『機動戦士ガンダム00』のSFネタ解説その21:スペースコロニー建設
機動戦士ガンダム00に出てくるギミックや台詞を元に妄想をたくましくしていくSFネタ解説シリーズの21回目。
いよいよ『機動戦士ガンダム00』第二期の放映開始である。
録画に失敗したので、第一話をGYAOで視聴したところティターンズのような治安維持部隊が宇宙にいたりと、五年たっても00世界の歪みは消えていないようである。
さて、宇宙で反連邦の、治安維持の、などと言っている以上、第二期では宇宙生活者もけっこうな数がいそうである。スペースコロニーも建設ラッシュであろうと考える。
そこで今回は、スペースコロニーの建設についてあることないことを語ることにする。
いつものように真面目七分に法螺三分、大嘘ついても小嘘はつくなの三割精神でいきたい。
さて、コロニーの建設であるが、構造について『機動戦士ガンダム00』のSFネタ解説その13:スペースコロニーで説明したように、円筒の回転部分というのがポイントになる。
2ndシーズン第一話『天使再臨』では、ラグランジュポイントでのコロニー建設現場からスタートしている。また、サジ君が捕まって重労働をさせられるアロウズ管理のスペースコロニーも出てくるし、そこの円筒の回転部分をいきなり逆噴射して速度をゆるめるという場面も出る。
居住区であるコロニーの円筒の回転部分であるが、あれはいったい、いつ、どのように回転を始めるのだろうか?
ガンダム00のコロニーを見る感じでは、最初は無重力で円筒を組み立て、組み立てが終わった後で取り付けられたロケットを噴射して回転。これによって重力を得る仕組みであるように思える。
しかし、居住リングというものは、一度回転させたら、そうそう回転を上げたり下げたりの必要はない。かさばるし、重量もあるロケット装置を取り付けることには疑問も残る。
アロウズ管理のスペースコロニーには、高重力区画という重力の大きい=回転速度の速い区画があったわけだが、あれが懲罰用のものであれ、あるいは地球よりも重力が大きい環境というのが、製錬か何かの工業用に便利だという理由であれ、ひんぱんに回転速度を切り替える必要があったので特別に設置されたものであるかもしれない。
では、居住リングをいつ、どのように回転させるかだが、コロニー建設の手順と合わせて考えて(妄想して)みよう。
スペースコロニーはどう作るか。
まず資材であるが、当然、宇宙空間には何もない。地上での建設でも、セメントとか鉄骨とかは工場で作って運んでくるが、原材料も含めて真空の宇宙には何もないのだ。
よって、建設資材をどこからか調達するわけだが、材料だけあっても、それを製錬したり加工するには工場が必要だ。
そこで、一番の最初は、やはり地上での仕事となる。地上で部品や素材を作り、そいつを宇宙へ運ぶのだ。幸い、ガンダム00では軌道エレベータがある。重い建築資材でも、低コストで持ち上げることができる。
しかし、地上で何もかも作るのはやはりコストと手間がかかる。月だと重力が小さい上に真空だから、セメントの原料など、安く仕上げたいものについては月で作ってマスドライバーで射出とかがいいだろう。
後は、小惑星を運んできて軌道上に安定させ、そこから資材を調達する。これだと距離的には一番近い。しかし、小惑星はもともと地球とは遠く離れた場所を別の軌道で飛んでいるわけで、短時間で地球軌道まで運び、安定させるのは高度な技術とコストがかかる。
ただ、技術面では00世界ではスペースコロニー建設のために、アンカー用の小惑星を地球軌道に移動させているだろうから、そこで小惑星の軌道変更と安定についてのノウハウは十分にたまっていると思われる。

さて、資材の調達の目処がたったところで、建設であるが。
どんなものでも、全部いっぺんに作るのは、お金がかかる。やはり、我々の軌道を巡る国際宇宙ステーションと同じく、予算に合わせて建設していきたい。
となると、最初に作るのは、コロニーの真ん中の芯棒になるパイプを設置。そこからワイヤーを周囲に伸ばして、居住リングの骨組みを作るところからスタートだ。
そして次に、この骨組みを回転させる。まだ骨だけで軽いから、タグボートにワイヤーで引かせて動かすといい。安定性のために、居住リングはふたつ作って、互いに反対方向に回転させるべきかもしれない。
回転速度は、最初はゆっくりでいい。建設が終わるまでは一般人が住むわけではないから、月と同じ1/6G~1/2Gくらいで十分だろう。
さて、そこに最初の居住モジュールをすえつける。回転しているから対角線上に倉庫なりもうひとつの居住モジュールをすえつけるとバランスがとれるだろう。この居住モジュールは、コロニー建設の作業員のためのモジュールだ。飯場というやつである。
ひとつひとつのモジュールは、地球や月などで建設し、半完成状態のものを運び込む。この時点では閉鎖型生態系ではない。水も空気も食糧も、リサイクルの効率はあまり気にせず、どんどん地球や月、資源小惑星から運び込む。エコ的にはよろしくないが、あまり小さい規模の閉鎖生態系は、むしろ循環させることの方がコスト高になるというのは、アメリカのバイオスフィアの実験で生じたさまざまな困難で得た教訓だ。私が高校生ころ創刊した科学雑誌ニュートンではバイオスフィアの実験について特集されたこともある。それを読みながら学生の私は閉鎖生態系の夢をいろいろ広げていたのだが、現実はやっぱり厳しいのである。

さて、ようよう建設が進むとリングがひとつにつながる。後は蓋をしてドーナッツ型、あるいは円筒型の居住リングの完成である。
居住リングが完成したら、内部の閉鎖生態系の構築開始だ。これはコストも時間もかかる。バイオスフィア実験の教訓は、とにかく小さい規模の生態系では、ちょっとした誤差が致命的な変化につながることが分かっている。
はたして、00世界のバイオ技術者たちがどのような回答を用意したかは分からない。なんとなくイメージとしては、「解決は先送り」にしている感じはある。むろん閉鎖生態系を作ることができない、維持できないスペースコロニーは、人類が第二の故郷とするには障害が多い。
けれども、コストパフォーマンスという点と、何より安全性、信頼性という点では、独立した閉鎖生態系を維持できない方が優れているとも言える。独立した閉鎖生態系が完成しているのであれば、スペースコロニーは外からは何も運び込まなくても生きていける。しかし、もしも事故があったら。スペースコロニーはたちまち危機に瀕する。酸素や水、食糧を外から運び込まないといけないが、短時間に大量の物資を運ぶ能力や、それをさばく能力を、スペースコロニーは持っていないだろう。そんなものは必要ないように作られているのだから。
また、地球と違い宇宙空間はさまざまな放射線にむきだしにしてさらされている。大気と磁場の保護がないスペースコロニーでは、この放射線被曝による突然変異の影響も無視できない。
住んでいる人間もガンとかの危険があるが、もっとも危険なのは細菌の類である。土壌細菌などをはじめ、我々の生態系は目に見えない微生物や細菌によって支えられている。それらは寿命が短く、頻繁にサイクルを重ねているがゆえに、突然変異の影響がすぐに現れる。
突然変異で土壌細菌が変化して土が変われば、その上に育つ植物も影響を受ける。農作物の味が変わるくらいならまだマシで、食べられなくなったり、育たなくなることだってあるだろう。そのたびに地球から細菌をセットで購入するとなれば、遺伝子ビジネスの重要性ははかりしれない。ひょっとして『機動戦士ガンダム』世界で地球連邦によるコロニーの搾取というのは、この「地球由来の豊かな遺伝子資源」を独占している地球が、言い値でコロニー側に買わせていたというものではないだろうか。
地球の遺伝子資源ネタが宇宙独立戦争に絡むネタSFとしては、アイザック・アシモフの傑作短編『母なる地球』(アシモフ初期傑作選3収録)がある。他にも、『スキズマトリックス』(ブルース・スターリング)や、『星界への跳躍』(ケヴィン・J・アンダースン&ダグ・ビースン)などのSF小説も、閉鎖生態系を維持するスペースコロニーがいかに大変かをうかがわせる展開で面白い。もし興味があればご一読のほどを。
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