王留美、紅龍、そしてネーナの、ありえたかもしれないドラマを脳内補完(『機動戦士ガンダム00』を見ながら)

 ガンダム00の2ndシーズンも、残り2話。
 在庫一掃セールのノリで、因縁やら伏線やらがまとめて処理されていくのを見ながら、私が感じたのは「もったいない」という気持ちであった。

 たとえば、王留美(わん・りゅーみん)とその執事であり実の兄でもある紅龍(ホンロン)、そしてトリニティ三兄弟の末っ子、ネーナ。
 2nd第21話『革新の扉』で、まとめて処分された彼らに、ああなる以外の道はなかったのだろうか?

 もちろん、なかった。
 理由はもちろん、尺がないから――というと身も蓋もないが、こうなったのには、彼ら自身と、そしてリボンズに責任がある。

 王留美は、兄(紅龍)を恨み、王(ワン)家を恨み、世界を恨んでいた。イノベイターもソレスタルビーイングも、本当のところ、どうでも良かった。

 紅龍は、妹(留美)に対して負い目があった。自分が不甲斐ないばかりに王家の重責を妹にすべて押しつけてしまった。

 ネーナは、お嬢様(留美)が大嫌いだった。兄(ニーニーズ)を殺したサーシェスを部下にするイノベイターともども、いつか裏切ってやろうと思っていた。

 そして、当然ながら三人とも、その思いを最後まで自分の中に(視聴者にはけっこうバレていたものもあるが)とどめていた。
 彼らの胸中を明らかにすることが可能だったのは、すべてを知っていたリボンズだけである。しかしリボンズは彼なりの目的と、おそらくは旧人類の醜さを露呈させて楽しむという悪趣味もあって、三人を放置し続けていた。

 物語が終盤になるまで、三人の隠し続けた本音が露呈することはなく、そしてすべてが明らかになった時には、もはや彼らには互いに争い、消える以外の選択肢は残っていなかった。何より他のキャラやドラマで後がつかえていて、巻きが入りまくりであったし。

 もしも――
 そう、もしも――

 もっと早くに、リボンズが留美を切り捨ててくれていれば、と私は思わずにいられない。
 たとえば、ダブルオーライザーが登場した13話あたりで、リボンズが八つ当たり気味に留美に見切りをつけていたらどうだろう?
 アロウズとヴェーダの力を使い、留美の後ろ盾である王家の財力権力を、丸ごと粉砕するぐらいのことは、リボンズにはたやすかったはずだ。この時点で、ネーナはさっさと見切りをつけて留美を見捨てたはずだ。憎まれ口のひとつも叩いて。

>>>妄想開始

留美:あなたは、どうするの?
紅龍:どういう意味でしょうか。私はお嬢様にお仕えするだけです。
留美:きれい事は言わないでいいわ、兄さん。私たちを縛っていた王家は消えたわ。きれいさっぱり、何もかも。財力も、地盤も、人脈も、すべてがイノベイターに破壊された。あなたが私に仕える理由も、消えたはず。
紅龍:留美……ならば、やはり私はお前と共にいよう。
留美:今さら贖罪のつもり? 王家に生け贄として捧げた私への。滑稽ね。あなたがそんな風だから、私が当主をやらされたのよ。
紅龍:……

 そして、なおも世界の変革を求めてあがく留美を、便利な手駒である荒事師、サーシェスが襲う。

紅龍:お嬢様っ! ――させんっ!
サーシェス:はんっ! なかなかやるな、功夫ってやつかァ? だが、コレでどうだっ!

 個人の戦闘力であれば、紅龍はおさおさサーシェスにひけをとらないだろうが、勝つため、生き残るための意地汚さではサーシェスにかなうキャラはガンダム00にはおるまい。

紅龍:ぐうっ――
留美:紅龍!
サーシェス:はぁ、はぁ。まったく、手こずらせてくれたな。
紅龍:何をしている、逃げろ! 留美!
留美:兄さんこそ、なぜっ!

 泣きそうな留美を見て、紅龍は血を流しつつ優しく微笑んだ。

紅龍:兄が妹を守るのに、理由など必要ない。
サーシェス:うるわしい兄妹愛だなァ! だが、茶番はコレで終わりだァ!
ネーナ:あんたがね。

 横合いからの攻撃を、サーシェスが紙一重でかわす。

サーシェス:てめえ――何のつもりだ? こいつはもう、お前のお嬢様でも何でもないだろうが。
ネーナ:そうね。そのお嬢様とやらはムカつくし、殺してもいいわよ。でも、その男はやらせないわ。
サーシェス:なんだァ? お前、こいつに惚れてたのか?
ネーナ:ばっ――バカ言わないでよっ! なんでこんな情けない男に、私が惚れなきゃならないのよっ! ニーニーズに比べたら、この男、貧弱で、優柔不断で、まるでダメダメなんだからっ!
留美:ひかえなさい、ネーナ。紅龍の悪口は許しません。
ネーナ:そっちこそ、引っ込んでなさいよ、この空っぽ娘――へえ?
留美:な、なんですか。その下品な笑いは。
ネーナ:アンタだって、そんな顔、できるんじゃないの。

 いつも仮面をかぶり、取り澄ました表情しかしなかった留美の、必死の形相。
 それは年相応の、世界のどこにでもある娘の顔だった。
 世界にひとつしかない、王留美という娘の顔だった。

>>>妄想終了

 とまあ、中盤くらいまでであれば、こうした展開を入れる余地は十分にあったと思う。
 もちろん、結局、クライマックスでは三人ともあっさり死んだかもしれない。特にネーナはルイスとの因縁が残っていたわけであるし。
 だが、彼らが自らの中に閉じこめていた思いを互いにぶつけた後であれば、その死には、そしてその死を見る私たち視聴者の胸の内には、もう少し違ったものが感じられたのではないか。

 それを考えると、やはり「もったいない」と思わずにはいられないのだ。

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