映画版『プライド』の史緒は、温室の華なのか?
金子修介さんの監督作、映画版『プライド』(一条ゆかりさんのマンガが原作)の印象雑記。キャラクターについてのノート、2本めを書いてみます。
映画を1度観ただけだから、印象が薄れる前に書いておきたいの。観劇印象記の補強記事になるはずです。
『プライド』って物語は、マンガ版でも映画版でも、1流歌手を目指す美女2人のいがみ合いに、音楽関係の美青年2人が絡むメロドロマで。4人のキャラの間の恋愛関係も絡むラブ&バトル。
本業が歌手のステファニーさん演じる麻見史緒は、1方のヒロイン。強いて主役を1人に絞るとしたら、史緒と言わざるを得ないけど。物語の図柄としては、もう1方のヒロイン緑川萌(映画では満島ひかりさん)もいないと成り立たない。そーゆー物語。
アタシは、原作マンガのファンで、それで映画観に行ったんですけど。
実は、映画版の史緒には、ある種、喰い足りなさも感じて。1度観ただけだから評価が定まってない。
「疑問がある」ってとこであれこれ考えてて。このノートは、疑問も抱えたまま書きます。
ただ、マンガ版と映画版、どっちがいいか、みたいなことを考える気はありません。
いろいろ違いもあるけれど、どちらも、それぞれ作品としてちゃんとしてる。
そんなふうに考えて、書いてみます。
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『プライド』の映画体験に今アタシが抱えてる疑問は、要約してみるとこんな風。
映画版のキャッチ・コピーは、“過激なふたり/歌劇なバトル”って詠ってる。
1度観ただけの印象だけど、映画版の史緒は、アタシには過激さが不足してるように感じられる。
でも、多分それだけではない。
なぜかっていうと。
もし、映画の史緒が“温室の華”なだけのキャラだったら、多分、もっともっと萌に喰われてたと思うから。あるいは、萌を演じた満島ひかりさんの演技が、空回りして観える感じになったかもしれない。
けれど、映画はそういうふうではなかった。
映画『プライド』の史緒は、何を表現してるキャラだったんだろう?
そして、それは、映画で表現されてることと、どう関連してるんだろう??
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「君はね/温室で大切に育てられて初めて価値を発揮する大輪のバラだ」
このセリフは、マンガ版『プライド』の第1巻で、クイーン・レコードの神野隆(映画版では及川光博さん)が、麻見史緒に政略結婚めいたプロポーズを提案する時のセリフ。
父が経営する会社が倒産し、父親は海外で頑張るので、元お嬢様になってしまった史緒は、オペラ歌手への夢を抱えたまま日本に残った。そこに神野から、来日した1流オペラ歌手を主賓に招くパーティーでアルバイトをしないか、と声をかけられ。通訳として出席したパーティー会場の人込みから少し離れた場所で、語られるのがさっきのセリフ。
映画版でも、ほとんど同じシチュエーションで、同じようなセリフが語られる。
すでに、記憶が掠れてきて、少し違った言い回しだったような気はするけど。具体的には思い出せないのが、ざんねん。
さて。
映画版『プライド』で、ステファニーさんが演じた史緒は、ここで言われる、“温室の華”のような表象を、よく表現してたと思う。
けれど、マンガ版の史緒が身につけてる、傍の者に打ち解けがたさを感じさせる超然としたクールさは、映画の史緒には感じられなかった。
ステファニー=史緒の立ち居振る舞いや言動は、よく言えば、お嬢様らしく、おっとりしてる印象で。悪く言えば、“人間味”が出すぎてる。
そう、ここでは「悪く言えば」って言ってみたい。
『プライド』って物語では、“人間味”がありすぎる萌(笑)が全開にする、嫉妬心や上昇志向と、史緒のクールに観える言動との対照は、割と大事と思うのだ。マンガ版では、肝よ、肝(笑)。
ステファニー=史緒が、なんでおっとりして観えるのか、理由はいくつか思い当たる(どれが決定的かは判断保留)。1つは、多分、体質。ステファニー=史緒は、ボディ・ラインがふっくらした印象。ドレス姿だと、ナイス・バディってわかるんだけど。コートとか着ると、着膨れして見えちゃうタイプね。
本業はシンガーのステファニーさん、立ち姿はちゃんとしてて、背筋も伸びてるみたい。少なくとも、公式パンフレットに掲載されてるスティールだと、どれでもちゃんとした姿勢。
ところが、劇中だと、なんかの時に前傾姿勢になると、背筋を丸くしてるような印象で見えちゃう気がする。多分、これは視てるアタシの錯覚で、ステファニーさんて、普通より姿勢はいいんだろうと思う。って言うのは、作中のステージ上やラウンジで歌うシーンでは、ちゃんと背筋が伸びてる印象だから。
こーゆーことって、やっぱ、大画面で観た方がいろいろ感じるわねー。
後、ステファニー=史緒は、作中で、普通に目線を動かすお芝居をしてる。これは悪いことじゃぁ無い。
つまり、劇で表現される架空の状況、架空のコミュニケーションに随時反応する演技を目線でもしてる、ってことなんだけど。アタシが気になってるのは、史緒のお芝居としては、目線の動きが普通に思えること。
例えば、“なに? この人、何を言ってるのかしら?? わからない”とか、“この人、何で、わたしにこんな理不尽な言いがかり言ってるのかしら? わからない”とかってお芝居が、マンガ版ファンとしてはほしかったんだけど。アタシが視た印象では、ステファニー=史緒は、普通にいろんな人の言動がわかってるお芝居と感じました。
特に、萌がぶつけてくるイチャモン(笑)だけど、ステファニー=史緒は“わかってる”感じ。マンガ版史緒だと、異星人を見るような視線とか、“なんなのかしら? このイキモノ??”みたいな(笑)。ハッキリ書くと、相手を見下してる視線がビビーッと出るとこなのね。
アタシは、劇での演技って、何をどうしてるのかよく知らないので。もしかしたら、本業がシンガーで、はじめて映画に出たステファニーさんに、1ステップ難しい期待を、ワガママに寄せてるだけなのかもしれない。
ただ、アタシが、考えたいのは「ステファニー=史緒は、普通ぽかったからツマンナイ」とかってお話ではなくて。
アタシには普通に視えるステファニー=史緒の演技を使って、金子監督が観せてくれた『プライド』の物語では、何が表現されてるんだろう? ってこと。
正直に書くと、映画版をもう2、3回みないと、アタシなりの結論は出せそうに無い。
ここでは、今の時点での、とりあえずの考えを書いてみます。
マンガ版の史緒を「理想を追い続ける女」と呼んでみるなら、映画版のステファニー=史緒は「かけがえの無い固有の夢を大事にしてる女」って呼べるのかもしれません。
こんなふうに思うのは、きっと、映画版で何度か描かれる歌唱のシーンが、素敵に楽しかったからだと思います。
マンガ版でも歌唱のシーンは、ハイライトなんですけど。さすがにマンガでは音や歌声の表現は高度。
歌ってる歌手のキャラクター性は、面白く描かれてますけど。
映画版では、音楽や歌声も疑似体験できて、さらにその上で、音楽を体験する時に全身で感じる強度のイリュージョンも、表現されてた。
イリュージョン表現の強度は、歌唱シーンごとにいろいろだけど、例えば、萌がはじめてクラブ「プリマドンナ」で歌うシーンではフルカラーのCG合成を使って、かなりストレートにイリュージョンを描いてたり。
同じようなイリュージョンは、マンガでも、いわゆる効果バックを駆使した表象で描かれたりもするけど。やっぱり、ストレートさでは、映画の方が強い。だいたい、映画だと画像動くし。
とゆーわけで、アタシが感じてるような「かけがえのない固有の夢を大事にする女、ステファニー=史緒」って解釈が間違ってはいないとしたら。これと歌唱シーンで表現されるイリュージョンとの結びつきが強いのも、不思議ではないと思います。
マンガ版の方は、と言うと。「理想を追い続ける女、史緒」これは、マンガを10巻まで読んできた末の考えとして、自信を持って言ってるんですけど。「理想を追い続ける女」は「プライドを巡る表現者の戦い」って物語の内容との相性はすごくいい。ほとんど、コインの裏表みたいになってるのが、マンガ版『プライド』。
例えば、こんなとこが、金子監督の映画版と、一条さんのマンガ版とは違う。
違うけど、どっちも『プライド』だと思うのです。
どちらも、それぞれちゃんとしてる作品。
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映画版『プライド』は、マンガ版の設定をかなり共有してて。プロットも概ね踏襲されています。
けれど、映画版公開直後に10巻まで刊行されてるマンガの5巻までが踏まえられた上で、別にマンガのストーリーをダイジェスト化した映画なわけではない。
例えば、マンガの5巻までに出てくる重要な脇役が、2人も映画には出てない。神野氏の腹違いの妹で、神野家で妾腹として2級家族扱いされてるeikoと、ラン(池之端蘭丸)の師匠になるベティ。
もちろん、2時間ちょっとの映画で、そこまでキャラを増やすわけにはいかない、って事情はあるはずですよね。キャラを増やせば、プロットの錯綜度は倍々とゆーより、2乗3乗って感じで増してくでしょうから。
そこを切り詰めて、キャラは増やしても、ストーリーをうまくまとめたりすると、ダイジェストとか“総集編”になっちゃうわけ。
金子監督の映画は、そんな、ドライ・フラワーみたいなダイジェスト版では無い。
細かく言えば、ストーリーだって違うし。
表現されてることは、金子監督のオリジナルになってる。
「何が表現されてるのか」を、アタシなりに整理して言うことは、今は、まだできないけど。
金子版『プライド』が、マンガ版『プライド』と設定などをかなり共有してても、ちゃんと、別の内容になってるのは、はっきりわかってる。
そして、それは、『プライド』って物語にとって、いいことだと思うのです。
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映画を鑑賞しました。秊 2009-15『プライド』を鑑賞しました。(更新:2009/01/18) * 評価:★★★☆☆(★★★★☆との間) 一ヶ月フリーパスポートで鑑賞の2...
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