳もとでこだまする。
俊はポッケから頭痛薬を取りだした。かり、ぽり、と薬を囓る。
そのまま気を失ってしまった。
【ここまで本文にして70ページくらい】
4.
鰐淵屋敷。
「ガキ」
というリンの罵倒で目覚めた俊は、なにを思ったのかイタタタタと頭をかかえながら二階の部屋へと引きこもった。あの日のハンスと同じように、手当たり次第に本を読む。そこには俊の知らなかった世界がたくさんあった。今までマンガ以外ほとんど本など読んだことのない俊は、知らない文字を辞書で引き、知らないことを図鑑で調べてむさぼるように本を読み続けた。
この世界のことも、何かの本に書いてあるかもしれない──。
二日後、俊は部屋から出た。
リンが待っていた。
「なにかわかった?」
「わかんないけど、いろいろわかった」
相変わらずわけわかんないし。と、リンはぼやく。
「で、実際あんたには、なにができんの」
「さあ」
今はまだ、できることは少ないけれど、学校に行けないなら本を読めばいいって裕子さんもたしか言ってた。いろんなことを知ってれば、いつかなにかの役に立つ。もしかしたら、この世界を変えることだって、できるかもしれない。
「夢みたいなこと言ってないで、なにか食べるもの作ろうよ」
「んー、なにか食料あったっけか」
「あずさちゃんが置いてった大豆があったっしょ。あれであんこでも作ろうか」
「それは小豆。大豆といえば普通は豆腐とか、煮豆とか」
「へー。じゃあ、お豆腐食べたいお豆腐」
「この屋敷の水は井戸水だから、きっとおいしいのができると思うけど。肝心の、にがりがないな」
「そうなの?」
「そうなの」
「にがりって、高いの?」
「知らない。でもにがりを買うくらいなら、スーパーで安いお豆腐買ったほうがいいような気がする」
「煮豆だったらこの屋敷にある材料で作れる?」
「多分」
「じゃあ煮豆を作ろう。あずさちゃんにも持っていってあげるのだ!」
しかし煮豆を作るには、一晩水につけておかなければならない。またまた三日くらいなにも食べてないリンは、とてもそこまで待てなかった。
「もっとこう、すぐに食べられるものはないのかなあ」
「ハンスの畑に行ってみようか。もしかしたら、サツマイモが一つくらいはできてるかもしれない」
そうして二人は畑に行った。
葉っぱはずいぶん育っていたが。
「いも、ないね」
「そうだね」
「わたし、帰るね」
「でも、腹へってんだろ。待っててよ、もうすぐ裕子さんが起きるから。なにか作ってくれるかもしれないし」
「ううん。裕子さんに余計な心配かけたくないし。大丈夫。どこかでなにか恵んでもらう」
リンは行ってしまったけれど、俊は、じっとしていられなかった。
「ハンス、ハンス!」
「うう」
「川! 川で魚を穫ってくる。このあたりに魚のいそうな川はない?」
「ううううう」
「なんだ、この屋敷のこと以外はなにも知らないんだな。じゃあ一緒に行って手伝ってよ」
「ううっ! ううっ!」
ハンスは激しく両手を振って、なにかジェスチャーで訴えかけてくる。
「……もしかして、ハンスはこの屋敷から一歩も外に出られないの?」
「うう。うう」
そうだったのか。
まあ、この屋敷の守護霊というからには、ほいほい外出もできまいが。
「じゃ、僕一人で行ってくるよ。裕子さんにはそう言っといてね!」
「うううううーっ」
ハンスは俊を止めたそうだったが、俊はそのへんにある農耕具を手に、いさんで川を探しにいった。裕子さんとこの町にくる途中、電車の中から大きな川が見えたんだ。菜の花が真っ黄色に咲いていた、あの川。
そう考えたとき、
「あれ、電車では戻れなくても、歩いていけば前住んでいた町にたどり着くかもしれない」
と思い至った。
でも今の俊は、リンに魚を食べさせてやりたいばかりだ。
結局俊は、日もとっぷりと暮れたころに川を見つけた。
「だめだ、真っ暗だ」
あきらめて、家路につこうとしたときだった。
「た、助けてっ、誰か!」
人間の女の声だ。人間の、と分類してしまった自分がちょっと悲しいが、今はそんなことにかかずらわってるときではない。なにごとかと俊は急いだ。
「やめて! 助けて! 誰、誰なの? なにも見えない!」
通勤帰りらしい大人の女性が……。
あずさたちだ。
姿を消して、女性のバッグを狙っている。
あいつら、あんなことやって金を稼いでいたのか。
「やめろ」
「助けて、きみ、誰か大人の人を呼んできて!」
「やめろったらやめろーっ!」
俊の叫びにあずさらは犯行の手を止め、女性はわけがわからないといった顔つきで逃げていった。こんなことが何度か続けば、絶対に鰐淵屋敷が疑われる。あずさたちはあっという間にちりぢりに姿を消した。俊は眠れない夜を過ごし、翌朝、駅に立っているリンに会いにいった。
「僕は許さない」
「んなこと言っても、わたしたちだって生きていくため必死なんだもん」
「僕は裏切られた」
「できごころだってば。わたしからもよく言い聞かせとくから」
「僕は、僕は……」
俊は無力だ。
5.
屋敷内の大広間。俊が沈んでいるので、おでかけ前の裕子さんが声をかけてきた。
「歌ってあげようか」
「え」
「一緒に歌わない? 歌ってれば、いやなことなんて全部ふっとんじゃうわよ」
気遣ってくれるのはわかるけど、ごめん裕子さん、今はとてもそんなお気楽な気分になれない。
「わたし、ね。孤児の女の子ばっかり集めたのは、みんなでコーラスしたかったからなの。でも、この屋敷にきてからは、みんなわたしから離れていっちゃった」
「それは、裕子さんが一日も早く借金を返せるようにと……」
「私が悪いのはわかってる」
「……」
「でも私には、歌うことしかできないの」
裕子さんは、綺麗な声で歌いはじめた。なんていう曲だろう。このまえ『A-train』で聞いた曲とは全然感じが違っている。あのときは大人っぽい曲だった。今歌っているのは、透きとおった水がサラサラ流れていくような、やさしくて懐かしい感じのする曲。
俊は涙が止まらなくなって、いつの間にか、裕子さんの胸の中で、頭をなでてもらっていた。
「ギャーッス!」
いつか聞いたカラスの叫びのような声をあげ、リンが窓から飛びこんできた。
「卑怯者!」
「へ?」
「裕子さんはわたしたちみんなのアイドルよ! あんたひとりそんないい思いするなんてゆ、ゆ、ゆるゆる……」
「許すとき、許せば」
「あほーっ!」
「待って待って、まあみんな」
裕子さんが立ちあがった。
見ると窓辺には、鰐淵チルドレンが全員集合している。
「みんながそろうなんて、なんて久しぶりなの」
本当にうれしそうな裕子さん。
「さあ、なにを突っ立ているの? みんなこっちにいらっしゃいよ。久しぶりにみんなで歌おう」
裕子さんがピアノをひく。最初はもじもじしていた少女達は、やがて勘を取り戻し、きれいなコーラスを奏ではじめた。
「ねえ」
歌い終わった裕子さんが言う。
「みんな一緒に暮らしましょうよ」
一瞬しーんと部屋が鳴る。
「食べるくらい、どうにかなるわよ」
裕子さんのほがらかな声に、誰かがくすんと鼻を鳴らすと、いっせいに少女達が泣きはじめた。立ったまま、おいおいと泣く少女達を見て、俊のセンチメンタルは、すっかり醒めてしまった。
食べるくらいもどうにもならなかったから、少女らは屋敷を離れていったのだ。
そのとき。
「裕子さん!」
大きな声をあげながら、バタン! と電気屋がドアをあけた。ちょっと遅れてハンスが息せき切って入ってくる。二人はここにくるまでに、相当もめた模様だ。
「まあ電気屋さん、どうなさったの、その格好」
裕子さんはマイペースだ。
「どうなさったのじゃないですよ! よくも私を出入り禁止にしてくれたな!」
「なんのこと?」
「な、なんのことって……おい、お前、ちょっと出ていけ!」
電気屋は俊のほうを見て言った。子供に聞かせたくない話なのだろうが、なんで僕だけ? と思ったら、少女たちは部屋の隅にひとかたまりになって立っている。あいつら、電気屋が入ってきたとたんに姿を消したんだ。
「わかったよ」
わざとつまらなそうに言って、一旦俊も外に出る。そのあとハンスも、裕子さんに言われてしぶしぶ出てきた。ハンスがいなくなるのを待ち、俊は姿を消して部屋に戻る。
電気屋にしてみれば、部屋には裕子さんと二人きり。
「ひどいじゃないか裕子さん」
「本当になんのことかわからないのよ電気屋さん」
「電気屋さんと呼ぶのはやめてくれないか。私には流【ながれ】という名前がある」
「じゃあ流さん」
「なんで『A-train』を出入り禁止にしたんだ」
「そんなこと、私は聞いてません」
「とぼけんな!」
「まあ」
「あ、いや、つい興奮して、すみません。昨夜店に行ったらボーイが入れてくれなかった。問い詰めたら、つけが溜まってるから入店させないと」
「じゃあ、料金をお支払いになればいいんですわ流さん」
「また、そんなとぼけたことを。借金が完済するまで利息の代わりに、私の入店料は裕子さんのギャラから支払うと、裕子さん、あんたがそう言ったんだ。まさか今になって忘れたわけじゃないだろう」
「ああ、そのことか」
裕子さんはけろっとしている。
「それ、もうやめたの。その代わり、ちゃんと利息はお支払いするわ」
「なにっ!」
「ごめんなさい。言ってなかったでしたっけ」
裕子さんは天然なんだろうけど──もしかしたらボケているのかもしれないし、本当に正体のつかめない人だ。あぜんとしている電気屋を見て、少女達は笑いをこらえるのが大変そうだ。
「……冗談じゃない。俺に恥をかかせやがって」
電気屋が豹変した。もともと下品なのはわかっていたけど、こういう暴力系下品が入っているとは思わなかった。
「俺はあんたのために一生懸命尽くしてるつもりだ! なんの恨みがあって、俺のことを邪魔者にする!」
「電気屋さん!」
「流と呼べ!」
やばい。電気屋が裕子さんを『手込め』にしようとしはじめた。
パッコーン!
軽快な音がして、電気屋が「いたた」と両手で頭を押さえる。
「誰だ!」
電気屋が叫ぶと、片手にフランスパンを持ったあずさが、もう片方の手をあげた。もし姿を消してなかったら、「はい、私」とで言いそうな顔だ。それにしてももったいない。食べ物で、あんな男の頭を殴るなんて。少なくとも僕はあのパンを食べないぞと、俊は固く心に誓った。
「フランスパンが、宙を浮いてる?」
その言葉に、裕子さんが青くなった。子供達が姿を消していることがバレる!
「電気屋さん、堪忍!」
なにを思ったのか裕子さんが叫んだとき。
バチン!
という音がして、部屋は真っ暗闇に包まれた。
停電だ。漏電だ。
慣れてない女の子たちはキャーキャー騒ぐ。というより面白がって騒いでるっぽいが。
「なんなんだ、なんなんだ、幽霊屋敷かこの家は!」
電気屋の恐怖に満ちた声がした。
キャーキャーキャーキャーキャー。
うわあああぁぁぁ……。
断末魔のような電気屋の声が、事態の収束を闇夜に告げた。
俊は蝋燭の火をともし、地下に降りていく。
「ハンス……」
ブレーカーを落としたのはハンスだった。
「どうする? こいつ」
「道端に転がしといてもいいけど、これ以上恥かかせたら仕返しが恐いしね」
協議の結果、電気屋は庭の物置小屋に放置することが決定された。
翌朝、俊は、ハンスの雄叫びに目を覚ました。
「うおおおおおーっ!」
声は畑のほうから聞こえてくる。昨夜は屋敷に泊まった少女たちも、みんな出てきた。出てきてないのは地下室で眠っている裕子さんだけだ。
なんと楽しみにしていたサツマイモ畑が見るも無惨に荒らされていたのだ。まあ、犯人は電気屋にきまっているけど。小屋の中はもぬけのから。屋敷の外に出ることができないハンスは、もどかしさからか屋敷のまわりを叫びながらぐるぐる走りまわった。
「なにやってんのかね」
「あいつ日本語しゃべらないからなー」
女の子たちが腕組みする。
「しゃべらない? しゃべれないんじゃなくて?」
俊の問いに、
「そのほうが、門番としてはなにかと都合がいいんでしょ」
との合理的なお答え。
そーか、そーだったのか。
ハンスめ。
「さ。わたしたちは仕事仕事」
少女たちが朝日に向かって背伸びする。リンだけがただ一人、お腹がすいたとぐったりしていた。
あずさがそんなリンの背中をバシンと叩く。
「エートレインよ、エートレイン!」
「うーん。わかったわよー、もー」
すきっぱらをかかえてリンも体に気合いを入れる。
「じゃ、あとは任せたから」
「ちょっと待てよ。みんな、ここに戻ってくるんじゃなかったの?」
「まさか」
「あんたがいるから、べつにいいでしょ。これからは、利息分も余計に稼がないとなんないんだし」
「なんてこった」
「わたしがいないと寂しいの?」
リンが抜け駆けてくる。そう言われると、俊もそんな気になってくる。やばい。なんか知らないけど顔が熱くなってきた。
「バッカじゃない。早く行けよ」
もう、ほかの少女達はいなくなってる。
「ふふん。すぐにまた、きてあげるわよ」
「あ、待って」
「なによ」
「エートレインって、どういう意味なの」
俊が聞くと、リンは片手でVサインを作った。
「わたしたちの合い言葉。楽園へ行こうっていう意味だよ!」
楽園。
この世界にそんなものが存在するのか。
だけど俊は思いだした。
電車の中で裕子さんと出会ったとき。
──私の世界にくる?
俊がうなずいたあと、
──よーし、じゃあ目を閉じて。俊くん。
そのあと裕子さんが言ったんだ。
「エートレインで、行こう!」
***おわり***
【ここまでプロットで60ページ。本文にして100ページなるか】
これは果たしてラブコメと言えるのだろうかというのが私の一番の心配です。この文をもとにして、一回箱書きを起こしてみたら、足りないところなど見えてくるかもしれません。けっこう強引な世界のつくりかたをしているので、不自然とか違和感とか全然読めないとか、読めたとか、そういう感想あれば、是非是非コメントお願いします。
読了感謝。
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