石田衣良、作『びっくりプレゼント』(『4TEEN』所収)旧版
【この紹介文は】
この紹介文は、2007年4月に初公開した、石田衣良さん作の短編小説『びっくりプレゼント』の紹介文です。
2009年3月に、大幅改稿した改訂版と差し替えました。
『びっくりプレゼント』は、小説家、石田衣良さん著の、連作短編集『4TEEN』(フォーティーン)の冒頭に収められた1篇。
東京の月島界隈で暮らす、中学生男子4人組を描いた短編連作の第1作だ。
雑誌連載のマンガをネタに、オクションと思える高級マンションに住む子供を上忍、普通のマンションに住む子供を中忍、地元に地付きの下町っ子を下忍と呼び会うような友達づきあいが、ささやかだけど印象深い“冒険”のストーリーを縦糸にして織り成された連作物語の1編。
『びっくりプレゼント』は、ことに、ささやかな冒険物語の風味が強いと思う。アタシは、そこが好き。
中学1年生が終わり、春休みに入ったばかりのある日。4人組の内、高級マンションに住んでいるナオトが入院している病院に、他の3人が見舞いに行く。
見舞いに行くための待ち合わせシーンから、物語は、語り始められる。語り手のキャラクター「ぼく」は、テツロー。
ナオトは、遺伝子性の難病を抱えている少年で、ときどき、数日間の検査入院をする。この時は、春休み前に入院し、春休みに入ってしまった。
物語は、難病を抱える息子のため、友人を招いた誕生日パーティーを開く習慣のあるナオトの親に、少年たちが交渉して、特別病室(シャワー付の個室よ!)で、誕生日パーティーを開く許しを得る、と展開する。
「プレゼントなにがいい。なんでもいってみろよ〔中略〕」
「別にないよ。ほしいものはすべてそろってる。うちの親にいえばすぐに買ってもらえるから」〔中略〕
「プレゼントの中身はわかんないほうがたのしいよ。なんでも歓迎だ。どうせほんとにほしいものは手に入らない」
「ほんとにほしいものは手に入らない」
淡々と語られる乾いたセリフで、アタシの脳内では、重い語調では語られていない。
むしろ軽い語調で口にされるからこそ、底の知れないような、感情をうかがわせるセリフだと思う。
ネタバレの範疇に、半歩踏み込むかもしれないけれど、序盤の大筋は紹介してしまいましょう。
おいしいとこは、もちろん避けますけど。
知恵を絞った3人の少年は、数日後、ナオトのプレゼントになってくれる、エンコー(援助交際)やってるコギャルのお姉さんを探しに、渋谷に向かう。
言うまでもないけど、中学2年生のボクチャンたちからすれば、エンコーしてるコギャルちゃんたちは、お姉さんだ。
これが、冒険でなくて、なんだと言うのでしょう!
ささやかでも、冒険は冒険よ。泣かせるし。
「びっくりプレゼント」を巡る、冒険の結末がどうなるか。さすがに書きません。
この短い物語の味わいは、大筋紹介くらいで損なわれるような、そんな浅いものとは思えない。だから、序盤の大筋を紹介しました。
ウソだと思ったら、読んで見て☆
さて、新潮文庫版に収められている著者あとがきによると、『びっくりプレゼント』は、池袋ウエストゲートパークの最初の単行本が刊行された4ヵ月後に1週間で書き上げられた作品だそうです。
新人時代の石田さんが、デヴュー誌「オール読物」以外に、はじめて書いた作品とのことで。著者ご本人にも、なかなか思い出深い作品らしい。
『4TEEN』に収められた月島の4人組の物語は、半年に1度くらいのペースで、何年にも渡って書かれたそうだ。物語内時間の方は、概ね、中学2年生の1年間に渡っている。
「少年たちが成長するにつれて。わずかながらデビュー間もないぼくの筆力もあがっていく」
あとがきに書かれた、著者ご本人の述懐は、アタシはほんとうだ、と思う。けれど、その事を跡付けてみるのは、この紹介文の目的ではありません。
理屈で言ったら、連作の内で、筆力がまだ低かった時期に書かれたことになる『びっくりプレゼント』には、確かに、語り口がストレートすぎるかもしれない箇所は目立つ。
けれど、とても印象に残る物語。
物語って不思議よね☆
ちなみに、アタシの心に刻まれた印象は、とてもいい印象です。
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