『ヴィンランド・サガ 6』幸村誠 クヌート王子覚醒! 愛の本質とは死ぬことと見つけたり

 5巻で保護者であったラグナルが死に、ついにクヌート王子が覚醒である。
 クヌート王子救出からトルケル軍団相手の逃避行、そしてラグナル殺しにいたるアシェラッドの苦労はここにようやく報われたわけである。
 アシェラッドとトルケルを手下にしたクヌート王子の6巻最後のセリフがカッコよろしい。

「ついてきたい者はついてこい
 スヴェン王を玉座から引きずり下ろす!」

 本当の戦士を求めるトルケル。偉大なるローマ=ブリテンの再来を求めるアシェラッド。そして真の愛を求めるクヌート王子。
 手に入らぬ、手の届かぬ、見果てぬ何かを求め続ける三者はここに手を結んだわけである。
 ……主人公のトルフィン置いてけぼりで。

 こうしてみると、上のセリフがあった絵でクヌート王子に近い順でトルケル、アシェラッドがいて。一番後ろがトルフィンという構図はなかなかに興味深い。
 もっとも、トルケルからも、アシェラッドからも何も学べなかったトルフィンが、クヌート王子からは何かが学べるかもしれないとも思う。

 父トールズの「本当の戦士に剣など不要」というトルフィンに届かなかった言葉は、果たしてクヌート王子の覚醒をうながした

「なんということだ……世界が
 神の御技がこんなにも美しいというのに……
 人間の心には  愛がないのか」

 という認識によって届くようになるのか。

 トールズもクヌート王子も、たかがホモ・サピエンス・サピエンスをたいそうに考えすぎだとは思うが、「人(俺)は本来、もっとスゴイ生き物なのだ」という意識こそが個人でも社会でも大事なのは間違いないから一概に否定もできない。

 次の巻からはじまるであろうクヌート王子の国盗り物語もすごく楽しみである。あまり本音の見えないスヴェン王の中に息子への愛はあるだろうかという点も見所である。

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