特撮ヒーローのアルバイト姿
今の俺はバイトモードだ。
ランチタイム、オフィス街の牛丼屋でサラリーマンを相手に俺は戦っている。
すぐ隣に立つ、国籍不明の男から渡されるどんぶりの器に、一抱えもあるような寸胴鍋から牛煮をすくい、よそう。
浅黒いそいつは、日本語を理解できるが喋れない。
盛られた飯の量で判断しながら俺は適量をふりわける。
並盛り、大盛り、並盛り、並盛り、特盛り。
飯がぎゅっと潰されてくるのは汁だくサインだ。ほらよ特盛り汁だく、一丁上がり。
手が空いたスキに、豚汁、みそ汁、みそ汁と続けてトレイの上に、だん、だん、だん!
「マサさん!」
という声が四歩ほど離れた背面から掛かる。
1.2秒のタイムラグで俺は右手を顔の横に出しながら振り向き、ほらきたぞ。
白くて儚いそれをキャッチ。
カン、カシャリ。親指と薬指を逆方向、ねじるように片手割り。
「お前な、生卵投げんじゃねえっていつも言ってんだろ」
俺はそう言いながら、片手を背面へ。殻は右斜め後方、約4メートルの所にある生ゴミ箱に収まった。
「いーじゃないスか」
と半分金髪、半分黒髪のアキトは俺が睨むのにも気にせず、ピアスが三つ付いた唇をニカッとさせた。
喋ると舌についたピアスが見える。それで味わかんのか、お前。
「だって、マサさん。ヒーローじゃないスか」
「ふん」
ああそうとも、俺は正義のヒーローさ。
だが、今は牛丼屋で働く、ただの時給1250円秋原正義でしかない。
「馬鹿なこと言ってないで働け。あがったぞ!」
俺は左手にトレイをよっつ、右手にふたつ持ち上げるとカウンターへと運んだ。
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