『風前の灯! 冥王星ドーム都市(キャプテン・フューチャー全集別巻)』野田昌宏 「ジェイムスン教授の続きは出ませんか?」「よし、キミが訳せ! そしたら俺が早川にもっていってやる!」
私が野田昌宏さんに最初にお会いしたのは、もう四半世紀も前になる。まだ学生の私は、野田昌宏さんにサインをいただいた後、こう聞いた。(サインをいただいたのは、アーサー・バートラム・チャンドラー先生の『銀河辺境シリーズ:銀河私掠船団』であったと記憶している)
「ジェイムスン教授の続きは出ませんか?」
ジェイムスン教授シリーズは、ニール・R・ジョーンズのユーモア系スペースオペラで、藤子・F・不二雄さんがイラストを描かれていることでも有名だ。翻訳を担当されたのが、野田昌宏さんで、私はこの作品のすっとぼけた、かなりいい加減なノリが大好きだったのである。
「そうか、読みたいか」
「はい、ぜひ」
すると野田昌宏さんは、あの特徴のある三角眉毛を、ひょこっとハの字に動かしてニヤリ、と笑うとこう言ったのである。
「よし、キミが訳せ! そしたら俺が早川にもっていってやる!」
そしてその後、周囲の人間に向かって大声で。うれしそうに、楽しそうに。
「オイ! 本当のところ、誰か訳さないか? 俺がちゃんと話を持っていくから!」
だから、あの言葉は、私にだけ向けたものではなく。
おそらく、仲間たちに――SFやスペースオペラを愛するすべての人に――向けたものだと思っている。
好きなことが同じなら、一緒にやろうじゃないか、と。
この『風前の灯! 冥王星ドーム都市』はキャプテン・フューチャーの新作を、作者であるエドモンド・ハミルトン氏の遺族の了承をえて野田昌宏さんが書かれたものだ。
翻訳も担当した野田昌宏さんの文体で描き出された作品だから、ストーリーこそ完全オリジナルであっても、まさしくキャプテン・フューチャーそのものである。
敵がシリーズきっての悪役、火星の魔術師ことウル・クォルンなのもうれしい。今回の創元版の全集をそろえた人にとっては、短編集と合わせてうれしいご褒美の一冊だろう。
気が付けば、舞台となっている冥王星は太陽系最果ての惑星でなくなり、いつしか惑星扱いですらなくなりはしたが。本作品の面白さはいささかも減じていないと思うのだ。
その後、私がジェイムスン教授の続きを翻訳するようなことはなかった。かけられた言葉に、そのままの形で、お返しすることはついにできなかった。
けれど、私は今もSFやスペースオペラが大好きなので。
そういう作品を好きだといったり、面白いと紹介したり、あるいはスペースオペラのTRPGを作ったりプレイしたりという形であれば。
私はずっと、野田昌宏さんと一緒にやってきたつもりである。
もちろん、いろいろと至らぬところやダメなところもあるのは承知の上で。
これからも、一緒にやっていきたいと。
そんな風に考えているのである。

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