『人口が変える世界 21世紀の紛争地図を読み解く』日本経済新聞社編
■本日の読書:『人口が変える世界 21世紀の紛争地図を読み解く』日本経済新聞社編
1972年、人口問題を考えるローマ・クラブがある恐るべき未来図を描き出した。
『成長の限界』と題されたレポートに添えられたグラフは、人類が恐るべき勢いで増加して地球を埋め尽くすことを直感的に表現していた。
人は増える。経済は拡大する。技術は進歩する。
それは、19世紀から20世紀にかけての常識だった。
我々の知る、右肩上がりの成長という概念。前期よりも今期の売り上げとか利益を増やすことを良しとするプラスな発想は、人口の増加に支えられている面が大きい。
けれども、歴史をひもとけばわかるように、いつの時代であっても人間とはそう増えるような生き物ではなかった。
安定した気候や平和な統治によって少し増えたかと思うと、飢饉や疫病、動乱などによってあっという間に減ってみたりしたのだ。
21世紀になった今もそうだ。
『成長の限界』で描かれたグラフは、大筋においてはそのとおりに推移している。地球の人口は着実に増加している。
だが、日本の人口がついに減少に転じたように。そして旧共産圏のロシアなどでは少し前から減少しているように。
人口問題は単に増える、減るという単純な側面では把握できなくなっている。
本書は、そうした人口問題のさまざまな側面についてできるだけ多くの視点からさまざまな問題を洗い出している。
いくつかピックアップしてみよう。
●中国
一人っ子政策がもたらすゆがみ。
少子化で変化した人口ピラミッドは将来、急速な高齢化をもたらす。2050年には24%が65歳以上に(2005年で7.69%)なる。
年金をはじめとする社会福祉をどうするかは大きな問題だ。
●ロシア
この十年間で500万人の人口減少という、日本を先取りする人口減少。2050年には現在1億4千万人の人口が1億を割り込むという予測も。
何より、年間5万人の自殺者というのは社会の不安がいかに人心を荒廃させるかという見本。
一方で中国移民が中央アジアや極東地域に増えつつある……フン族襲来?
ああそういや、ロシアや東欧で腕のいい技術者や医者は高給を求めて西欧に流れているという移民の連鎖もあるなぁ。
●アメリカ合衆国
今なお人口が増え続けつつあるUSA。
好調な経済はメキシコなどの中南米移民による安い労働力に支えられている。
なお人口は南西部に集まりつつある。
●インド
中国が人口抑制に出たのとは裏腹に、今なお人口ピラミッドはすえひろがりだ。
2050年には15億人をこえ、世界最大の人口を持つ国家に。
労働人口の増加が経済成長につながるという図式で言えば最後の20世紀型超大国か。
もちろん、教育や就労という点をクリアできればの話であるが。
●アフリカ
エイズの猛威は今なおこの地域に爪痕を残している。
HIVの世界感染者の半数以上、2500万人がアフリカにいるという。しかも、感染者は20代から30代。働き盛りや子供を抱える親がばたばた倒れているというねらいすましたかのような危機である。
●たくさんの子供を産むのはどんな人々か
この本に掲載されているフィリップ・ロングマン氏のインタビューはどれひとつとっても実に興味深いものであったが、子供を多く産むのはどんな人々という切り口がおもしろかった。ここに引用しよう。
>>>
「キリスト教、ユダヤ教、イスラム教ではいずれも、信仰心があついほど子供の数が多い。『産めよ増やせよ』の思想が宗教的な価値観の中に組み込まれているからだ。欧州では『教会にはほとんど行かない』という人の出生率が特に低いという調査がある。イスラエルでも保守的なユダヤ教徒ほど子供が多い。あまねく出生率が低下している日本や中国はこの例外だが」
――世界全体が保守化するのか。
「宗教原理主義者の台頭、科学の軽視、啓蒙運動の衰退。未来は中世に逆戻りだ(笑)」
――未来とはいつか。
「人口動態を考えるとき、人は非常にゆっくりとした変化を想像する。だが一世代で出生率が二割も低下するほど急速に少子化が進むと、数多くの変化は比較的速いスピードで起こりうる。1960年代に米国で台頭したフェミニズムやカウンターカルチャー(既成観念の破壊)が衰退したのは、当時こうした文化を追い求めた人たちほど、子供を産まなかったことも背景にある」
>>>『人口が変える世界 21世紀の紛争地図を読み解く』p218~219
なるほど。
そうして考えるとあれか?
オタ文化というのもひょっとしたら時代のあだ花であるかもしれぬなぁ。初期オタ世代、つまり私と同じく今40代になっている人はそれなりに社会的圧力があって結婚したり出産している人が多いが、30代のオタになると、周囲を見回しても結婚している割合は低い感じがする。
ああなんか。確かにオタ文化を廃絶したくなるのはわかるなぁ。ローマ帝国衰退期のキリスト教のようにオタ文化が日本を滅ぼす、いや――
オタクなどしょせん、我々、まともな日本人とは違うという思想が――スタンピードのように日本社会を席巻するやも。
こうした、オタ文化が弾圧されるというネタは昔から多かったが、意外とあれが本当になるかもしれない。
押井守の世界が我々のすぐそこにっ!
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