『機動戦士ガンダム00』のSFネタ解説その28:イオリア計画の全貌
機動戦士ガンダム00に出てくるギミックや台詞を元に妄想をたくましくしていくSFネタ解説シリーズの28回目。
ガンダム00の2ndシーズンも無事に完結。話としてはまだ終わっていない気もするし、SFネタ的には明かされていない真実が山のようにありそうだが、最後のエクシアvsOガンダムの月面クレーターでの決闘場面がランバ・ラルのグフ戦を彷彿とさせてたいへん熱く、盛り上がったのでそれでよしとしたい。
やはり、最後の戦いは肉弾戦で締めるのが美しい。
ロボットの手と足は、やはり殴るため蹴るためにある。でかい銃撃つのは戦艦にやらせておけばいいのだ。
最終回記念のSFネタ解説はイオリア計画の全貌についてだ。もちろん、現時点では明かされていない情報も多いので推測妄想願望がメインになる。
いつものように真面目七分に法螺三分、大嘘ついても小嘘はつくなの三割精神でいく。最後までおつきあいいただければ、幸いである。
『来るべき対話』。
イオリア計画の根幹を為すキーワードは、この『来るべき対話』である。
太陽炉を用いたGNドライブも、ソレスタルビーイングによる武力介入も、その後のイノベイターの活動も、そしてリボンズの暴走も、すべては『来るべき対話』のためと言って間違いない。
――では、誰と?
結論から言うと、E.T.(Extra-Terrestrial)だ。地球外知性体である。
作品世界で200年前の21世紀末に、イオリア・シュヘンベルグがE.T.の接触を受け、人類より優れたテクノロジーや知識を持つ彼らから数々のチート情報を手に入れたのだと考えると、イオリア計画は実にすっきりするのだ。
2090年にイオリアは軌道エレベーターによる太陽光発電システムの基礎理論を発表している。“当時の技術では”実現不可能であったこの理論は、果たしてイオリア本人の天才によって生まれたものだろうか?
それだけではない、イオリアは21世紀末にさまざまなものを生み出し、あるいは考案している。
太陽炉とGNドライブ。GNドライブを用いたトランザム・モード。
量子コンピュータであるヴェーダ。
人造人間であるイノベイター(イノベイド)。
200年後のガンダム00本編においてすら、これらの知識や技術は世界水準を大きく超えている。イオリアがいかなる天才であったとしても、個人の力量や才覚で得られるレベルではない。
だからこそ、私はこのSFネタ解説でこれら超技術のソースが未来からタイムマシンで送られてきた未来情報ではないかと妄想した。
しかし、『来るべき対話』の相手がE.T.であるとするなら、彼らから技術供与を受けたと考えるのがSF設定的に美しい。『へびつかい座ホットライン』(ジョン・ヴァーリイ)のように、直接会ってはいない可能性もある。
E.T.は何のためにイオリアに未来の技術を教えたのだろうか?
イオリアはなぜ、超技術を公開せず、E.T.の存在も明らかにせず、ソレスタルビーイングを設立したのだろうか?
ソレスタルビーイングはどうして、武力介入をしてまで、地球統一を急いだのだろうか?
イノベイターたちは何故に、アロウズを用いてまで人類の意識を統合しようとしたのだろうか?
この四つの疑問に共通するのは、“人類の未来に対する危機感”である。
未来技術を教えなければ、人類は滅びてしまうから。
ソレスタルビーイングを設立しなければ、人類は滅びてしまうから。
武力介入をしなければ、人類は滅びてしまうから。
意識を統合しなければ、人類は滅びてしまうから。
では、人類が滅びるほどの危機とはどのようなものだろうか?
この疑問を推理する手がかりになるのが、最終回間際に登場した外宇宙航行船ソレスタルビーイングである。リボンズをして、新たなる箱船と言わしめた巨大宇宙船だ。
イオリアの計画では、もしソレスタルビーイングの活動がうまくいかず、あるいは間に合わず、危機を克服できなければ、この宇宙船でどこか別の星へ移住する計画だったのではないだろうか? 恒星間移民ではなく、『ゴールデン・フリース』(ロバート・J・ソウヤー)よろしく数千年後の地球に帰還するつもりだったのかもしれないが。
だとすると、危機の正体は、人類自身の手による戦争や文明の暴走ではないということになる。
『さよならジュピター』(小松左京)のように、ブラックホールが直撃する。
『第二創世記』(ドナルド・モフィット)のように、銀河中心部からの放射線を浴びる。
『銀河ヒッチハイクガイド』(ダグラス・アダムス)のように、宇宙ハイウェイの建設予定地になっている――など。
危機の正体は宇宙規模の災厄だと考えられるのだ。その克服には、人類だけの力では足りず、銀河文明の力が必要になるが、彼らに人類が救うに足る存在であることを――銀河文明に参加できる存在であることを――証明するために、人類の革新が必要であったとすると、イオリア計画の強引なところも説明できる。
『ガイア』(デイヴィッド・ブリン)や、『時の果てのフェブラリー 赤方偏移世界』(山本弘)のように、E.T.が地球文明に介入する理由として、何らかの危機を克服するためという設定が出てくるのはSFの定番である。
あるいは、人類を待ち受けているのは危機ではなく試練という考え方もできる。『地球幼年期の終わり』(アーサー・C・クラーク)は、人類文明にE.T.が介入した理由として、人類が滅びる瀬戸際にあったせいだと明かされるが、その実は、人類の新たなる進化を促すためであった。これだと人類の革新を目指すというイオリア計画との相性も良い。
さらにもう一歩考えてみよう。
2010年公開の劇場版情報で、木星の映像が映っていた点を、山田正紀さんの『最後の敵』と重ね合わせてみるのだ。あの作品のラストが、地球進化のチャンピオンである主人公と、木星進化のチャンピオンであるガス惑星生命体の決闘であったように、革新した人類でありリボンズを倒した真イノベイターである刹那が、木星で人類の命運をかけて何か/誰かと戦うのではないかと。
イオリア計画が、200年後に誕生するただひとりの代表選手、リボンズか刹那かのどちらかと、ダブルオーライザーの力を持つガンダムを生み出すためだけにあったとしたら。
最強のイノベイターと、最強のガンダムを、人類の未来を賭けた決戦に送り込む、ただそのためだけにあったとしたら。
気宇壮大にしてきわめてミクロな物語構造は、山田正紀さんや半村良さん、小松左京さんや光瀬龍さん的で、日本SFのひとつの有り様として美しいと思うのだ。
最後に。
最終回まで、二年間四クール、たいへん楽しませていただきました。ガンダム00の制作に関わったすべての人に感謝いたします。ありがとうございました。
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