石田衣良、作、『電子の星』(『電子の星』池袋ウエストゲートパークIV所収)旧版
【この紹介文は】
この紹介文は、2008年2月に初公開した、石田衣良さん作の短篇小説『電子の星』の紹介文です。
2008年2月に、大幅改稿した改訂版と差し替えました。
『電子の星』は、石田衣良さんによる「池袋ウエストゲートパーク」(I.W.G.P.)シリーズ、本編の1作。本編4冊目の作品集に収められた表題作で、採録された中篇4本の最後に収められてる。
表題作らしく盛りだくさんの作品だ。
マコトは、ネットで噂を聞いたらしい、知らない相手から、人探しを依頼してくるメールを突然受け取る。
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中篇『電子の星』は、表題作らしく盛りだくさんの作品になってる。
池袋で行方不明になった、地方出身者の若者。
不審な手紙を最後に、音信不通になった友人キイチ(浅沼紀一郎)を心配して上京してきた、引き篭もりのネット中毒テル(園部照信)。
テルは“DOWNLOSER”のハンドルネームで、ワレズをやって小遣いを稼いでる、って設定。
それから、スナッフビデオ(殺人ビデオ)の噂。
ただ、盛りだくさんなだけに、無理が目立つ話になってるみたいだ。
もちろん、この辺の評価は人によってわかれるだろう。
「三週間くらいまえから、キイチとは連絡がとれなくなったんです。携帯もパソコンも手紙もダメ。まったく返事がもどってこないし、つながらない。それで一週間してから実家の郵便貯金の口座にいきなり三百万円振りこまれてきた」
おかしな話だった。一発あてるつもりでマグロ漁船にでものりこんだのだろうか。もっとも合法的な仕事なら、しばらく部屋を空けると家族に連絡するはずだ。〔中略〕「キイチはちいさなころから、ぼくのあこがれみたいなものだったから。ちいさなころぼくは虚弱体質で、田舎ではいじめられるんだ。キイチは近所に住んでいたこともあって、いつもかばってくれた。だから、今度の失踪はほんとに信じられない。キイチはなにかから逃げるようなやつじゃなかった。いつだってまっすぐにぶつかっていくタイプだったんだ」
「わかった」
おれはそういって立ちあがった。〔後略〕
依頼の筋も、引き受け方も、マコトらしい。
その後、キイチの行方を捜すパートは、サスペンス感もある。
じゃぁあ、どこにどんな無理が感じられるのか。
ネタバレさせずに、それを説明するのは難しい。
例えば、作品中盤に、マコトがテルを励ます場面がある。
ここ、作品の読みどころの1つのはずなんだけど。
アタシ(紹介者)には、やりとりに無理が目立つように思える。
そんなの、気にならない、って人もいると思うけど。
例えば、『エキサイタブルボーイ』で読める、マコトと和範(森永和範)とのエピソードと比べると、やっぱり無理はあると思える。
読んで、判断してみて欲しい。
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残念ですけど、アタシとしては、『電子の星』は楽しめはするけど、表題作にしては無理が目立つ作品、って紹介になります。
『サンシャイン通り内戦』や、『西口ミッドサマー狂乱』なんかには、無理もある話を語りきっちゃうから面白い、みたいな面もあって。微妙なとこですけど。
サスペンス感、疾走感、軽妙さなど、I.W.G.P.本編らしい語り口は楽しめます。
ただ、マコトの語りは、軽妙だけど、時として話を綺麗にまとめすぎる弱点があって、中篇『電子の星』は、その点が裏目に出たような作品。
アタシとしては、そんなふうに思っています。
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この作品は、文庫版で102頁ほど。雑誌「オール讀物」の2003年7月号に掲載された。
『西口ミッドサマー狂乱』(文庫版で154頁)、『水のなかの目』(文庫版で144頁)や、『サンシャイン通り内戦』(文庫版で142頁)くらいの長さで書いてもらえてたら、もっと読み応えのある物語になってたかもしれない。そんなふうにも思っています。
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書誌情報:
石田 衣良,『電子の星』(池袋ウエストゲートパーク4),文芸春秋,Tokyo,2003.
ISBN 4-16-322390-8
石田 衣良,『電子の星 池袋ウエストゲートパークIV』(文春文庫),文芸春秋,Tokyo,2005.
ISBN 4-16-717409-X
備考:
物語内の今=語られる主要な出来事は、ある年の夏の“ほんの十日間”ほどのできごと。
連作間の前後関係を、直接特定する手がかりは作中には見当たらない。『黒いフードの夜』で語られた出来事に続く夏(2003年の夏)の出来事、と思っておくのが素直な読み方だろう。
語り手の今=語り手の今は、エピローグ相当パートで語られた出来事が起きた時点よりは後。
冒頭の断章での語りは、メインの物語で語られた出来事が終わった後、ある程度時間が過ぎたような印象もあるが、どれくらい後の語りかは定かでない。
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