電撃リトルリーグ用投稿作品「夏の終わりに届いたメール」藍澤優版その2
えーと、もう一つ電撃リトルリーグ用のを書いてみました。
今度は送れるレベルに達しているかどうか……。
それでは、どうぞー。
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電撃リトルリーグ用応募作品:「夏の終わりに届いたメール」
「宿題……、終わらねー……」
僕は窓越しに、ピーカンの空を見上げながらぼやいた。
明日から九月だというのに、この脳天が茹で上がるような暑さはなんだ。
しかも宿題はまだたくさん残ってる。
よーし。
現実逃避にゲームでもやるか……。
と、机の上のデスクトップパソコンのアイコンをクリックし、MMORPGのクライアントを立ち上げる。
画面には、異世界の魔王の城。
「よし、今日も冒険だ!」
と喜び勇んでキーを叩き始めた時、携帯からメールの着信音が流れた。
(なんだ、こんな時に……。いつもの出会い系とか逆援助系のスパムかな?)
溜息をつきながら携帯を手にしてフリップを開き、ボタンを押す。
携帯の画面を見たとたん、僕は目を疑った。
「まほ☆てん:こんにちわ! 魔天市場です!」
(って……。フィッシングメールにしては、なんだか妙だぞ?)
そのまま目をすべらし、内容の一行目を見ると、
「夏休みの宿題を終わらせたいあなた! わたしがお手伝いします! 代金はご相談を!」
の文字が。
(おっ! こ、これは!? 代金はご相談!? これで宿題が解決できて、安くできるというのなら、かなーりお得かも! よし、リンクの中身だけでも見ておくか!)
僕は力強くそのリンクを押した。
その瞬間……。
僕の背中の向こうから、光と音が溢れた。
振り向くと、そこには黒いローブと三角帽子を身にまとい、血のような色の宝石を最先端部にあしらった鋼鉄の杖を手にした、長い黒髪の背の低い女の子が立っていた。
「あの……」
「ご主人さま! リンクをクリックしていただき、本当にありがとうございますの! わたくし見習い店員の、メアと申しますの!」
そう言って、ちんまい体を可愛らしい仕草で、折り曲げる彼女。
「ご、ご主人さま!?」
「はいですの! 当『闇王商会』では、お客様のことを『ご主人さま』とお呼びしておりますの!」
(ちょっと怪しげな名前だけど……。まあ、いいか)
「で、ご主人さまのご希望は『宿題を終わらせたい』、ですよね?」
僕は、机の片隅にどかされたノートや教科書の山の方を向き、
「そうそう、そうなんだよ! 昨日から夏休みの宿題始めたんだけど、終わらなくってさー。どうすればいいのか困ってたところなんだよー」
えへへと苦笑しながら、大きく両腕を振った。
その言葉を聞いて、メアはえっへん、と大きく胸を張る。
「イヒヒ、もちろん、お任せください!」
「……。で、どうやって宿題を解決するのさ?」
「それは今から行ないますのっ」
「今から?」
「はい、今からですのっ」
「……へっ?」
呆然とする僕をよそに、メアは小動物の様に部屋の中を動き回り、何かを始めた。
いつの間にかカーテンは閉められ、部屋中には嗅いだ事のない、いい香りのお香の煙が立ちこめてる。
僕は怪しげな黒い鎧にマントを着せられてた。手には大きく奇妙な形の斧。
(一体どうやって着せたんだ!?)
そして目の前には、杖の先端で描かれた、光り輝く魔法陣がぼうっ、と浮かんでいた。
「ご主人さま、魔方陣のそこに立つですのっ」
「……う、うん」
言われるがまま、魔方陣に乗る。彼女は僕の右に立った。
何が始まるんだ? 召喚の儀式なら、魔法陣に乗る必要はないし……。
そ、そうか! 僕は勇者として、異世界に召喚されるんだな!
でも、それでどうやって宿題を解決するんだ?
そう思っていると、次の瞬間、僕らは光に包まれた。
お香の香りは消え、よどんだ空気とコケの臭いが鼻につく。
周りを見ると、いつの間にか、見たことのある場所に変わってた。
闇の……、魔王の城?
ちょ、ちちちちちょっとこれは!?
ここは異世界!? しかも、これさっきまでやってたMMORPGの世界じゃないか!?
隣に居るはずのメアを問い詰めようと、右を見る。
すると、彼女がいたずらっ子のような笑顔で、めちゃめちゃ嬉しそうにはしゃいでた。
「……やりました、成功ですの! ご主人さま! 初めての転移魔法が成功しましたの!」
「お、おいメア。本当にここは……?」
「はい、ご主人さまが先ほどプレイなされていた、異世界ですのっ」
「で、でも、学校は……」
「喜んでください、ご主人さま! ここにいる間は、向こうの時間は進まないですの。ご主人さまの夏は終わらないですの! 宿題がやりたい放題ですの!!」
その瞬間、僕はそうか! と喜んだ。
「なるほど、やったね! ……で、料金は?」
僕が一番気になってた質問に、メアは急に神妙な面持ちになって言う。
「わたし達の『宿題』をお願いします、ご主人さま。それがお代金です」
その言葉に、僕はえっ、という顔をした。
「し、宿題……? どんな?」
メアはその問いに、ローブからこうもりの羽を出し、口から牙を出して笑った。
「イヒヒ、もちろん……。『世界の支配』です! 魔王さまっ!」
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