電撃リトルリーグ用投稿作品「十五年目の告白」藍澤優版その2
さて、電撃リトルリーグにもう一作品送ってみました。
今回はちょっと芸を仕込んでみました。
個人的にはこういう語り口、合うというか悪くない気がする……。
それでは、どうぞー。
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タイトル:「十五年目の告白 ~十五歳の朝、城下町にて~」
「……ニールや、起きなさい。朝ですよ」
聞きなれたお袋の声に呼び起こされ、俺、ニールは木造のベッドの上で目を覚ました。
見ればいつもの、俺の狭い屋根裏部屋の朝。
ベッド近くの窓から優しい朝日が差し込む、そんな屋根裏。
ぼんやりと目を開けて首を動かせば、そこには元戦士だったお袋、ベアトリスのオバン顔。
でもなんか、いつもの怖い顔じゃなくて、妙に優しいように見えるんだけど……?
「こんな朝早くに起こして、今日は何かあったっけ……?」
「今日は、あなたの十五歳の誕生日ですよ。ニール」
その答えに、身をわずかに起こす俺。
そー言えば、そうだったっけ……。
学校は不登校だし、最近は外にもまともに出かけていないから、今日が何月何日かとか忘れてた……。
部屋を見渡せば、人には言えない趣味の本とか人形の山だからなぁ……。
お前らにも、分かるだろ?
俺の部屋の様子とか、引きこもりすぎて月日忘れてたとか。
そんな状況の部屋にも関わらず、ずかずかと入ってくるお袋って、肝っ玉がでかいのか、それともあきれ返っているのか……。
……後者だろうな。多分。
お袋は怖いくらいに優しい口調で、言葉を続ける。
「あなたは今日、王様の下に呼ばれているのですよ」
へ? 王様?
なんでそんなお約束な展開が?
俺が疑問を口にしようとした時、お袋は俺の心を読み取るかのように言う。
「今日は大切な事を告げなければなりません。これはあなたが生まれた時から、決まっていたのですよ」
十五年目の告白、なんてやつ?
おお、なんか運命的な予感がするな。
そうだろう、皆?
「なんだよ、それ……?」
「あなたのお父さんベイリーは、偉大な勇者でした。お父さんは戦いの末、火山に落ちて亡くなったそうです」
って、どっかで聞いたような話じゃん。
伝説になるぐらい何度も……。
まあ、たしかに親父は、俺が物心着く前に死んだらしいが。
それはいいとして、その話が半分でも本当で、親父が偉大な勇者なら、俺にもその血が……。
ということは。
ふむ。
これからの展開は、そういう事なんだな! 分かるよな!
「お父さんは自分にもしものことがあったら、あなたに継いでもらいたいと、あなたが生まれた時におっしゃってました。今日はその願いを、叶える日なのですよ」
そう、このパターンは!
勇者伝説でよくある、黄金馬鹿一パターン!
「あなたには力があります。その力を、存分に発揮する時なのですよ」
そうだよな! やっぱり俺って、勇者なんだ!
イィヤッホーウ!
期待に胸を膨らませ、俺はがばっ、と体をベッドから起き上がらせる。
するとお袋は、目前の木の床に、鉄製の剣と盾を置いた。
「はい。これがお父さんが残してくれた、形見の剣と盾です。これがあれば、きっとあなたでも十分怪物と戦えるでしょう」
……って、どー見ても、サビなんて一つもついていない、ピカピカの新品なんすけど。
だが、それがいい。
勇者たるもの、伝説の武器でもないのならば、お古の武器より、新品の武器の方がいいに決まっているだろう! 諸君!
お袋は、そこのところを考えてくれているんだろう。
だから嘘をついているんだ。
うう、優しいなぁ。
な、泣けるだろ?
心の中でうれし泣きをしつつ、俺はお袋に訊いてみる。
「もしかして……。俺って、勇者?」
だが、お袋は大きな溜息をついた。
「いいえ。あなたは勇者ではなく、戦士なのよ。ニール」
工エェー!
俺、勇者じゃなくて戦士かい!
がっかりだよ!!
そういえばお袋、元戦士だったもんなぁ。
お前らがプギャーと指差しているのが、よく分かるよ……。
そう思いをめぐらせていると、
「さあ早く、城の兵士登録所に行って、手続きをすませなさい」
そんなお袋の命令口調。
「え? 王様に命じられて、魔王討伐の旅に出るとかじゃないの?」
それに俺が、思わず疑問を口にしてしまった時。
お袋から、かちん、と音が鳴ったような気がした。
お袋の額に血管が浮き、みるみる顔が紅潮。
やべ、これは完全に怒らせた!
「何寝ぼけた事言ってんの!? そんなわけないでしょうが!」
怒鳴り声と共に、お袋は俺の頬を、思いっきし平手打ち。
ビチーン!
違うのかよ! なら早くそう言ってくれよ!
「いっ、いてて、そんなに強くひっぱたくなよ!」
「あんたが学校にも行かずごろごろしてるから、お父さんのコネを使ってお城に働きかけて、仕事を見つけてやったのよ!」
やっぱりそういうオチだったんかい!
持ち上げ、くすぐり、突き落とす!
どっかの作家のキャッチコピーみたいだな。
「じゃあ、俺の親父って……」
「ええ、ただの城で働いていた飲んだくれ兵士よ! 勇者なんかじゃないわよ! さっきの話は雰囲気作りよ、ふ・ん・い・き!」
お袋はベッドから俺を引きずり下ろし、俺の尻を叩く。
「この就職難のご時世なんだから、職があるだけありがたいと思いなさい! さあ、早く城に行った行った!」
親がこれなら、俺もこんなもんだな。やれやれ。
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