もの書き練習その19「解体少女2 バラバラ事件」
学校で事件が起きた。
土曜日の夜中に誰かが、校舎の窓ガラスを割ったらしい。
現場は、翌日出勤してきた先生と部活に来た子たちによって発見された。警察の人も捜査に来ていたらしく、校内は一時騒然となったそうだ。
月曜日、体育館で全校集会がおこなわれ、ピリピリした空気の中、わたしたちはこの事件を知らされた。
「粘土もめちゃめちゃに壊されてたらしいよ」
廊下を歩いていたら話し声が聞こえてきた。
その話によれば、犯人は割れた窓から一年生の教室に忍び込んだらしく、陳列してあった粘土の人間像をすべて壊したという。普通なら、犯人のいたずらかなにかだと判断されるところだけど、その壊し方は異常だったという。
その像たちは、頭や手足などを鋭利な刃物で切り落とされていて、教室の床には大量のバラバラになった粘土像が散乱していたそうだ。
「ねえ、見に行ってみようよ」
例の、オカルト好きの友達が誘ってきた。その顔は好奇に満ちている。まわりには恐怖で青ざめた子もいたけど、男子なんかは興奮していて、犯人をやっつける格闘ごっこをしている。
「ほら、早く」
友達に強引に引っ張られ、仕方なくついていく。
廊下を歩いて一階につくと、現場となった教室の前には人だかりができていた。
誰もが興奮して、早口で喋っている。
人かげから教室をのぞくと、中には一年生の子たちがいるぐらいで、ほかには何もなかった。ここで事件があったとはとても考えられないほどに普通だった。
「なんだ。なんにもないじゃん」
飽きたように友達が言うそばで、わたしは粘土の残りカスが床にこびりついていることに気づいた。
瞬間、わたしの目の前に巨大な白銀のナイフが迫ってきて、たちまち、頭や手足をバラバラにされるイメージに襲われた。
思わず、足がすくむ。
目の前をナイフがちらついている。
特異体質のあるわたしには、自分だけはどんなことがあっても死なないだろうという不思議な自信があった。
でも、いくらすぐに治るといっても、さすがにバラバラにされてしまってはなすすべもないだろう。
わたしは目の前に、しきりにナイフを突きつけられているような感じになって、足をすくませた。わたしでも、やっぱり死ぬのは怖い。
『だいじょうぶだよ』
突然の声。
まわりには、床を夢中になって見つめている子しかいない。
今の声は、わたしが言ったんだろうか。
わたしは頭の中で、バラバラになった自分の姿を思い描く。
暗闇に頭や手足、それに胴体が散らばっている。そしてゾッとするような、無表情のわたしの顔が浮かびあがった。
「――」
恐怖に耐え切れず悲鳴をあげそうになった瞬間、体の奥底から不思議な力が湧きあがってきた。すると、わたしが恐怖で硬直している間に、バラバラになった手足がずるずるとくっついていった。
「教室にもどりなさい!」
先生の叱り声で、我に返る。
みんなが一目散に教室に戻っていく。わたしも遅れまいと、その集団の中に並ぶ。
「げっ、阿部がいるよ」
隣の友達の視線を追うと、オカルト好きの阿部くんが前を歩いていた。
わたしは気まずい気分になった。
実は、隣にいる友達は、みんなには自分のオカルト好きを隠していた。それなのに、わたしをオカルト好きだと吹聴して回っていたのだ。
だから真正のオカルト好きの阿部くんとわたしとは、なにかと同一視されて困っていた。
「ま、いっか」
友達がわたしを見るとニヤニヤと笑った。
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