『最後の性本能と水爆戦』道満晴明 「バナナはオケツにはいりますか?」「三本入ります」――の『ぱら★いぞ』は未収録だが、脳髄破壊力は抜群だ!
ハリウッド映画を見た人がしばしば、「わかりやすい」という感想を漏らすように、マスを相手にできるだけ多くの人を楽しませようというのであれば、わかりやすさは必須の条件である。
善男善女は愛でつながり、悪党には報いがあり、伏線は回収される。
先を読ませ、期待させ、その通りのものを提供する芸の、なんと見事なことか。予定調和は常に美しい。
その一方で、世の中には「わかりにくい」ものもある。
「わかりにくい」ものは楽しむよりは忌避の対象となる。
日常の「わかりにくい」ものを考えてみるがいい。深夜に駅のホームで奇声をあげるお兄ちゃんや、公園でヘンな文章を朗読するおっさんがいたら、あなたはどうする? 私なら、視線を合わせず足早に通りすぎる。中年の優しげなおばさんに「あなたの幸福を祈らせてください」などと声をかけられたら、時間や心にゆとりがない限り、断らせていただく。
現代はコンテンツがそうでなくても山盛りの時代だ。「わかりにくい」あるいは「意味不明」のものに関わるよりは、「わかりやすい」ものを求めるのは当然である。なお、「わかりやすい」は当然個体差があり、私にとってSFは「わかりやすい」く、純文学は「わかりにくい」が、むろん逆だという気の毒な人も大勢いるだろう。
しかし、世の中には、その「わかりにくい」ことが売りになる芸もある。ギャグ、あるいはナンセンス系の芸だ。
タモリ氏の芸にハナモゲラ語というのがある。いかにも外国語風に聞こえるが実は何の意味もなしていないタワゴトで、なのにやけに面白い。
このハナモゲラ語の芸を学生時代にマスターするべく練習し、挫折した記憶のある中年男性はけっこういるのではないかと思う。私もそうだ。
このときに、私は「わかりにくい」がいかに難易度の高い芸であるかを実感した。
「わかりにくい」ものは面白くない。
「意味不明」なものは苦痛ですらある。
にもかかわらず、その道を究め、芸となす人々の何と偉大なことか。
漫画であれば、かの名作、鴨川つばめさんの『マカロニほうれん荘』を思い出す。まだ学生の私はアレを本屋で立ち読みして、脳天をハンマーで殴られるほどの衝撃を受けたのをありありと覚えている。
そしてその流れの中に、古賀亮一さんや、ここで紹介する『最後の性本能と水爆戦』の道満晴明さんがおられる。
読めば分かるが、あ、いや、読む前にバカエロや下ネタが笑えるという条件が付くが、とにかく狂気の産物である。
なぜこんなバカなことを思いつく、いや思いつくだけならともかく、どうして漫画にするのだと、叫びたくなるほどの、どうしようもないギャグのオンパレードである。
とてもではないが、まねはできないし、まねをしようとする若い者がいたら親が泣くから止めろと言うが、それでもこの芸が素晴らしいことには変わりがない。
収録された作品の中でお気に入りなのが、『MUSE』と『ルルイエから来た少女』である。
『MUSE』は、押井守監督の『御先祖様万々歳!』風に5~10分くらいのアニメにすると普通人(押井守監督のファン)でも楽しめるくらい面白いんじゃないかと思う。
『ルルイエから来た少女』は、「そっ村長のカラスミに――オレの白子をっ!」という、下ネタとしても、かなりアバンギャルドにすぎる言い回しが、実に道満晴明さんらしい。
ダメすぎる漫画ばかり集めたこの一冊。
決してオススメはしない。オススメはしないが、人生には無駄が必要だと思った大人の人であれば、一読するのも良いかもしれない。
もちろん、あくまで自己責任でひとつよろしく。
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最後の性本能と水爆戦道満晴明
職場の先輩から渡されたマンガがとてもおもしろくて感銘を受け、オシャレマンガのつもりで終電満員電車の中...

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