『機動戦士ガンダム00』のSFネタ解説その24:衛星兵器メメント・モリ

 機動戦士ガンダム00に出てくるギミックや台詞を元に妄想をたくましくしていくSFネタ解説シリーズの24回目。

 2ndシーズン第10話『天の光』で、軌道上からメメント・モリという兵器が地上に発射された。

「逃げてーっ! 大佐逃げてーっ!」
 ちゅどーん。

 ラストがそんな感じなので親熊大佐は大丈夫かしらんと心配になったが、どうやらご無事の様子で何よりである。考えてみれば、なんぼアロウズでも、同じ連邦所属の軍を吹っ飛ばしてはいかんわな。
 そういうわけで今回は、衛星兵器メメント・モリを肴にSF的なあることないことを語っていきたい。

 いつものように真面目七分に法螺三分、大嘘ついても小嘘はつくなの三割精神でいきたい。最後までおつきあいいただければ、幸いである。

 アニメにおける衛星からの超兵器、というと印象深いのが『宇宙戦艦ヤマト』の反射衛星砲だ。ビームの発射装置こそ地上にあったが、ミラー構造の反射衛星を経由して、惑星(当時は冥王星は惑星だった)の反対側に隠れていたヤマトに痛打を与えている。

 衛星兵器メメント・モリは、低軌道リング――低軌道といっても高度1万キロメートルの高さ――から地上へレーザー攻撃をかけている。
 高出力レーザーに必要なものは何よりもまず電力である。
 現在も技術開発が進むミサイル迎撃システムの中には、地上発射型高出力レーザーがあるが、その高出力を支えるためのものが原子炉だ。

 冷戦時代のスターウォーズ計画では「核兵器が乱れ飛ぶ中で、原子炉が無事なわけがないだろう」という意見もあったのだが、新潟県中越地震で耐震能力に優れた日本の原子力発電所がむちゃくちゃ丈夫なコトが分かって兵器としての価値が見直されているようである。
 ここまで大きなものでなくても、レールガンを主武装にした新型戦車の開発では、電源車両が別にいるのではないかとか、後ろに連結しようとか、ンなもの用意したのではせっかく小型化できるはずなのに台無しだとか、とにかく電力の確保は兵器開発において重要な要素なのである。

 その点、メメント・モリは地球のエネルギーをまかなう太陽光発電システムと軌道エレベータ、そして低軌道リング経由でつながっているわけだから、電力不足の心配はないだろう。逆に低軌道リング――赤道直上に配置されているわけだから、高緯度地帯を攻撃するのは難しいかと思ったが、高度1万キロメートルもあれば、極地でない限りは照射に問題はなさそうだ。

 むろん、地上を攻撃するだけなら、太陽光発電の膨大な電力があれば、レーザー=強い光にしなくとも、マイクロウェーブ=電磁波をぶつけることで、それなりに被害を与えることができる。

 古典SFである『ラルフ124C41+』(ヒューゴー・ガーンズバック)では、マイクロウェーブ送電システムを開発した天才科学者のラルフが、雪崩に巻き込まれそうなヒロインを救うために、この技術を用いている。
 ラルフはマイクロウェーブをヒロインに押し寄せる雪崩にぶつけたのだ。電子レンジの原理で雪崩は一瞬で蒸発する。そしてふくれあがった高温の水蒸気が爆風となって山麓をふるわせ木々を根こそぎ吹き飛ばし、そしてヒロインは助かるのである。

 ……。
 ……いや、言いたいことは分かる。これだと残念ながらヒロインが助からない。むしろ確実に仕留められてしまう。
 ただ、私がこの本(しかも児童図書館にあった抄訳版)を読んだのは30年ほど昔なので、記憶違い、勘違いをしているやもしれない。もしかしたら蒸発してふくれあがった水蒸気の爆風を別の発明で何とかしていたのかも。

 太陽光発電を巨大な電子レンジとして、敵をチンする使い方をしている作品はいくつかある。『遥かなる星』(佐藤大輔)の3巻はまさにそういう使い方だし、『ルサルカは還らない』(御厨さと美)も同様である。
 なお、『ルサルカは還らない』の場合、太陽光発電とマイクロ波の照射は、オホーツク海を暖めることでシベリアを沃野にしようという気象コントロールがそもそもの目的であり、御厨さと美さんならではの見事なアイディアが光る傑作だ。

 まとめて言うと、電磁波の直接照射は、気象兵器、戦略兵器としてはそれなりに優れているが、戦術兵器――モビルスーツを攻撃するには、無駄が多い。ひたすら出力をあげれば、それはむろんガンダムでもこんがりできなくはないだろうが、もともと電子レンジの原理とは水の極性を利用したものであって、電磁波を反射する、あるいは透過しない素材に覆われた相手にはほとんど効果がないのだ。アルミホイルを頭にまけば大丈夫というほど単純ではないが、防護の方法はいくらでもある。
 逆に低出力でも広範囲に、反政府勢力を支援する住民の田畑や森林、ゲリラが潜むジャングルを照射しまくれば、生態系や農業生産は壊滅的な打撃を受け、ゲリラは拠点を失う。
 とんでもない環境破壊であるから、マスコミや有権者にバレては致命的なことになりかねないが、イノベイターとヴェーダの支援によって情報統制を完璧にできるアロウズであれば、問題ないだろう。
 ――イノベイターが味方で、ヴェーダが機能している限りは。

 第10話『天の光』を見た限りでは、衛星兵器メメント・モリはレーザーを利用することで、建造物やモビルスーツといった、マイクロ波の照射では破壊が困難な対象も貫き、破壊できるようだ。

 照射範囲を広げることで、上述した気象や環境を破壊するタイプの戦略兵器としても使用可能かどうかはまだ不明である。高度1万キロメートルからの遠距離照射であるから、大気なども含めてそれなりに拡散しているはずで、セルゲイ・スミルノフ大佐ら連邦軍の部隊所属の兵士は、後で健康診断が必要だろう。特に屋外にいた兵士は火傷や皮膚ガンの危険がある。

 まさにメメント・モリは田中芳樹さんの『七都市物語』に出てくるオリンポスシステムを彷彿とさせる、ある意味で戦争根絶のためのシステムであると言える。恐怖と弾圧による戦争根絶ではあるが。

 この凶悪な衛星兵器を破壊することは可能だろうか?
 相手がメメント・モリだけであれば簡単だろう。メメント・モリが攻撃する対象はその能力からして地上の固定目標である。低軌道リング上をレールで移動し、目標と同じ経度からレーザーを照射――当然、より高い軌道からの攻撃に反撃する能力はない。
 ただし、アロウズにとって地上制圧の切り札とも言うべきメメント・モリには十分な防衛戦力を配備しているはずだ。これらの守りを突破するのは容易なことではあるまい。

 メメント・モリを攻撃するのに適した機体はだから、機動力が高く一撃離脱型のモビルスーツ、刹那のダブルオーやアレルヤのアリオスだ。
 相手が動かないのであればロックオンのケルディム、あるいはティエリアのセラヴィーの長距離狙撃、あるいは砲撃能力でもよさそうに思えるが、遠距離からのビーム攻撃は、四年前のソレスタル・ビーイングの活動を分析したアロウズ側も警戒しているだろう。簡単に無効化できるかどうかは分からないが、無防備ということだけはあるまい。

 とすれば、アロウズ側も、そしてイノベイター側も知らないダブルオーのツインドライブによる超機動こそが、メメント・モリ撃破の鍵になるのではないだろうか。

 ただし――

 苦闘の末にメメント・モリを破壊した刹那とダブルオーが帰還しようとすると。低軌道リングのあちこちからレーザー攻撃の十字砲火を受けると私は妄想している。

「メメント・モリは地上の反連邦組織を制圧するための軌道兵器だったが――
 当然、宇宙の反連邦組織を制圧するための軌道兵器も用意されているんだよ。
 それが、コルト・エルゴ・スム。低軌道リングに外向きに設置され、互いの死角を打ち消すように設置された一〇八基のレーザー砲群だ。
 さあ、どう逃げる、ダブルオーガンダム?」

 などとリボンズがいい気になって解説してくれるのではないかと!

この記事へのトラックバックURL:

http://drupal.cre.jp/trackback/2326
SeaFurry flight log から 月, 2009-01-05 08:40 受信

ツッコミばかり書いていると思われると嫌なのですが・・・ ガンダムOOの#13“メ


この記事をブックマーク