『歴史群像 No.82』より『[検証]世界制覇の原動力 モンゴル騎馬軍団』中西豪
■本日の読書:『歴史群像 No.82』
魚雷艇や潜航艇という小型戦闘艇ネタ多し。
『回天追跡六〇余年の遺産』上原光晴
『発見相次ぐ日本海軍の特殊潜航艇』編集部(フォトギャラリー)
『英独魚雷艇BATTLE』白石光
『WW2高速魚雷艇』白石光
こうして一冊の中にいくつもの記事がまとまって入ってくれているのは検索するのに便利である。
●『[検証]世界制覇の原動力 モンゴル騎馬軍団』中西豪
モンゴル帝国とは不思議な国家である。
中央アジアに住む遊牧騎馬の民が軍事的に強い、という点はモンゴルの1000年も前、匈奴の時代からよく知られている。
モンゴルに滅ぼされ、征服された国々はいずれも敵手が強いことがわかっていてそれでも負けたわけで、ここが私には興味深い。
この記事でも『戦争の実際』という項目で記されているが、モンゴル騎馬軍団の戦い方は、多数の騎馬軍団を広く散会させて敵を包み込み、多数の斥候部隊によって敵の情報を集めつつ味方の集結ポイントに誘導し、そこで一気にたたきつぶすというものである。
中西さんは『そのような常套戦術が敵陣営に明らかになったあとでも、あまりに大規模、徹底していたため、追撃の誘惑に勝てなくなるのである』(p75)と書かれている。この「わかっていても罠にかかる」背景にはどういう心理があるだろうか。モンゴルの侵略を受けた側の将軍となって考えてみよう。
>>妄想スタート
時代背景からして将軍の元に集められた軍勢というのは、常備軍ではない。モンゴル軍来たる、タルタル(地獄)からの軍団がやってくる、というので集められた諸侯らの軍勢だ。常にない大軍を集め、食わせていくのにかなりの無理や負担がかかっている事も間違いない。
強力であるが、いつまでも手元に置いておけるような軍勢ではない。
かといって、モンゴル軍がそのままなのに解散するわけにもいかない。
となれば、モンゴル軍と一戦して勝利し、相手を追い散らさねばならない。
一方のモンゴル軍は、そうした時間的な制約をそれほど持たない。彼らにとっては敵の領土内かどうかに関係なく、馬や家畜に草を食わせてやることができれば、普段の生活とそう変わるものではない。
なんと、決戦を強いられているのは侵略するモンゴル軍ではなく、防衛側なのだ。
さて、将軍のところに、前衛部隊がモンゴル騎馬軍団と接触、これを追い払ったという情報が届く。追い払ったのではなく、単に敵が引いていっただけなのだが、前線の兵士たちにとっては自分たちの勝利である。「なんだ、モンゴル軍が相手でもやれるじゃないか」と意気は上がっている。
将軍は考える。これが罠だということはわかっている。追えば、敵の主力が待ちかまえている。が――ここで戦わなかったらどうなる? 敵は騎馬軍団であり、大量のかいばを食わせてやらねばならない。こちらが決戦を回避すれば、再び散ってあちこちを略奪しながらうろうろするだろう。村が襲われ、畑が荒らされることになる。
そうなれば味方から不満が出る。いつまでも出撃しない自分の指揮には従えないという者も出てくるだろう。この時代の将軍の指揮権とは絶対ではない。将軍が王であっても不平不満をすべて押し殺すことはできないのだ。
ならば、戦うべきだ。
今なら士気は高い。モンゴル軍といっても不死で不敗ではない。これが罠だとわかっていれば、戦い方もある。
たとえ勝てなかったとしても、モンゴル軍に深刻なダメージを与えることができれば――うん、我が軍にだってそのぐらいのことはできるはずだ。
かくして将軍は出撃を命じる。その先に待つ運命も知らずに。
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