石田衣良、著、『電子の星』(I.W.G.P.IV)、ストリートの伝説になってるマコト
『電子の星』は、石田衣良さんの連作小説「池袋ウエストゲートパーク(I.W.G.P.)」本編4冊めの作品集。
語り手キャラのマコト(真島誠)は、東京池袋のウエストゲートパーク(西口公園)近くで、実家の果物屋の店員をしながら、雑誌でセミ・プロのコラム・ライターもやってて。池袋のストリートで、ボランティア的なトラブル・シューターとして知られて久しかった。
4冊めの作品集では、マコトの変化が目立つようだ。生身のマコトと別に、ストリートの伝説のようなイメージが一人歩きしてる感もある。
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作品集『電子の星』には、表題作を含めて4作が収められてる。
採録順で言うと、『東口ラーメンライン』、『ワルツ・フォー・ベビー』、『黒いフードの夜』、そして表題作『電子の星』の4作。
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『東口ラーメンライン』で、マコトは元Gボーイズで、キング(タカシこと安藤崇)の側近ガード役だった双子の兄弟、ツインタワー1号、2号からの依頼を受ける。
タモツ(小倉保)とミノル(実)の兄弟は、ストリート・ギャングから足を洗って小さなラーメン屋をはじめていた。そのラーメン屋「七生」が、何者かに嫌がらせを受けていた。
「マコトへの依頼の筋はわかるよな」
「悪質な噂で営業妨害をしてるやつらを見つけ、きついお灸をすえること」
ぶっちゃけちゃうと、軽く読める人情話だけど。読後感は悪くない。
しいて言えば、マコトは脇役のような役どころになってて、軽い感じにまとまってる。
『ワルツ・フォー・ベビー』は、5年前に、池袋の東京芸術座裏で起きた殺人事件の調査を、被害者の父親からマコトが頼まれる物語。
芸術座まで歩いて5分ほどの西一番街に住むマコトも、深夜、建物裏のテラスで蝋燭を灯して座り込んでたオヤジと話をするまで忘れてた、そんな事件だった。
この作品も人情話風だけど、実は、かなり読み応えがある。じっくり読むほど味わい深い物語だ。
好き嫌いで言えば、アタシ(紹介者)は、採録作中1番好きです。
『黒いフードの夜』で、マコトは、ミャンマーから、おそらく政治難民として日本に逃れてきた一家の少年サヤーと、友達になり、助けることになる。
「ねえ、ぼくはどうしたらいいの」と聞くサヤーに、「だめだ、サヤー」とマコトが告げるやりとりとかは、読みどころ。
「〔中略〕ねえ、ぼくはどうしたらいいの」
サヤー目をおおきくひらきまっ赤にしていたけれど、じっとカメラを見つめて涙を落とさなかった。
「だめだ、サヤー。誰かにどうしたらいいかきいていたんじゃ、どこにいっても同じだぞ。自分がどうしたいのか、なにを望むのか、自分で決めるんだ。それができなきゃ、何千キロも海を越えて日本まできた価値がないじゃないか。おまえのとうさんが命がけでほしがった民主主義だぞ。こっちの世界は確かに天国じゃないし、くだらないところだが、それでも自分の人生は自分で選べるんだ。いいか、サヤー、おまえはどうしたい? 厳しくても自分で考えて、未来を決めろ」
サヤーは涙をこらえたまま、怒ったような顔でしばらく考えていた。おれはやつの顔を見つめてただじっと待った。もう何もいうことはない。おれはサヤーが今の生活を続けるというなら、そこで手をひくつもりだった。そのときビルマからきた少年は、出会ってから初めての激しさをおれに見せた。目を光らせて叫ぶ。
この物語では、マコトはトラブル・シューティングのため、かなり思い切った手をうつ。トラブルのケリがついた後、タカシに皮肉めいたコメントを聞かされて。その辺も読みどころの1つ。
シリーズの内の異色作に、数えてもいいだろう。
表題作『電子の星』は、盛りだくさんの作品。
池袋で行方不明になった、地方出身者の若者。ストリートに流れていた、スナッフヴィデオ(殺人ヴィデオ)の噂。不審な手紙を最後に、音信不通になった友人を心配し、上京してくる引きこもりのネット中毒などなど。
サスペンス感、疾走感、軽妙さなど、I.W.G.P.本編らしい語り口が楽しめる作品。ただ、盛りだくさん過ぎて、少し無理が目立ってる点はあるようだ。
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作品集『電子の星』を通して読むと、主人公で語り手キャラのマコトが、それなりに歳を重ねてる感じが読める。
実際は、キャラクターの変貌は、もう少し前からはじまってるんだけど。『電子の星』では、いよいよ無視できなくなってる感じ。
ヤクザの世界で生きてる旧友のサル(斉藤富士夫)は、すに池袋のダーク・サイドでいい顔になって久しい。
『東口ラーメンライン』では、足を洗ったGボーイズのOBが、ラーメン屋を営んで、地道にしっかりした生活をおくってる様子が描かれてる。
『ワルツ・フォー・ベビー』では、ストリート雑誌でコラムを連載してるマコトのファンが、アメ横のストリート・キッズにも少なくない様子が描かれる。
『電子の星』では、マコトのトラブル・シューティングの噂が、ネットでも囁かれてるらしい様子も差し挟まれてる。
マコトの方では、ネットの噂を頼りに依頼を持ち込んできた地方出身者の話を聞いて“時代は変わるものだ”とか思う。
時代は変わるものだ。テルはGボーイズなんかとは、まるで違う形のギャングのようだった。ソフトウェアの国の無法者で、リアルの世界では引きこもりの自称負け犬。なんだかストリートで頭の悪いガキがなぐりあったり、ナイフで刺しっこしていたころが遠い昔に思えた。
総じて『電子の星』採録作では、マコトとストリートの関係もかなり変わってきてて。マコト本人も、それに気づかざるを得なくなってるようだ。
何より、生身のマコトと別に、ストリートの伝説のような、トラブル・シューターのイメージが一人歩きしてる感がある。
マコトを語り手にした本編シリーズも、4冊目の作品集。
最初の作品『池袋ウエストゲートパーク』から、物語内でザッと5年ほどが経過してるはずになる。
この辺の物語内の時間経過は、各作品では、おそらくあえて曖昧化された描写で処理されてるのだろう、と思えるけど。乱暴に言っちゃえば、マコトのオヤジ化みたいな気配もあるんじゃぁないか(?)と、アタシは思います。
連作をずっと読んでる愛読者の間でも「マンネリ化」とか「マコトのスーパーマン化」とかのコメントも、聞かれてます。アタシにも、それぞれ思い当たるような節はあったりして。
個々の作品をトータルで評価すると、一部にマンネリ化と思えるようなパートはあっても、トータルでは、まだまだフレッシュな感じで書かれてるってあたりが、アタシの評価。
「スーパーマン化」については、「スーパーマン」て表現が適当かどうかってとこは気になるけど。
サルは偉いヤクザになってるし、タカシも安泰みたいだし、池袋のストリートで起きる事件なら、たいてーの事件はマコトに処理できないとは思えない。
そーゆー意味でも、マコトは、生きたまま“ストリートの伝説”になってるイメージ。
生身のマコトと、作品内のストーリーとでの伝説的なイメージの乖離にも触れてるのが『ワルツ・フォー・ベビー』や『電子の星』。
マコトが、下の世代のストリート・キッズと接す接し方も、少しずつ代わって来てて、その辺の感じは、今のとこアタシは、オヤジ化の兆候もあるんじゃぁないか? くらいの疑問符付きの感じで思ってます。
池袋のストリートで起きる事件なら、たいてーの事件はマコトに処理できないとは思えなくなってるのがシリーズ4冊目の『電子の星』。
『ワルツ・フォー・ベビー』で池袋以外のストリートを絡めたり、『電子の星』で地方出身者の若者を絡めたり、いろいろ工夫した料理も楽しめる。
『電子の星』は、そんな作品集になってます♪
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書誌情報:
石田 衣良,『電子の星』(池袋ウエストゲートパーク4),文芸春秋,Tokyo,2003.
ISBN 4-16-322390-8
石田 衣良,『電子の星 池袋ウエストゲートパークIV』(文春文庫),文芸春秋,Tokyo,2005.
ISBN 4-16-717409-X
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『電子の星』は、石田衣良さんによる「池袋ウエストゲートパーク」(I.W.G.P.)シリーズ、本編の1作。本編4冊目の作品集に収められた表題作で、採録された中篇4本の最後に収められ
『黒いフードの夜』は、石田衣良さんによる「池袋ウエストゲートパーク」(I.W.G.P.)連作の1本。本編4冊目の作品集『電子の星』に採録された中篇4作の内、3番めに収められてる。
『ワルツ・フォー・ベビー』は、石田衣良さんによる「池袋ウエストゲートパーク」(I.W.G.P.)連作の1本。本編4冊目の作品集『電子の星』に採録された中篇4作の内、2番めに収められ
『東口ラーメンライン』は、石田衣良さんによる「池袋ウエストゲートパーク」(I.W.G.P.)連作の1本。本編4冊目の作品集『電子の星』に採録された中篇4作の1つで、巻頭に収められて

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