『ブラック・ラグーン008』広江礼威 メイド復讐編ではなく、ロック覚醒編か? 悪徳の町に、調停者が降臨する!
虚淵玄さんのノベライズも発売になり(これがまたスゴイ良い出来である)ますます面白いブラック・ラグーンの8巻である。
現在のエピソードは、南米産の眼鏡メイドによる復讐編としてスタートした。ロックはもめ事が町の中で噴出する前に事態を解決すべく走り回ったが、失敗に終わり、盛大にドンパチが発生した――ようにも、見える。
けれども、やはり今この時点において。物語の鍵を握っているのはロックだ。
狂った眼鏡メイド、エロエロな半ズボンショタ、死亡フラグ立ちまくりなチビメイドがどうなるかはまだ分からないが、このエピソードのおしまいに決定的にロックが変貌しそうな、そんな予感がする。
では、ロックがどう変貌するか?
それは、ロックに何か期待を抱いているふたりと、危惧を抱いているふたりを見ればなんとなく想像できる。いや、私の妄想なんだが。
ロックに期待を抱いているふたりは、暴力シスター兼CIAエージェントのエダと、ロアナプラ最大勢力兼元法の番人、張の兄貴である。
彼らはこの町に必要な、調停者としての役割をロックに押しつけようとしている。特に張はこれまでも「それに近い役」を演じてきているが、彼はなんといっても三合会の幹部であり、調停者に必須の中立性を欠く。
それに関してはエダも同じだ。彼女は自らの身分を偽装し、暴力シスターの仮面をかぶることで道化役を演じてきたが、そろそろ危なくなっている。死ぬか仮面を外すかはまだ分からないが、退場は間近だ。
今回の件をうまくまとめあげれば、彼らの後釜にロックが座ることになる。背後に何一つ組織や力を持たない日本人の青年は、それゆえに、偉大なる調停者、悪徳の町における魔法使い“ウォーロック”(ラリイ・ニーヴンの『魔法の国が消えていく』的な意味合いで)となりえるのだ。
ロックに危惧を抱いているふたりは、レヴィとダッチだ。
レヴィは女としての直感で、ロックがまずい方向へ踏み出しているのを理解しないまま知っている。しかし同時に女のみにできる決断で、ロックが踏み込む地獄の穴へ一緒に自分が入ることを、これまた理解せずに納得している。
ダッチはその鋭い知性と経験で、張たちが――いや、このロアナプラという町が――ロックを欲していることを見抜いている。悪徳の町であるがゆえに、どうしても必要な調停者として、ロックを手に入れたいと。
なぜなら、ロックの前に調停者の役割を演じさせられそうになったのはダッチだからだ。運び屋として各地にさまざまなコネクションを持ってはいるが、組織に属さないダッチは、場数を踏んでいるという点ではロック以上に調停者にふさわしい。
そしてもちろん、ダッチは逃げた。自殺したいならもっと楽な方法がある。調停者というのは、悪徳の町が生み出すひずみを一身に背負う生贄のことだ。身代わりのお札であり、つまりは消耗品である。
それが、調停者が存在しない理由だ。調停者になれる人間は、自分が人柱であることを理解できる能力を持っていなければならず、当たり前だが、そんな役を請け負ったりはしないのだ。
だから、ロックは貴重なのだ。希有なまでに貴重なのだ。
必須の能力を持ちながら、経験を持たない。
破滅を見抜いておきながら、全力を尽くそうとする。
眼鏡メイドとアメリカ特殊部隊との戦いがどう決着するかはまだ分からない。半ズボンショタが南米の屋敷に戻るときに全員が一緒なのか誰ひとり戻れないのかも分からない。
けれども、分かっていることがひとつある。
このエピソードの終わりにロックは決断をしなければならない。偉大なる調停者になるか、否かを。
銀の銃弾は撃ち出されるのか、それとも、そのままかを。

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