電撃リトルリーグ用投稿作品「夏休みの計画」藍澤優版その1

電撃リトルリーグ

 また募集が再開されたので、電撃リトルリーグ用投稿作品を書いてみました。
 お題(タイトル)は「夏休みの計画(サブタイトルあり)」です。
 それでは、どうぞー。

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「夏休みの計画 ~犬が勇者~」

「沙汰子さん。これ、君が落としたんだよね?」
 夏休み前のある日。
 放課後、二人っきりの教室。
 目の前に差し出されたのは、まぎれもない、探していた私の黒い手帳だった。
 な、なななな……!?
「なんであなたがそれ持ってるの!?」
 私はそう声を上げ、目の前のクラスメイトで片思いの人、須賀悠人の手から、大切な手帳を奪い返す。
「みっ、見ていないでしょうね!?」
 手帳をぱらぱらとめくりながら、顔を真っ赤にする私。
 みっ、見られちゃった!? 悠人君に!?
 彼は苦笑しながら、首を横に振る。
「いや、見てないぞ? ……夏休みは忙しそうだなとは思ったが」
 手帳をポケットの奥深くに入れた手が止まる。
「見てるじゃない!」
「仕方がない。落ちてるのを拾ったら『夏休みの計画・第一段階:東京へ出撃』とか書いてあるのが見えたから」
「あっ、あれはね! 夏休み東京に出かけるのをファンタジーな感じで書いたのよ! べ、別に東京占領とか、やるわけないじゃない!!」
「じゃあ、そのあとに中国へ行くのは?」
「家族とパンダを見に行くのよ! まず人口が多い国を支配するとか冗談だから!」
「次にインドからロシアへ行くのも、家族と?」
「もちろんそうよ! 核奪取とかもちろん、嘘だし!」
「で、その次が、ヨーロッパ巡り?」
「各地の名所を巡るの! 政治的要地の占領とかしません!」
「その次が中東からアフリカ、南米へ?」
「資源が欲しいわけじゃないわ! ドバイのリゾートで一休みしてから、動物を見に行くの!」
「で、最後にアメリカ、と」
「メジャーリーグを見に行くの! 決してアメリカを壊滅して世界征服の総仕上げ、じゃないからね!」
「なるほど……。沙汰子さんって、妄想力豊かな子だったのか……」
 も、「妄想力豊かな子」……。
 悠人君にそう思われたなんて、私、どうしたらっ……!
「須賀君……。結局全部見たのね……! いつ拾ったの……!?」
「昼休みに綾音たちと一緒で廊下を歩いていたら、トイレの前で」
 よ、よりによって 彼女の綾音さん達と一緒にいる時に……!
 トイレ前で落とすなんて……!
 なんて不覚っ……!
 ……。
 お、落ち着け、私。
 ……ようし、こうなったら仕方がないわ。
 悠人君、ごめん。私、あなたを……。
「トイレ、ね。まあいいわよ。……でもそんな事より、あなたに言いたいことがあるの」
「なんだい、沙汰子さん?」
 そう悠人君が聞くやいなや、私は彼のYシャツのネクタイを掴み、一気に引っ張る!
「なっ、なにをするんだっ……!」
「私の手帳を見たからには、私の僕になりなさい! これからあなたは私の犬よ!」
「いっ、犬っ……!?」
「そうよ!」
 げしっ、と足で悠人君の足元を蹴飛ばしてやると、悲鳴をあげて犬が踊る。
「ぬぐおっ!」
「今この場で誓いなさい。『今日から私はあなたの犬になります』と」
「……。わ、わたしは、あなたの犬になります……」
「声が小さい!」
 さらにネクタイを強く引く。
「わ、わがっだ! わがっだからネグダイゆるめろ!」
 今にも泣きそうな声で言うのでネクタイを緩め、
「じゃ、もう一回!」
 そう訊ねると、今度は大きな声で、
「……わっ、わたし須賀悠人は、今日からあなたの犬になりますっ!!」
 と心地いい返事。
 よし。
 ネクタイという名の鎖を放す。
「じゃ、今日からあなたは私の犬ということで。この黒い手帳の事は、秘密にするのよ?」
「は、はい……」
「じゃ、これからしつけてあげるから、ついてきなさい」
 そう言って再びネクタイを引き、無理やり犬を連れ教室を後にする。
 ……ふー、危なかった。
 生涯最大のピンチだったわ。
 あれを悠人君に理解されてたら、どんなことになるか分からない。
 言いふらされて、周りから「可哀相な子」扱いされるのはまだいい。
 だけどもし、この計画が、この学校にいるという勇者達の耳に入ったとしたら……!
 ここにいられなくなるだけではなく、この身に危険が及ぶかもしれない。
 まずはこの犬を、私のものにしなきゃ……!
 そう思いながらたどり着いた場所は、校舎裏。
 ……誰も、いないわね。
 慎重にあたりを見渡してから、犬のネクタイを放し、大きく息を整える。
「ねぇ。しつける前に、ちょっと言わなければならないことがあるの」
「な、なんですか?」
「私……、実は魔王だったの」
 ふふふ、犬は恐怖に打ち震えるはずだわ!

「知ってるよ」
 へ?
 次の瞬間、私の周りを光が包む。
「えっ!?」
 でっ、出ようとしても、出られない!?
 結界!?
 う、後ろに……、誰かいる!?
 恐る恐る、振り向くと。
 な、なんで綾音さん達が、制服姿で剣や杖を構えているんですか!?
「なっ、ななななな!?」
「ごめん」
 な、なんで、犬が謝るのよ!?
 も、もしかして……!?
 そして、みんながいっせいに武器を振り上げ、呪文を唱え……。
「実は俺、勇者だったんだ」
 い、犬が勇者あぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?

 <終>

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