『彷徨える艦隊2 特務戦艦フュリアス』ジャック・キャンベル 追加の星図と戦闘艦カタログ
ミリタリー系スペースオペラ『彷徨える艦隊』の第2巻。
1巻が面白かった人は、2巻も面白いと思うので、未読の方はぜひぜひ。
まずは、1巻2巻含めての、艦隊の『彷徨い』ぶりを星図にまとめてみた。
『彷徨える艦隊2』星図
ラインでは結んでいないが、ハイパーネット・ゲートが設置された星と星は、相互に移動できる。
ギアリー率いるアライアンス艦隊は「ジャンプ航路を利用した内線の利」を活かして逃げ回っている。
対するシンディック側は「ハイパーネット・ゲートを利用した外線の利」を用いて追いつめようとする。
つかまれば死ぬ、恐怖の鬼ごっこである。
ギアリーのアライアンス艦隊は、総力としてはシンディック艦隊に及ぶべくもなく、また敵中に孤立している。だが、集中した艦隊戦力としてはきわめて有力で、中途半端な迎撃をかけては、撃破されるのはシンディック側だ。
一方のシンディック側は、なんといっても自国領内で戦う利点がある。支援も補給も受け放題だし、ハイパーネット・ゲートで結ばれた星であれば、どこであれアライアンス艦隊を迎撃し殲滅するだけの戦力を集中させることが可能だ。
となれば、ギアリーのアライアンス艦隊にとっての有力な選択が、ハイパーネット・ゲートのない星から星へ移動するというものになるのは当然だ。
ハイパーネット・ゲートがない星であれば、シンディック艦隊は戦力の集中にジャンプ航路を使うしかない。ハイパーネット・ゲートによる移動力や戦力の集中の利を自ら失うことになる。
だが、ハイパーネット・ゲートを使えば、ギアリーのアライアンス艦隊は一気に自国領内へと帰還できる。また、有力な星系の多くがハイパーネット・ゲートを保有しているため、ジャンプ航路だけを利用して逃げる場合でも、ハイパーネット・ゲートのある星にいずれは行かなくてはいけない。
相手の考えを読み、裏をかく。
ギアリーもそうだが2巻ではシンディック側も様々な策を講じはじめている。要所に設置された機雷、アライアンス艦隊の出現を知らせる連絡艦。そして、最後の手段としてハイパーネット・ゲートの利用を阻止するための自爆用艦隊。
1巻でも匂わされていたが、2巻ではいよいよこのハイパーネット・ゲートという超技術のいかがわしさと危険性がクローズアップされてきている。本当の敵はシンディックではなく、正体を見せない異星人なのか? これもまた、艦隊が彷徨えるうちに明らかにされるのではないだろうか。
さて、本書の魅力である戦闘場面は1巻に引き続き2巻でも健在だ。
特に、惑星を爆撃するための『運動エネルギー弾』(なんというそのまんまな名前)の使用と、惑星や施設に対するその優位性は圧倒的のひとこと。
森岡浩之さんの『星界の紋章』でも描かれているように、重力井戸の上と下にあり、秒速ン十、ン百、ン千キロメートルという惑星上では決して得られない運動エネルギーを保有する宇宙艦隊と惑星との間の戦争は、問答無用に宇宙艦隊側が有利なのである。もちろん、E.E.スミス先生の『レンズマン』的に惑星そのものを宇宙要塞にできるパターンや、惑星の持つ質量やエネルギーを“シールド”という不可視の障壁に転換できる設定の場合は別だが、そうした特殊なギミックがない場合、非武装の商船ですら、手近な隕石を押してぶつけることで惑星ひとつを壊滅させることが可能なのだ。
これがまさに、スペオペ的な世界で「宇宙軍」が必要不可欠な理由である。たとえ敵が密輸船、海賊船のようなヤクザに毛が生えた存在であったとしても、惑星の側に「宇宙軍」がなければ取り締まりは不可能だ。
どれだけ地上に有力な軍を保有していても、惑星上のすべての地点に即座に展開はできない。マッハの速度で移動する航空機であっても、大陸の反対の端までは何時間もかかるのだ。軌道上から手薄な場所を狙って密輸船や海賊船が降下、悪事をなして立ち去った後に大軍が到着しても手遅れである。
それよりは、軌道上に部隊を保有しておき、衛星軌道で迎撃、あるいはそれに失敗したとしても、即座に軌道から緊急展開部隊を降下兵として送り込む方が効率が良い。軌道戦力を維持するコストはかかるが、規模を縮小できるので、全体としてのコストダウンもはかれる。
さらにおまけとして、『彷徨える艦隊』に所属する戦闘艦の模式図を作ってみた。性能その他については、本編ではそれほどかっちり明記されてないようなので語感から推測しているところが多々ある。間違っている部分や後の巻で明らかになった事実は随時修正していきたい。
『彷徨える艦隊2』戦艦・巡航戦艦
旗艦〈ドーントレス〉をはじめとする戦艦は、艦隊の主力艦である。なんといっても圧倒的な攻撃力と防御力を持ち、戦艦をのぞくいかなる敵であっても正面から粉砕するパワーを持つ。
一方の巡航戦艦は、戦艦よりも機動力を向上させ、そしておそらくは防御力をいくばくか犠牲にした艦と思われる。
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『彷徨える艦隊2』重巡航艦・軽巡航艦
巡航艦は、一種の万能艦である。機動力重視の設計だが、攻撃も防御もそれなりに高く、短時間であれば主力艦の足止めも可能だ。
しかしあくまで足止めレベルであり、本気で戦艦と戦えばあっという間に防御シールドを削られて致命傷をくらうことになるだろう。
重巡航艦と軽巡航艦の違いは現時点では不明。旧日本海軍の重巡洋艦と軽巡洋艦は、軍縮条約による制限で生まれた艦種であった。アライアンスとシンディックの間にはそのような条約はなさそうなので、予算折衝とかに関連した軍政レベルでの区分けかもしれない。
機能面での違いがあるのだとしたら、
重巡航艦=小型の戦艦で主力艦との艦隊決戦で陽動や迂回などの任務に就く。
軽巡航艦=大型の駆逐艦で哨戒や偵察などの任務に就く。駆逐艦などで作る護衛戦隊の旗艦としても運用する。
というあたりだろうか。
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『彷徨える艦隊2』駆逐艦・対艦攻撃艦
駆逐艦は護衛艦艇である。戦艦相手には無力に近い。近距離ミサイルやスペクター・ミサイルの威力は大型艦も小型艦も同じだろうが、防御力が薄すぎるので相手にダメージを与える前に沈んでしまうのだ。駆逐艦の攻撃対象は、敵のミサイルである。つまり、現代のイージス艦のような役目を果たしていると考えればいいだろう。“ミサイルを駆逐する艦”ということだ。
対艦攻撃艦は、敵の護衛艦を狙う艦ではないかと思う。艦隊の防御力の一端は、ミサイル迎撃能力を持つ駆逐艦が担っている。敵艦隊の駆逐艦を減らすことができれば、迎撃に失敗したミサイルが敵の主力艦を撃破する可能性がぐっと上がるのだ。小型艦なので敵の戦艦に狙われたらひとたまりもないだろうが、敵の戦艦はまず自軍の戦艦との撃ち合いに忙しいはずだ。
ミリタリ系スペースオペラではしばしば登場する“宇宙戦闘機”やその母艦である“宇宙空母”のたぐいは、このシリーズでは登場しない。これは、戦艦であっても最大0.2光速ほどの高速での機動が可能であるという設定や、艦が大きいほど防御シールドの出力も高く、小型艦の武装では十分なダメージを与えられないという設定があるからだろう。
現代の空母と航空機は、水上艦艇と比べて機動力で圧倒しており、矛と盾の関係で矛が圧倒的に有利で航空機搭載のミサイルであっても十分なダメージを水上艦艇に与えることが可能だから優位なわけだ。『彷徨える艦隊』の設定では、どちらの優位も存在しないため、わざわざ空母や戦闘機という種別がないのである(おそらく)。あえて近似を求めるとすれば、スペクター・ミサイルが無人戦闘機&ミサイルの役割を果たしていると言えるだろう。(たぶん)

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