一条ゆかり、著、『プライド』10,萌と史緒、それぞれの大転身
ベテラン・マンガ家、一条ゆかりさんの最新作『プライド』。
オペラ歌手の一流を目指す美女2人、史緒(麻見史緒)と萌(緑川萌)の、プライドを巡るラブ&バトル☆
10巻です☆ 史緒と萌、それぞれの回心……「心境の変化」とか呼ぶには深いところでの変化が描かれます。
『プライド』がドラマチック・ラブ&バトルのマンガでなければ、シンプルに「2人のヒロインが、それぞれに成長のステップを」みたいに言いきれるんだけど。
アタシ(紹介者)は、この先、これまで以上にドラマチックな大波乱を期待しちゃってます。どうなってくことでしょう♪
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この記事では、『プライド』10巻の内容について、不必要なネタバレは避けながら、ご紹介してみます。
ただ、9巻までの内容は、必要に応じて、随時言及します。10巻から読みはじめる人って、そんなに多くないと思いますし。
ほかにも、用語:プライドからも、色々レヴュー記事がたぐれます。よければどうぞ。
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「不必要なネタバレは避ける」とは書きましたけど。
これは書かないと、10巻の中身を紹介できそうにない。
10巻では、萌が出産を決意して、オペラ歌手を断念します。
一方、史緒は、フィアンセの神野氏への愛情に目覚め、オペラ歌手へのステップも、また1段上ろうとする。
『プライド』って、「オペラ歌手の1流を目指す2人の美女のラブ&バトル」じゃぁないですか。
この先、どうなっちゃってくのでしょう?
これってもう、ランちゃん(蘭丸)が結成した3人ユニットS.R.M.が空中分解して、4人の主要キャラが世界各地に散ってった時(5巻)以来の大転進。
次の巻(11巻)から、何がどうなっても、驚かないようにしよっと。
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「まだ そんなに目立たないけど6か月だって/もうねおなか蹴るのよ」と、萌。
“うそっ! 明るい…”と、気おされるような蘭丸。
イタリアに戻る萌と、CDの打ち合わせのため一時帰日したランちゃんとが、成田空港で偶然行き会った時の会話。
萌は、神野の子を産んで神野家に養育費をたかり美味しい思いをしよう、と誘惑する母(9巻)から逃れるようにイタリアに戻り、出産を迎えようとしてる。
「だから これからは/SRMの活動は/やれない」
「もっと歌いた/かったけど/
もう史緒さん/には会わないと/決めたから」
これにはランちゃん、大ショック。静かに明るい萌に、やっと「なんで…」と聞く。
「なんで…」
「私だって鬼/じゃないもの」
「ふたりの/結婚のじゃまを/する気はないの」
「蘭ちゃん/史緒さんが悲しむのは/嫌でしょ/
だから この先/神野さんのことは/絶対 公表/しないから」
「神野さんには/マルチェロの/子供だと/言ったし/
もう堕ろし/たと思ってる/はずだから」
「ママにも ふみよ/おばちゃんから/中絶したって/ハッキリ言って/もらったし/
だから心配/しないで」
「どうすんの」「これから」と尋ねるランに、「まだ決めてないけど大丈夫」と応える萌。
ランは、「大丈夫じゃないだろ」「ぜんぜん大丈夫じゃないよ」「やせがまんしないで養育費くらいは神野氏に出してもらえよ」と言うけど。
「父親は/いらない/
この子は/私だけの/子供よ」
ランの母親も、だらしない父親を捨て、1人で子供を育てた。
言葉を失うランに「私 かわいそうに見えるかもしれないけど/そうじゃない幸せなの」と萌。
10巻では、萌のプロットに絡むように展開する史緒のプロットもすごくいいんですけど。どうしても萌プロットが目立ってる。
萌プロットの焦点をネタバレさせちゃいましたけど。
萌が回心に至るまでの描写は、丁寧で。何度読んでも、味わえる。
萌プロットの10巻内でのクライマックスのように読めるシーンは、イタリアで、出産のため音楽学校を辞める萌が、日系移民の富豪にパーティーに招かれて、マノン・レスコーの「一人寂しく」を歌うシーン。
この歌をウィーンのコンクールで歌った萌は、途中棄権にも関わらず、聴衆からスタンディング・オベーションを贈られたのだった(8巻)。
富豪の山田氏も、ウィーンのコンクール会場にいたようで。それで萌を招いて、「一人寂しく」をリクエストしたけど。出産を決意し、芯から幸福感を得てる萌には、ウィーンの時のように歌うことができない。
ランの師匠、世界のベティに、「ネガティブを武器に 不幸を食って太る」、「幸せになったら歌えなくなる」、と言わせた萌(8巻)。
ベティの読みどおり、歌えなくなった10巻の萌ですけど。
“今は絶望も苦しみも私の中から出てこない”と、マノンを歌えない自分を、静かな感じで受け入れます。
このシーンも、ものすごくいい。
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さて、もし、このまま萌が歌手の1流を目指すバトルからリタイアしたら。きっと、ささやかな幸せを手に入れるのでしょうけど。『プライド』の物語は、片翼飛行になっちゃいます。
萌は鬼でもない、のでしょうけど。ここは、マンガ家一条ゆかりは鬼かもしれない(笑)、と期待したいと思います。要するに、大波乱のメロドラマが読みたいのよっ(笑)。
これはアタシの予想ではなくて、期待なんですけど。「メロドラマの達人」一条さん。萌にさらなる不幸を配剤してほしい気が。
もう、一条さんの最長長編になってる『プライド』は、何がどうなるか、あれこれ予想しても、アタシごときの予想は、必ず覆されると思うのね。
予想を裏切っても、期待は上回るマンガ家一条ゆかりを大信頼。
何がどうなるか、楽しみです。
意外と萌がすんなり出産しても、驚かないように心の準備しとこう(笑)。10巻の萌の回心だって、展開はスタンダードだけど、描写がいいので味わえます。だから、どんな展開が来ても、物語は楽しめるはず。ここは、信頼できるはず。
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萌プロット、書きすぎちゃったかな。
史緒のプロットもいいです。けど、ちょっと駆け足で。
史緒は、結婚準備に忙殺されながら、神野氏への愛情を自覚しだします。この辺は、恋愛未成熟女ぽくて、笑えるし。恋愛未成熟の癖に、妙に大人な振る舞いもするアンバランスぶりも史緒っぽい。
改めて、史緒を見直す神野氏も、政略的なパートナーシップ以上の期待を史緒に抱きはじめる。
実は、神野氏、“才能に惹かれるのを止めるのは無理だ”と、心の底ではランちゃんに脅威抱いてると思えるんですよね(7巻)。
おそらく、それもあって、萌の妊娠、出産待機を知り、およそらしくない姑息な振る舞いに出る神野氏。
2人のヒロインほどではないけど。これもキャラの意外な1面。
さて、日本からウィーンに戻る史緒は、代役要員とは言え、大きな舞台に関わることになります。これも次巻以降に続く長いプロットで、多分、今までより高いレベルの才能の間で揉まれることになるでしょう。
ここで、ちょっと予想。多分、外れる公算高い(笑)けど。
10巻の内で、史緒はウィーンのオペラ・ファンの間で信じられてる亡き母のゴシップを耳にし、動揺します。
「母のようなオペラ歌手になる」って段階は、卒業してる史緒ですけど。今でも、幼い頃死に別れた母親を理想化はしてる感触。
予想にすぎないし、どんな形で描写されるかは、わかんないけど。史緒の理想を裏切るような、母の女性としての実像を史緒が知る、みたいな展開を予想してみます。
その方が面白いと思うんです。神野氏への愛情を自覚して、ちょっと人間味も豊かになってるし、どうなるでしょう?
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他の3人に比べると、10巻では、ランちゃんのキャラが“化ける”ようなとこはなかった気がします。ランちゃんは、S.R.M.の内では、1人で先にワールド・レベルに足踏み入れてたから、まぁ、仕方ないかな。
10巻では、久しぶりにeikoも登場したし。
やっぱり、萌の出産絡みで、史緒と神野氏との結婚がどうにかなる前後で、バーンッとランちゃんにも化けてほしい(これは期待)。
総じて、10巻の大筋は、主要キャラそれぞれのプロットが、大きなカーブを描くような感じ。
キャラの心情の振幅幅が大きいドラマチック・ラブ&バトルにしては、ゆるりとした感覚で。むしろスタンダードな展開が目立ちますけど。丁寧な描写が楽しめる巻です。細かな描写に、陰影が感じられて、そこが読みどころ。
次巻では、いよいよ『プライド』で1番プライド・レスな萌ママ(苦笑)が動き出す。
どうなるっ? 『プライド』??
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書誌情報:
一条ゆかり,『プライド』10(クイーンズコミックス コーラス),集英社,Tokyo,2009.
ISBN 978-4-08-865518-5
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