GA文庫テーマ大賞用プロット(の荒書き)佐藤さん版

 春は始まりの季節。
 大学生になった初日から、誠人は寝坊で遅刻しそうになっていた。
 慌てて駅の階段を駆け下りる誠人の上を、フッと黒い影が覆った。振り返った誠人の目に映ったのは、ぱんつだった。
 ブラックアウト。

 誠人は意識を取り戻す中、なんだか胸の上に重いものが載っていることに気づいた。
 目を開けると、倒れた誠人の胸の中には、なんと小柄な女の子が横たわっていた。
 唖然としている誠人をよそに、女の子はひとりでに目を覚まし立ち上がると、誠人の顔を見た。
 無表情に誠人の顔を見つめてから、何も言わずに立ち去ってしまう女の子。
 一瞬、女の子の髪のひと房が、ゆらゆらっと動いた。気がした。
 取り残された誠人、足元には女の子が落としていった物とおもわれる、学生証があった。
 女の子の名前は佐藤こまきという。

 初日からアクシデントに見舞われた誠人が一日を終え、大学を出ようと歩いていると、出入り口の門の近くに大きな人だかりが出来ていた。
 何事かと誠人が見に行ってみると、人垣の中心には今朝の少女、佐藤さんがいた。
 彼女の手には二本の巨大なダウジングが握られていた。ダウジングにまかせてふらふらと動く佐藤さん、それに合わせて割れる人垣。
 佐藤さんはだんだんと誠人のほうへと近寄ってくる、そしてついに誠人の目の前で立ち止まった。
 激しく動くダウジングを見ながら、顔を上げて誠人の顔を見る佐藤さん。
 再びダウジングに目を落としてから、ぐるぐると誠人の周りを何周かしてから、ふたたび誠人の目の前へ。
「……これか?」
 と誠人が学生証を見せると、佐藤さんは何も言わずに。ぱっ、とそれを取ろうとする。
 寸前のところで学生証を高く上げる誠人。
「……せめてありがとうくらい言えってば」
 誠人の不平も気にせずに、佐藤さんは一歩後ずさると、勢いをつけて誠人に飛びついた。
 誠人の体を、まるで木登りをするようにぐいぐいとよじ登っていく佐藤さん。
 あまりのことに硬直している誠人の手から学生証を取る。
 佐藤さんは学生証と誠人のほうを交互に見てから、ふいっと顔をそむけて小走りで立ち去っていく。それを見ながら。
「……何なんだアイツは」
 取り残された誠人の周りには人垣、人垣、人垣。

 それから数日たった日のことだった。
 同じ講義を取っている、浪館というやたらうるさい友人と学食に向かう途中、再びあのダウジング少女に出会う誠人。
 なぜか、誠人と浪館の後ろを付いてくる佐藤さん。動くダウジング。
「なあ。あの後ろついてくる娘、知り合い?」
 聞いてくる浪館、否定する誠人。
「まさか、たまたま道が一緒なだけさ」
 学食へとたどり着く二人と佐藤さん。
 二人は食券を買って、カウンターに出す。受け取り、食事をしようと席に着く。
 何気なく誠人は学食の中を見回して、佐藤さんの姿を探す。
 すると学食の入り口にいた。いや正確には、食券機の目の前で立っていた。
 一瞥して、食事をする誠人たち。
 食べているラーメンが半分くらいになったところで、ふと気がつくと佐藤さんはまだ食券機の前にいた。
 よっぽど、悩んでいるんだな。その時はまだ、誠人はそう思っていた。
 ラーメンは汁まで残さず空になった。そして、まだ食券機の前に立っている佐藤さん。
「ああもう……何やってんだか」
 居ても立ってもいられなくなり、佐藤さんに声を掛けてしまう誠人。
 やがて誠人は気づいた。
「もしかして、学食の使い方がわからないのか?」
 こっくりと頷く佐藤さん。
 仕方なく、佐藤さんに手順を教える誠人。
 ようやく佐藤さんが席に着いたところで、食器を片付けた浪館に言われる。
「何だ、やっぱり知り合いなんじゃん」
「そんなんじゃねーよ」
「ま、がんばれよっ」
 反論する誠人に、浪館は茶化して立ち去る。
 残された誠人は結局、佐藤さんに学食の片付け方まで教えてしまうのだった。

 学食の一件から、いつの間にか誠人の近くには佐藤さんがいるようになってしまった。
 カレーサークルの朝練を横目にしつつ、そういえば最近、カレーを食べてないな、と思う誠人。
「カレーか。いいな」
 ぽつりと呟いた誠人、佐藤さんの目がきらりと光った……気がした。
 早速、昼に学食でカレーを食べに行こうとする誠人。
 すると、カレーは本日はやってないという。なぜかカレールウが無くなってしまったとか。
 カレーに焦がれながら帰宅する誠人。
 近所ではカレーのいい匂いがする。
 ああいいなあ、カレー。俺もカレーが食いたい。しかし俺の家にはまだ自炊道具なんてそろっちゃいないんだ。
 ああ、今日の晩飯……どうしよう。
 と、誠人が落胆とともにアパートのドアをあけると。
「あんでお前がいるんだよっ!」
 佐藤さんがカレーを煮ていた。
「この前のお礼に……」
「いや、じゃなくて。どうやってここに入ったんだよ?」
 と尋ねると、佐藤さんはL字型の小さな金属棒を取り出して、ドアの鍵穴にそれを突っ込んだ。
「ダウジングで……」
「違う! それはダウジングじゃなくてピッキングだ!!」
「……そうとも言う」
 突っ込む誠人を軽く流して、佐藤さんが誠人に聞いた。
「ご飯は、普通?」
 ぐるぐる、腹が鳴って情けなさそうに応える誠人。
「……いや、大盛りで頼む」
 カレーに舌鼓を打ち、佐藤さんが帰った後に誠人は麦茶を作るために戸棚を開けた。
 そこから雪崩のように溢れて来るカレールウの箱。
「何でこんな量のカレールウが……」
 それがまさか、今日の昼に学食で使われるはずのカレールウだとは夢にも思わない誠人だった。

 変なのに好かれてしまった。
 そう思いながらも誠人は状況に流されている。
 そういえば、と誠人はその変なの――佐藤さんに質問した。
「なあ、そのでかいの。いつも持ち歩いてるのか?」
 佐藤さんは巨大ダウジングを大事そうにぎゅっと抱きしめて頷いた。
「重くないのか?」
「慣れた」
 答える佐藤さんに、片方貸してもらう誠人。
「んげっ」
 それを持った瞬間、思い切り重量で下に引っ張られる誠人。
 ずんっ。と地面に突き立ったダウジング、アスファルトにはヒビが入っていた。
 それをあっさりと持ち上げて歩き出す佐藤さん。
 ……見なかったことにしよう。と誠人は思った。

 ※ここからざっと流れだけ

 大事にしていたダウジングを無くしてしまう佐藤さん。
 佐藤さんのことが(というよりは自分自身の気持ちが)わからずに、佐藤さんを避けるようにしてしまう誠人。
 ダウジング探しにも動かない。
 ダウジングがなくなって、落ち込む佐藤さん。それを目にして知らずのうちに、心を痛める誠人。
 同級生の浪館に言われて、自分の気持ちに正直になる。
 そして誠人はダウジングを見つけて佐藤さんへと渡す。

「捜し物があるんだ」
 佐藤さんはぺたりと座ったまま俯いている。
 誠人は佐藤さんの横に座った。
「俺の知り合いに女の子がいるんだ。
 すげームチャクチャなことばっかしてる。そんな奴なんだ。
 だけど、なんでか放っとけないんだよなぁ」
「……」
 誠人は手に持っていた布の包みから、ダウジングを取り出した。
「……本当に重いな。これ」
 それを見て佐藤さんは驚いた。
 照れくさそうに頭を掻いて言う誠人。
「その女の子が辛い顔してるのは見たくねーんだ。だから佐藤」
「俺と、その子の笑顔を捜しに行かないか?」

 ダウジングを無事に見つけてハッピーエンド。

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改稿しました、ほぼ確定プロットです。

#長くなりますが、コメントで追加。
 枝葉で修正は入れますが、基本の線はこれで固めるつもりです。

 登場人物
 三ツ木 誠人(みつきまさと) これといって取り柄のなさそうな男。175cm
 佐藤 こまき(さとうこまき) 謎のダウジング少女。155cmくらい
 八木田 明輔(やぎためいすけ)その名前とふてぶてしい面から、人はヤギと呼ぶ。呼ばれると嫌がる。170cm

 春は始まりの季節。
 大学生になった初日から、誠人は寝坊で遅刻しそうになっていた。
 慌てて駅の階段を駆け下りる誠人。
 その背後から、金属がぶつかる激しい音が聞こえてきた。
 何だ? と誠人が振り返る。そこには金属の棒に乗って、さながら曲芸のように階段中央の手すりを滑り降りる少女の姿があった。
「うわっ、何だありゃ」
 思わず誠人も巻き込まれないように、階段の端へぴったりと身を寄せる。急降下する少女は無事に誠人の前を通り過ぎるのだった……と思いきや。少女は誠人の数メートル手前で、バランスを崩した。
「あ」
 待て、なんだその、あ。っていうのは? 時すでに遅く、不安になった誠人の目の前には、少女がいた。
 誠人が気絶する瞬間目にしたもの、それはぱんつだった。
 ブラックアウト。

 誠人は意識を取り戻す中、なんだか胸の上に重いものが載っていることに気づいた。
 目を開けると、倒れた誠人の胸の中には、なんと小柄な女の子が横たわっていた。
 唖然としている誠人をよそに、女の子はひとりでに目を覚まし立ち上がると、L字に曲がった二本の金属棒を拾い上げた。
 それは、ダウジングだった。
 少女がそれを手に取った瞬間、ダウジングは誠人の目の前で激しく揺れた。
「……けた」「な、何だ? 俺、なんもしてないからな!?」
 慌てる誠人を無表情に見ながら、少女は大きく頷くと、その場を去っていった。
「な、何なんだありゃあ……」
 少女の背中を呆然と見送りながら、誠人は思い出した。
「見つけた」
 よく聞き取れなかったが、あの女の子は確かにそう呟いたように思えた。
 取り残された誠人、足元には女の子が落としていった物とおもわれる、学生証があった。
 少女の名前は佐藤こまきという。
 そして入学式には、間に合いそうにない。

 初日からアクシデントに見舞われた一日が終えようとしている。
 誠人が大学を出ようと歩いていると、出入り口の門の近くに大きな人だかりが出来ていた。
 何事かと誠人が見に行ってみると、人垣の中心には今朝の少女、佐藤さんがいた。
 彼女の手には二本の巨大なダウジングが握られていた。ダウジングにまかせてふらふらと動く佐藤さん、それに合わせて割れる人垣。
 佐藤さんはだんだんと誠人のほうへと近寄ってくる、そしてついに誠人の目の前で立ち止まった。
 激しく動くダウジングを見ながら、顔を上げて誠人の顔を見る佐藤さん。
 再びダウジングに目を落としてから、ぐるぐると誠人の周りを何周かしてから、ふたたび誠人の目の前へ。
「……これか?」
 と誠人が学生証を見せると、佐藤さんは何も言わずに。ぱっ、とそれを取ろうとする。
 寸前のところで学生証を高く上げる誠人。
「……せめてありがとうくらい言えってば」
 誠人の不平も気にせずに、佐藤さんは一歩後ずさると、勢いをつけて誠人に飛びついた。
 誠人の体を、まるで木登りをするようにぐいぐいとよじ登っていく佐藤さん。
 あまりのことに硬直している誠人の目の高さまでよじ登る佐藤さん。顔を近づけて、見詰め合う二人。
「な、何だよ」
「ありがとう」
 誠人の手から学生証を取りあげると、佐藤さんは学生証と誠人のほうを交互に見てから、小走りで立ち去っていく。
 取り残された誠人の周りには人垣、人垣、人垣。

 それから数日たった日のことだった。
 同じ講義を取っている、八木田というやたらうるさい友人と学食に向かう途中、再びあのダウジング少女に出会う誠人。
 なぜか、誠人と八木田の後ろを付いてくる佐藤さん。動くダウジング。
「……なんでこう、巡り合っちまうんだ」
 うなだれる誠人。
「なんだ、おまえあの娘と知り合いなのか?」
 聞いてくる八木田、否定する誠人。
「まさか……って、ヤギ。あいつの事、知ってるのか?」
 ヤギって言うな、と前置きしてから八木田は言った。
「知ってるも何も。あの子、入学式で新入生代表挨拶してたじゃないか!」
 言った後、納得した。
「ああ、そうか。お前、入学式早々サボりだったんだっけ」
「ちゃんと出席したわ! ……途中からだったけど」
「どうでもいいけど、俺もあんな可愛い娘とお近づきになりてぇー」
「……悪いことは言わん、やめとけ」
 そんなことを話しながら、学食へとたどり着く二人。
 二人は食券を買って、カウンターに出す。受け取り、食事をしようと席に着く。
 何気なく誠人は学食の中を見回して、佐藤さんの姿を探す。
 すると学食の入り口にいた。いや正確には、食券機の目の前で立っていた。
 一瞥して、食事をする誠人たち。
 食べているラーメンが半分くらいになったところで、ふと気がつくと佐藤さんはまだ食券機の前にいた。
 よっぽど、悩んでいるんだな。その時はまだ、誠人はそう思っていた。
 ラーメンは汁まで残さず空になった。そして、まだ食券機の前に立っている佐藤さん。
「ああもう……何やってんだか」
 居ても立ってもいられなくなり、佐藤さんに声を掛けてしまう誠人。
「さっきから何してるんだ?」
 話すうちに、やがて誠人は気づいた。
「もしかして、学食の使い方がわからないのか?」
 こっくりと頷く佐藤さん。
 仕方なく、佐藤さんに手順を教える誠人。
 ようやく佐藤さんが席に着いたところで、食器を片付けた八木田に言われる。
「何だ、やっぱり知り合いなんじゃん」
「そんなんじゃねーよ」
「うらやましーぞオイ。……ま、がんばれよっ」
 反論する誠人に、八木田は肩をたたいて立ち去る。
 残された誠人は結局、佐藤さんに学食の片付け方まで教えてしまうのだった。
「じゃあな」
 やることもやった誠人、自分も帰ろうとすると、佐藤さんも一緒についてくる。
「……何だよ」
 尋ねる誠人に、別にと言った様子で首を振る佐藤さん。そしてなおも付いてくる。
 奥ゆかしく半歩後ろから、というと聞こえはいいが、正直近すぎる。
 学校を出たあたりで、耐え切れなくなって振り向く誠人。何か言おうとするが。
「あのな……」「……」
 しかし別に悪いことをしてる訳でもない、何を言うわけにも行かない。
 第一、邪険に振り払おうとするには、少女の見た目は可憐過ぎた。
「……だから、その」「……?」
「ああもう! 勝手にしろ」
 折れる誠人、こっくり頷く佐藤さん、そして気がつくと。
「って、何で俺の家の前までいるんじゃーい!!」

 いつの間にか誠人の近くには佐藤さんがいるようになってしまった。
 カレーサークルの朝練を横目にしつつ、そういえば最近、カレーを食べてないな、と思う誠人。
「カレーか。いいな」
「……カレー、好きなの?」
「カレーが嫌いな奴なんているもんか」
「わかった」
 佐藤さんの目がきらりと光った……気がした。
 早速、昼に学食でカレーを食べに行こうとする誠人。
 すると、カレーは本日はやってないという。なぜかカレールウが無くなってしまったとか。
 カレーに焦がれながら帰宅する誠人。
 近所ではカレーのいい匂いがする。
 ああいいなあ、カレー。俺もカレーが食いたい。しかし俺の家にはまだ自炊道具なんてそろっちゃいないんだ。
 ああ、今日の晩飯……どうしよう。
 と、誠人が落胆とともにアパートのドアをあけると。
「おかえりなさい」
 そこにはエプロンをしてお玉を片手にもってる佐藤さんが、カレーを煮ていた。
「あんでお前がいるんだよっ!」
「この前のお礼に……」
「いや、じゃなくて。どうやってここに入ったんだよ?」
 と尋ねると、佐藤さんはL字型の小さな金属棒を取り出して、ドアの鍵穴にそれを突っ込んだ。
「ダウジングで……」
「違う! それはダウジングじゃなくてピッキングだ!!」
「……とりあえずご飯に」
「何でそうなるっ!?」
「お腹がすくとイライラする」
 タイミングよく、誠人の腹が盛大に鳴った。
「ご飯は、普通?」
「……大盛りで頼む」
 誠人は腹を押さえながら、情けなさそうに答えた。
 カレーのうまさに、舌鼓を打つ誠人。佐藤さんが料理上手なことが意外に思える。
「料理……うまいんだな」
「隠し味が」
 頷きながら、誠人の皿にお代わりのご飯をよそう佐藤さん。
「ああ、カレーにはよく入れるもんな……で?」
「……?」
「いやだから、隠し味って?」「……」
 しばらく沈黙した後、佐藤さんは誠人の方を向いて、何事かを言おうかと口をぱくぱくとさせる。が、何故か俯いてしまう。
「……やっぱり、なんでもない」
「?」
 誠人はカレーを食べながら、よく使われる隠し味を考えた。
 リンゴとかハチミツ。チョコレートとか、コーヒーとか。そういうのはよく聞くよな。
 あとは何だっけ……何とかは最高の隠し味とか、調味料とか。よく聞くけど、あれはまぁ、お約束みたいなもんだからな。
 と、誠人は佐藤さんの方を見た。ちらちらと誠人を覗き見る佐藤さんの顔が、こころなしか赤い。
 え? いや。あー、まさか……そういうことですか?
 顔が熱なって、汗が出てきた。きっとカレーのせいだ。
 佐藤さんが帰った後に誠人は麦茶を作るために戸棚を開けた。
 そこから雪崩のように溢れて来るカレールウの箱。
「何でこんな量のカレールウが……」
 それがまさか、今日の昼に学食で使われるはずのカレールウだとは夢にも思わない誠人だった。

 変なのになつかれてしまった。
 そう思いながらも誠人は状況に流されている。
 噂をすれば影、だ。揺れるダウジングを手に、誠人の方へと近づいてくる少女がいた。
 そういえば、と誠人はその変なの――佐藤さんに質問した。
「なあ、そのでかいの。いつも持ち歩いてるのか?」
 佐藤さんは巨大ダウジングを大事そうにぎゅっと抱きしめて頷いた。
「お母さんの」
「ってことは、お前のお袋さんもダウジング使うのか!?」
「お母さんも、お祖母ちゃんも、そのお母さんも。ずっと使ってきた」
「先祖代々ダウジングかよ……」
 佐藤さんは頷いた。
「昔から、色んなことをこれで決めてる」
「へえ……例えば?」
「住む場所とか」
「ほー」
「あとは何か無くなったりした時」
「ほうほう」
「……あとは」
「ふんふん、あとは?」
 佐藤さんは俯いて、わずかに小さくなった声で言った。
「……お婿さんとか」
「婿か、なるほどなー……あ゛?」
 すごく重要なことをさらりと言われた気がする誠人。
 佐藤さんの方を見ると、無表情の中にも笑みを浮かべている……気がした。

 そんなことがあってから、誠人は悩んでいた。
「なあヤギよ、聞いてくれ」
「お前がヤギと呼ぶのをやめてくれたら聞いてやろう」
「じゃあいい」
「嘘! 嘘だって、ちょっと言ってみたかっただけなんだって!!」
「……たとえば、ここに馬がいるとする」
「藪から棒になんだなんだ」
「いいから聞け。その馬が、いきなりお前を飼い主に逆指名してきたら、どうする?」
「馬によるだろっていうか……そんな事でお前、悩んでんのか?」
「そんな事って言うなよ、結構真剣なんだから」
「ンなもん、お前が飼いたかったら飼えばいいし、そうじゃなかったらやめりゃいいじゃん」
「……そういうもんかな」
 いつになく真剣な誠人に、八木田は心配そうに聞いてくる。
「なんだかわからんが、がんばれよ」
「ああ、そんじゃな」
「……馬のとこにいくのか?」
 その質問に誠人は吹き出した。
「馬は馬でも、じゃじゃ馬だな」
(こんな感じのシーン、要するに誠人が「自分で決める」という事に触れる事、読者に見せるのが目的)

 休日。
 寝ている誠人。そこへ、窓ガラスを破って何かが部屋に入ってくる。
「どぉわ!」
 寝ぼけ眼で誠人が何事かと見ると、そこには佐藤さんがいた。
「佐藤、頼むからドアから入って来い」
「……ない」
「何だって?」
 と、そこで佐藤さんの顔を見て誠人は目が覚めた。
 佐藤さんの目には不安の色があった。
「ダウジングがない」
「わかった、支度するから待ってろ」
 佐藤さんがダウジングをなくしたという大学へ足を向ける。
 さまざまな人の手から手へと渡っているダウジング。
 不思議発見部が使ったり、ウェイトトレーニング部が筋トレに使ったり、カレー部が鍋を支えるのに使っていたり。
 なかなか見つからないダウジング。
 誠人はふと考えてしまう……ダウジングがなかったら、こいつは普通の女の子になるだろうか?
 思い直す誠人。そんな風にして普通になった佐藤と、普通に過ごしていくだって?
 冗談じゃない!
 こいつは確かに変な奴さ。ああそうだ。とびっきり変な奴だ! だけど……俺はそんな変な佐藤が好きなんだ。
 そうだ、今更にして今更すぎる。何で俺はこんなに必死になってダウジングを探してるんだ?
 佐藤が好きだからに決まってる。
 ダウジングが見つからなかったらこいつはきっと悲しむ。俺は好きな子が、そんな風にして悲しむのを見たくはない。ただそれだけなんだ!
 なんとか捜すための策を練ろうとする誠人。
「ダウジングの代わりに出来るようなものはないのか?」
「……」
 うなだれる佐藤さんその髪の毛を見て、佐藤さんのをツインテールにしてダウジング代わりにすることを思いつく誠人。
 試してみる……大成功!
 ようやく取り戻すダウジング。
 
「……ありがとう」
「まあ、そのダウジングには感謝してるしな」
 元はといえば、そのダウジングがなければ俺と佐藤は出会うことがなかったのだし。
「じゃあ……帰るか」
「うん」
 と、そこで誠人は重大なことを思い出した。
 ……窓がまだ割れたままだった。
「わかった」
 と佐藤さんは頷いて携帯を取り出して、何事かを話し始めた。通話が終わる。
「大丈夫だって」
「そうか大丈夫なのか」
 安堵する誠人、きっと窓ガラスの修理を事前に呼んでいてくれたんだな、と思う。
 帰り道、いつもと違う方向へ進む佐藤さん、怪訝に思う誠人。
「俺のアパートはこっちだぞ?」
「窓ガラスが壊れてる」
「え、さっきの大丈夫っていうのは窓ガラスじゃないのか?」
「……ちがう」
「今日はうちに泊まってって」
「うぇ!?」
 ちょっと恥ずかしそうにした後、佐藤さんは続けた。
「大丈夫、さっき電話で家には伝えたから」
 大丈夫って、そう言う意味か!
「ち、ちなみに……家の人にはなんて伝えたんだ?」
 大学の友達とか?
 佐藤さんは顔を赤くして答えた。
「ダウジングと……。ダウジングと、私が選んだ人が来るって。言っておいた」


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